Deep Purple - Deep Purple (1969)
Deep Purple 1969

Deep Purple - Deep Purple (1969)

Rock Hard Rock

Deep Purple『Deep Purple』(1969)

Deep Purpleの3作目にあたる『Deep Purple』は、1969年にUKで発表されたアルバムだ。バンド名と同じタイトルを持つ作品で、のちに「Deep Purple III」や「April」とも呼ばれることがある。初期Deep Purpleの流れをつかむうえで重要な一枚で、Mark I編成による最後のスタジオ作として位置づけられている。録音は1969年1月から3月にかけてロンドンのDe Lane Lea Studiosで行われた。

この時期のDeep Purpleは、まだ後年の重厚なハードロック一色ではなく、サイケデリック・ロックやプログレッシブ・ロックの要素も残している。とはいえ、単なる試行錯誤の記録ではなく、Ritchie Blackmoreのギター、Jon Lordのオルガン、Ian Paiceのドラムがすでに強い輪郭を持っていて、バンドの核がかなりはっきりしている作品でもある。

作品の位置づけ

Deep Purpleは1968年結成のイングランドのバンドで、Led ZeppelinやBlack Sabbathと並んで、ヘヴィメタルとモダン・ハードロックの先駆けとして語られることが多い。この『Deep Purple』は、そうした後年の評価につながる前段階にある作品で、初期3作のなかでも特に構成の起伏が大きい。バンドの名を冠したアルバムでありながら、内容は一枚の名刺というより、次の段階へ移る直前の記録に近い。

UK盤はHarvestからのリリースで、カタログ番号はSHVL 759。HarvestはEMI系のプログレッシブ寄りレーベルとして知られ、この時代の英国ロックの空気をそのまま背負ったような存在だ。Deep Purpleのように、硬質な演奏と長めの曲展開を持つバンドとは相性がよかったはずだ。

聴きどころ1: “Chasing Shadows”

冒頭から耳に残るのは、演奏のまとまりのよさだ。曲が進むにつれて、オルガンとギターがぶつかり合うというより、互いの隙間を埋めるように組み立てられていく。ここでは後のDeep Purpleに通じる「鍵盤が前に出るロック」の感触が、かなり早い段階で見えている。ギターが前面に押し出される場面でも、Jon Lordの音が土台を作っているのがわかりやすい。

特に印象に残るのは、リズム隊の硬さだ。Ian Paiceのドラムは派手に暴れるというより、曲の輪郭を崩さずに押し切るタイプで、まだ若いバンドらしい勢いと、すでに完成度の高い演奏の両方がある。初期Deep Purpleを聴くとき、この曲は「まだこういう方向でも鳴っていたのか」と感じやすい一曲だと思う。

聴きどころ2: “Blind”

このアルバムの中では、少し内省的な空気を持つ曲として耳に残る。派手なリフで引っ張るというより、展開の中で少しずつ密度を上げていくつくりで、バンドの演奏力がそのまま曲の説得力になっている。ハードロック以前の英国ロックにある、長いフレーズをじっくり積み上げる感覚がはっきり出ている。

このあたりを聴くと、Deep Purpleが単に速くて大きい音のバンドだったわけではないことがわかる。のちの代表作群に比べると温度はやや落ち着いているが、その分だけ各パートの動きが見えやすい。Ritchie Blackmoreのギターも、この時点ですでに鋭さがあり、のちの荒い攻撃性の芽が見えているようにも感じられる。

注目曲: “April”

タイトル曲の“April”は、このアルバムの中でも特に知られた存在だ。組曲的な構成を持ち、前半の静かな流れから徐々に厚みを増していく。Deep Purpleの初期を代表する長尺曲として扱われることが多く、バンドがこの時点で単純な3分ロックに収まらないことを示している。

曲の後半では、オーケストラ的な広がりを思わせる進行と、ロックバンドとしての押しの強さが同居する。ここでのJon Lordの役割はかなり大きく、単なる伴奏ではなく、曲の空気そのものを作っている印象が強い。初期Deep Purpleの特徴を一曲でつかむなら、この“April”がわかりやすい。

注目曲: “The Painter”

“The Painter”は、アルバムの中で比較的コンパクトにまとまった曲として機能している。派手さだけで押すのではなく、メロディと演奏のバランスで聴かせるタイプで、初期Deep Purpleの幅を確認できる一曲だ。バンド名義の作品でありながら、全体が一本調子にならないのは、この手の曲がしっかり置かれているからでもある。

ここでは、のちに重厚なハードロック・バンドとして定着する前の、もう少し多面的な姿が見える。演奏の端々に強い推進力はあるが、それを前に出しすぎず、曲の形を優先している印象だ。アルバム全体の中で、長い組曲と並んで耳を整える役割も担っている。

同時代との関係

1969年の英国ロックは、サイケデリックの残響と、より硬いロックへの移行が同時に進んでいた時期だ。Deep Purpleのこの作品も、その境目にある。Led ZeppelinやBlack Sabbathのように、完全に新しいハードロックの言語を前面に出す段階というより、既存のロック語法の中で音を太くし、構成を長くし、演奏の圧を高めていく途中の姿に近い。

その意味で、『Deep Purple』は後年の代表作と比べると地味に感じられる場合もあるが、バンドがどこからどこへ進んだのかを確かめるには分かりやすい。Mark Iの終着点としても、Deep Purpleという名前を掲げた作品としても、初期英国ロックの一断面をよく伝えるアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 Chasing Shadows
  2. A2 Blind
  3. A3 Lalena
  4. A4a Faultline
  5. A4b The Painter
  6. B1 Why Didn't Rosemary?
  7. B2 Bird Has Flown
  8. B3 April

動画

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