Charles Bradley Featuring Menahan Street Band - Victim Of Love (2013)
Charles Bradley Featuring Menahan Street Band『Victim Of Love』
Charles Bradleyの2作目となる『Victim Of Love』は、2013年4月2日にDunhamとDaptoneから出た作品。Daptone周辺の流れの中で遅くに注目を集めたBradleyが、Menahan Street Bandを伴って録音したアルバムである。
制作背景と録音の流れ
Bradleyは1948年、フロリダ州ゲインズビル生まれ。幼少期に母親に置き去りにされ、祖母に育てられた。1962年にApollo TheaterでJames Brownを見て、その歌とステージを真似るようになる。メイン州で料理人などの仕事をしたのち、1977年からはカリフォルニアで小さなショーに出演し、「Black Velvet」などの名義でJames Brownのものまね芸人として活動した。1990年代半ばにブルックリンへ戻ってからも、地元のクラブで同様のパフォーマンスを続けていた。
そのステージを見たDaptone Records共同創設者Gabriel RothがBradleyを見出し、ギタリスト/プロデューサーのThomas Brenneckへつないだ。2002年からDaptoneでシングルが出始め、録音をまとめたデビュー作『No Time for Dreaming』は2011年、本人が62歳のときに発売された。2012年には彼の半生を追ったドキュメンタリー『Soul of America』がSXSWで上映されている。『Victim Of Love』はその次にあたる作品で、Brenneckがプロデュース、エンジニアリング、ミックスを担当し、Gabriel RothとNeal Sugarmanがエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。演奏はBrenneck率いるMenahan Street Band。彼らは2008年にブルックリンのウィリアムズバーグでBrenneckとHomer Steinweissが開いたオール・アナログのDunham Sound Studiosでハウス・バンドを務めていた。
Bradleyは2013年のSPINのインタビューで、歌詞はバンドの演奏に反応してその場で言葉が出てくる、と話している。本人は「神が内なる辞書をくれたんだと思う」とも語った。Brenneckは、彼が乗ってきたときにテープを回し、出てきた言葉をそのまま残してきたという。「Strictly Reserved for You」については、自分の持っているものを欲しがる人々について歌い、内面を見つめてその愛を世界に向けることが自分の答えだと語っている。
時代の文脈と曲の並び
2000年代以降、Daptoneを中心にアナログ録音で60〜70年代のソウルを鳴らす動きがあり、Bradleyはその中で遅咲きのシンガーとして知られるようになった。本作の前半は、デビュー作の延長にある愛をテーマにしたソウルと、James Brown由来の歌で始まる構成。The Line of Best FitのRo Cemmは、インスト曲「Dusty Blue」を境に、ミーターズ風のダークな音へ移ると書いている。
中盤では、社会や政治に触れる曲が続く。「Where Do We Go From Here?」はサイケデリック・ソウルの調子で、次の世代が受け継ぐ世界を案じて行動を促す曲として触れられている。「Hurricane」は地球を傷つけるなと訴える曲。「Confusion」については、Cemmが閉所恐怖症的でファズがかかり、あからさまに政治的だと評し、Curtis Mayfieldや『Cloud Nine』期のTemptations、Baby Huey & the Babysittersになぞらえた。PopMattersのBrent Faulknerもこの曲をTemptationsの「Ball of Confusion」に重ね、70年代のサイケデリックなブラックスプロイテーション期のソウルにつなげている。
その後の「Crying in the Chapel」は、BradleyとBrenneckの作で、同名の有名曲とは別の曲。失恋のテーマに戻る位置づけになっている。
評価と受け止められ方
PopMattersのFaulknerは本作を「古典的で本物でありながら、まったく時代錯誤に感じさせない」と評した。音数を絞ったアレンジがBradleyの歌の余地を生んでいる点を挙げ、「Let Love Stand a Chance」ではバラードで彼の人柄が光ると書き、「Hurricane」にはMarvin Gayeの『What's Going On』を重ねている。AllMusicのThom Jurekは、成長とDaptoneにとって新しいサウンドを聴き取った。The GuardianのAlexis Petridisは全編を通して質が落ちないと評している。
一方で、PitchforkのDean Van Nguyenは、デビュー作ほどの成功作ではなく、Bradleyと楽曲のつながりが薄く感じられるとした。The New York TimesのNate Chinenも、デビュー作ほどの驚きはないとしつつ、バンドの骨太さとツアーで鍛えられた歌を評価している。Metacriticのスコアは81。Billboard 200で130位、R&B/ヒップホップ・アルバム・チャートで17位、ベルギー・フランダースで6位、オランダで9位を記録した。
トラックリスト
- A1 Strictly Reserved For You 3:43
- A2 You Put The Flame On It 3:49
- A3 Let Love Stand A Chance 3:59
- A4 Victim Of Love 3:29
- A5 Love Bug Blues 3:00
- A6 Dusty Blue 3:22
- B1 Confusion 3:45
- B2 Where Do We Go From Here? 3:11
- B3 Crying In The Chapel 3:55
- B4 Hurricane 3:32
- B5 Through The Storm 4:42