Barry White - Barry White The Man (1978)
Barry White『Barry White The Man』
「マエストロ」「愛の伝道師」の名で親しまれ、甘美な重低音バリトン・ヴォイスと華麗なオーケストレーションで70年代ブラック・ミュージック界に君臨した大スター、Barry White(バリー・ホワイト)。1978年10月に名門20th Century-Fox Recordsからリリースされた通算8作目のスタジオ・アルバム『Barry White The Man』は、前作『Barry White Sings for Someone You Love』の商業的カムバックの勢いを決定づけ、全米R&Bアルバム・チャートで3週連続1位を獲得、プラチナム・ディスクに輝いた彼の黄金期を締めくくる傑作である。
制作背景・エピソード
本作のレコーディングは、バリー・ホワイト主宰のプロダクション「A Soul Unlimited Production」のもとで徹底的に練り上げられた。彼が誇る40人編成のメガ・オーケストラ「Love Unlimited Orchestra(ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ)」を従え、名手ジョン・ロバーツやロナルド・コールマンらとともに重厚かつダイナミックなシンフォニック・ソウルを展開している。バッキング・ヴォーカルには、彼の妻グローディアン・ジェームズを擁する女性コーラス・トリオ「Love Unlimited」が参加し、妖艶で華やかなハーモニーを提供した。
アルバム制作における特筆すべきエピソードが、当時世界的ヒットを記録していたBilly Joel(ビリー・ジョエル)の名曲「Just The Way You Are(素顔のままで)」の大胆なカヴァーである。ポップ・ソングの原曲を7分超の濃密なソウル・バラードへと換骨奪胎し、ホワイト特有の深いスポークン・ワード(語り)と切々たるヴォーカルを吹き込んだこのヴァージョンは、全英シングル・チャート12位を記録するなど国際的にも絶大な支持を集めた。
時代の文脈
1978年は映画『サタデー・ナイト・フィーバー』の世界的ブームを追い風に、ディスコ・ムーヴメントが空前のピークを迎えていた。ポップス界全体が過剰な四つ打ちビートへと傾倒するなかで、バリー・ホワイトはフィラデルフィア・ソウルと並ぶシンフォニック・ソウルの先駆者としての誇りと矜持を本作に刻み込んだ。単なるダンス・ミュージックの枠に収まることなく、洗練されたラテン・パーカッション、重厚なホーン隊、流麗なストリングス、そして官能的なベッドルーム・ソウルの世界観を高次元で融合させ、大人の鑑賞に堪えうるモダン・ソウルの極致を示した。
サウンドと聴きどころ
躍動感あふれるディスコ・ファンクが炸裂するSide Aと、甘美で親密なスロウ〜ミディアムが連なるSide Bという鮮やかな対比が本作最大の魅力である。
Side Aは、スリリングなストリングスの序奏からファンキーなグルーヴへと雪崩れ込む「Look At Her」で幕を開け、先行シングルとして全米R&Bチャート2位を記録した8分超のダンス・クラシック「Your Sweetness Is My Weakness」へと続く。うねるベースラインとカッティング・ギター、タイトなドラムが織りなす圧倒的な推進力は圧巻のひと言に尽きる。続く「Sha La La Means I Love You」でも華やかなホーン・アレンジがフロアを包み込む。
対するSide Bでは、バリー・ホワイトの真骨頂であるスウィート&メロウな世界が花開く。「It's Only Love Doing Its Thing」は、哀愁を帯びたメロディックなギター・リフと囁くような語り口、そして極上のフェンダー・ローズが溶け合う至福のミディアム・グルーヴ。「Just The Way You Are」での崇高なストリングス・オーケストレーション、そしてロナルド・コールマン作のラスト・ナンバー「Early Years」まで、彼の深い音楽的知性とロマンティシズムが隅々まで行き届いている。
後世への影響と評価
本作の緻密で豊かなサウンド・プロダクションは、後世のヒップホップやネオソウル、R&Bのクリエイターたちにとって無尽蔵のインスピレーション源となった。とりわけ名曲「It's Only Love Doing Its Thing」は、2003年に50 CentがNate Doggを迎えて放った全米ビルボードHot 100第1位の大ヒット曲「21 Questions」のメイン・トラックとしてサンプリング/補間され、新世代のリスナーにもその美しい旋律が認知された。さらに1989年には英ブルー・アイド・ソウル・バンドのSimply Redが同曲をカヴァーしてヒットさせるなど、楽曲自体のタイムレスな魅力が実証されている。
少年期に名ピアニストとしてキャリアをスタートさせ、数多くの名作を生み出し続けたバリー・ホワイト。2003年に58歳で惜しまれつつ世を去ったが、ディスコ狂騒の1978年に放たれた本作『Barry White The Man』は、シンフォニック・ソウルとアーバン・ファンクが奇跡的な調和を遂げた彼のディスコグラフィ屈指の到達点として輝き続けている。
トラックリスト
- A1 Look At Her 7:40
- A2 Your Sweetness Is My Weakness 8:04
- A3 Sha La La Means I Love You 8:00
- B1 September When I First Met You 6:57
- B2 It's Only Love Doing Its Thing 4:04
- B3 Just The Way You Are 7:09
- B4 Early Years 6:50
動画プレイリスト
このアーティストについて
Barry Whiteは、1944年9月12日にテキサス州ガルベストンで生まれ、2003年7月4日にロサンゼルスで亡くなったアメリカのミュージシャン、作曲家、プロデ...
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