Genesis - Nursery Cryme (1971)
Genesis 1971

Genesis - Nursery Cryme (1971)

Rock Prog Rock

Genesis『Nursery Cryme』――初期プログレの輪郭を決定づけた1971年作

Genesisの『Nursery Cryme』は、1971年11月にUKのCharismaから出た3作目のスタジオ・アルバムである。前作『Trespass』までの流れを受けつつ、ここでバンドは後の“黄金期”につながる編成を固めた。Peter Gabriel、Tony Banks、Mike Rutherfordに加えて、Phil CollinsとSteve Hackettが初参加した最初の作品で、Genesisの初期像を決定づける重要盤として扱われている。

制作はロンドンのTrident Studiosで行われ、プロデュースはJohn Anthony。UKオリジナル盤はCharismaの“Pink scroll”ラベル、ノンラミネートの外装テクスチャー付きゲートフォールド・ジャケットという仕様で、当時の英国盤らしい作りになっている。レーベル表記には℗1971、B&C Records Ltd.の製造・流通クレジットが入り、1U/2Uのスタンパーからコントラクト・プレス盤と分かる。

バンドにとっての位置づけ

このアルバムは、Genesisがシアトリカルな演出と複雑な曲構成を本格的に結びつけていく段階の作品である。Peter Gabrielの語り口の強いボーカル、Tony Banksのメロトロン、Mike Rutherfordの低音域の支え、そして加入したばかりのPhil Collinsのドラミングとコーラス、Steve Hackettのギターが噛み合っている。特にCollinsは「For Absent Friends」で初めてリード・ボーカルを担当し、後年の活動につながる存在感をすでに示している。

Hackettの参加も大きい。タッピングを含む新しい奏法や、音の伸びを生かしたフレーズが入り、バンドのアンサンブルに明確な変化が出ている。ここでの演奏は、後のGenesisが持つ緻密さの土台になっている。

収録曲と内容

冒頭の「The Musical Box」は、この作品を代表する1曲である。クロッケーの最中に首をはねられた少年Henryをめぐる不穏な物語を軸に、静かな部分と激しい展開が切り替わる構成。Gabrielの芝居がかった歌い回しと、終盤に向けて積み上がるバンド演奏が印象に残る。

「The Return of the Giant Hogweed」は、有毒植物ジャイアント・ホグウィードを題材にした曲で、誇張の効いた物語性が前面に出る。「Seven Stones」ではメロトロンの使い方が目立ち、「Harlequin」や「Harold the Barrel」も含めて、短い曲でも構成の工夫がはっきりしている。「The Fountain of Salmacis」はギリシャ神話を題材にした長めの楽曲で、アルバムの締めとして重みがある。

サウンドと聴きどころ

実際に通して聴くと、音の作りはまだ荒さを残しつつも、各パートの配置がかなり明確である。ギター、キーボード、ベース、ドラムが単純に厚く重なるのではなく、場面ごとに役割が切り替わる。Gabrielのボーカルは前に出るが、演劇的な語りだけで押し切るのではなく、曲の展開に合わせて細かく表情を変えている。Collinsのドラムは、のちのポップ期よりも曲の転換を支える役割が強く、Hackettのギターは旋律をなぞるだけでなく、音色の変化で場面を作る。

初期Genesisらしいのは、ロックの演奏に童話、神話、風刺、怪談めいた要素が同居している点である。YesやKing Crimson、Jethro Tullなど同時代の英国プログレと並べて語られることが多いが、Genesisはその中でも物語性の強さが際立つ。のちのシンフォニックなプログレや、演劇的なステージ表現にもつながる要素が、この時点でかなり固まっている。

発売時の反応とその後

発売当初の商業的な動きは大きくなかったが、イタリアでは早くから人気を得てチャート上位に入った。英国では後年になってからチャート入りしており、当時の評価がすぐに売上へ結びついた作品ではない。のちにGenesisの評価が高まるにつれて、このアルバムも初期の代表作として見直されていった。2013年には英国でシルバー認定も受けている。

『Nursery Cryme』は、Genesisが単なる英ロック・バンドから、物語を組み立てるプログレッシブ・ロック・バンドへと輪郭をはっきりさせた1枚である。ここにあるのは、のちの大きな成功以前の、まだ生々しい演奏と構成の試行錯誤、そのままの魅力である。

トラックリスト

  1. A1 The Musical Box
  2. A2 For Absent Friends
  3. A3 The Return Of The Giant Hogweed
  4. B1 Seven Stones
  5. B2 Harold The Barrel
  6. B3 Harlequin
  7. B4 The Fountain Of Salmacis

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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