The S.O.S. Band - S.O.S. III (1982)
The S.O.S. Band『S.O.S. III』について
The S.O.S. Bandの『S.O.S. III』は、1982年にUSのTabu Recordsから発表された3作目のアルバム。アトランタ発のR&B/ファンク・バンドが、80年代前半のブラック・ミュージックの流れの中で、自分たちの音を少しずつ更新していく過程がはっきり見える作品です。デビュー曲「Take Your Time (Do It Right)」で注目を集めたグループが、次の段階へ進む前の重要な一枚として位置づけられている盤でもあります。
バンドの背景と当時の立ち位置
The S.O.S. Bandは、1977年にアトランタで「Sounds of Santa Monica」として結成され、その後プロデューサーのSigidi Abdullahの提案で「Sounds of Success」を意味するThe S.O.S. Bandへ改名したグループ。1980年の「Take Your Time (Do It Right)」がR&Bチャート1位、Billboard Hot 100で3位を記録し、プラチナ・ディスクを獲得したことで、一気に名前が広まりました。
『S.O.S. III』の時点では、その成功を土台にしながらも、ディスコ以後のR&Bとファンクを、当時らしいシンセサイザーやヴォコーダーの感触でまとめていく方向がはっきりしています。メンバーにはMary Davis、Jason Bryant、Billy Ellis、John Alexander Simpson、Jerome Thomasらが並び、リード・ヴォーカルはMary Davisが担う構成。バンドとしての演奏感と、80年代初頭のスタジオ制作の感触が同居した内容です。
制作とサウンド
制作はRicky SylversとGene Dozier、エグゼクティヴ・プロデューサーはLeon F. Sylvers III。録音はアトランタのMaster SoundとAxis Recording、ロサンゼルスのSound MastersとLarrabee Soundの4か所で行われています。録音場所が複数に分かれていることもあってか、バンドの地元感を残しつつ、都市型の洗練も入った仕上がりです。
演奏面では、Jason Bryantのキーボードやヴォコーダー、Abdul Ra'oofのトランペットとフリューゲルホルン、Billy Ellisのサックス、John Simpsonのベース、Jerome Thomasのドラムが骨格を作っています。ギターやホーンが前に出すぎず、リズムと電子音が曲の推進力を作る場面が多い作品。ディスコの残り香を引きずりながら、80年代のR&Bへ寄っていく途中の質感がある。
シングルとアルバムの流れ
このアルバムからは3枚のシングルが切られました。「High Hopes」はR&Bチャート25位、ダンス・クラブ・プレイ・チャート49位を記録し、The S.O.S. BandとJimmy Jam & Terry Lewisの最初の共同作業としても知られています。「Have It Your Way」はR&Bチャート57位、「Groovin' (That's What We're Doin')」はダンス・クラブ・プレイ・チャート47位、全英シングル・チャート72位。
アルバム全体の成績は、R&Bアルバム・チャート27位、Billboard 200で172位。大ヒット作というより、次の飛躍の入口にある作品として見たほうが自然です。特に「High Hopes」で始まるJam & Lewisとの接点は、この後のグループの方向を決める重要な出来事。続く「Just Be Good To Me」や「The Finest」へつながる流れの、出発点の一つとして押さえておきたいところです。
同時代の文脈
1982年のR&B/ファンクは、ディスコの整理が進み、シンセや打ち込みの要素が存在感を増していた時期。The S.O.S. Bandもその流れの中で、バンド演奏を残しながら電子的な質感を取り込んでいます。The Timeや初期のPrince周辺、あるいは同じTabu周辺の作品群と比べても、グルーヴの作り方にスタジオ主導の感覚が強いのがこの時期の特徴です。
Tabu Records自体も、Clarence Avantが立ち上げた80年代R&Bの重要レーベルで、The S.O.S. Band、Alexander O'Neal、Cherelleなどを抱え、Jimmy Jam & Terry Lewisがプロデュースの腕を磨いた場として知られます。『S.O.S. III』は、そのレーベルの持つ音の輪郭を示す一枚でもあります。
このUS盤について
今回のUS盤はTabuのFZ 38352。ランアウトには「G」または「G1」の刻印があり、「MASTERED BY CAPITOL」のスタンプも確認できます。プレスは該当工場によるものとされ、同年US盤には他にも別プレスのバリエーションが存在します。オリジナル期のUS盤としては、80年代初頭のTabu作品らしいキャラクターをそのまま持った仕様です。
『S.O.S. III』は、The S.O.S. Bandが初期の成功から次の段階へ進む途中で残した、過渡期の記録。派手な転換よりも、サウンドの重心を少しずつ移していく過程が聴き取れるアルバムです。そこに、後年の大きな飛躍の前触れが見える作品でもあります。
トラックリスト
- A1 Can't Get Enough 5:45
- A2 High Hopes 6:29
- A3 Have It Your Way 5:07
- A4 Your Love (It's The One For Me) 5:18
- B1 Good & Plenty 4:24
- B2 Looking For You 4:27
- B3 These Are The Things 4:47
- B4 You Shake Me Up 4:00
- B5 Groovin' (That's What We're Doin') 4:28
動画プレイリスト
このアーティストについて
The S.O.S. Bandは、アメリカのR&B/エレクトロ・ファンク・バンドだ。ジャンル表記ではFunk / Soul、スタイルではSoul、Discoが挙がっている。も...
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