Claudja Barry - Sweet Dynamite (1976)
Claudja Barry『Sweet Dynamite』──ディスコ黄金期の入口に置かれた1976年のデビュー作
Claudja Barryの『Sweet Dynamite』は、1976年に西ドイツのLollipop Recordsから出たデビュー・アルバムだ。ジャマイカ生まれ、カナダ育ちの彼女が、ドイツでキャリアを本格化させていく初期の姿がそのまま刻まれている。のちにディスコ/Hi-NRGのシンガーとして知られることになるが、この時点ですでに声の押し出しとビートへの乗り方がはっきりしている作品で、70年代半ばの欧州ディスコの空気をよく伝える一枚になっている。
ドイツ盤オリジナルの位置づけ
このアルバムは、1976年11月にヨーロッパでPhilips/Lollipopから登場したオリジナル盤で、ドイツ盤は9曲入り。タイトル曲「Sweet Dynamite」を軸に、長尺の「Do It Again」などを含む構成で、シングルとアルバムの境目がゆるい時代のディスコ作品らしく、曲の展開に余裕がある。Lollipopは当時、ディスコ作品を多く手がけていたレーベルで、本作もその流れの中に置かれている。
クレジット面では、プロデュースがユルゲン・S・コルドゥレッチュ、アレンジがイェルク・エヴァース。ドラムのキース・フォーシー、キーボードのトール・ボールドゥルソン、バッキング・ヴォーカルのロベルタ・ケリーといった名前も見える。制作陣の顔ぶれからも、当時の欧州ディスコ制作の現場に近い手触りがある。
音の印象と、アルバムとしての流れ
全体を通して耳に残るのは、リズムの明快さと、ヴォーカルの前に出る感じだ。タイトル曲「Sweet Dynamite」は、曲名どおりの推進力を持つナンバーで、派手に盛り上げるというより、一定のテンポを保ちながら体を動かす感覚を作っていく。ダンス・ミュージックとしての機能が先に立ちつつ、歌が埋もれないところにClaudja Barryらしさがある。
一方で、長めの曲ではバンド的な演奏の流れもはっきりする。特に「Do It Again」のような曲では、反復するグルーヴの上に声を乗せる構成が目立ち、ディスコの初期らしいクラブ志向が出ている。アルバム全体としては、後年の洗練されたディスコ作品よりも、まだ少し生っぽい質感が残る。そこがこの時代の記録として面白いところだ。
アーティストの歩みの中での意味
Claudja Barryは1952年にジャマイカで生まれ、6歳でカナダのトロントへ移った。高校卒業後にロンドンへ渡り、ミュージカル出演を経て、1975年に西ドイツへ移住している。その流れの中で、フランク・ファリアン周辺の活動を経てLollipopにたどり着き、このアルバムへつながった。つまり『Sweet Dynamite』は、単なるデビュー作というより、欧州ディスコの制作環境の中で自分の立ち位置を作っていく出発点でもある。
のちに彼女は「Johnny, Johnny Please Come Home」「(Boogie Woogie) Dancin' Shoes」「Work Me Over」などで知られるようになるが、その前段階としての『Sweet Dynamite』には、まだヒット曲のイメージが固まりきる前の、実験と適応の両方が入っている。ここで見えてくるのは、アメリカのソウル/ディスコ直系というより、ヨーロッパの現場で磨かれたダンス・ポップの感触だ。
米国盤との違いと、その後の広がり
この作品は後に米国でも展開されるが、オリジナルのドイツ盤と米国盤では内容がかなり異なる。米国では1977年5月にSalsoul Recordsからリミックス版として出ており、曲数も再構成されている。トム・ムールトンによる編集で「Live A Little Bit」からヴォーカルが外されるなど、クラブ向けの見え方を強く意識した作りになっていた。オリジナル盤がアルバムとしての流れを持つのに対し、米国盤はダンス・フロアでの機能を前面に出した形だ。
また、収録曲「Love For The Sake Of Love」はのちにサンプリング素材としても使われ、1999年のモンテル・ジョーダン「Get It On Tonite」などにつながっていく。70年代ディスコの一部が、その後のR&Bやヒップホップの中で再利用されていく流れを考えると、このアルバムの存在感は単なる初期作以上のものがある。
まとめ
『Sweet Dynamite』は、Claudja Barryのキャリアの入口にある作品であり、70年代半ばのドイツ盤ディスコの手触りをそのまま残したアルバムだ。タイトル曲をはじめ、ビートの明快さ、歌の強さ、欧州制作らしい整ったサウンドが並び、後の代表曲へつながる基本形がすでに見える。ヒット曲だけを切り取るよりも、彼女がどの現場で育ち、どんな音の中で歌い始めたのかを知る手がかりとして、重要な一枚になっている。
トラックリスト
- A1 Sweet Dynamite 4:06
- A2 Why Must A Girl Like Me 4:07
- A3 Dance, Dance, Dance 5:34
- A4 Live A Little Bit 3:51
- A5 This Taste Of Love 4:26
- B1 Love For The Sake Of Love 5:16
- B2 Ride On My Fire 4:07
- B3 Do It Again 8:28
- B4 Nobody Loves Me Like You Do Do 2:56