Elbow - Flying Dream 1 (2021)
Elbow『Flying Dream 1』
イギリス・マンチェスターを拠点に活動するオルタナティヴ・ロック・バンド、エルボー(elbow)が2021年にPolydorから発表した通算9作目のスタジオ・アルバム。コロナ禍のロックダウン下において、マンチェスターとロンドンの自宅に分かれたメンバーたちがリモートでアイデアを交わしながら曲の骨格を組み上げ、パンデミックの影響で一時休館していたイングランド・ブライトンの歴史的劇場「シアター・ロイヤル(Theatre Royal)」に集結。無人の客席とステージの豊かな自然残響を活かしてライブ録音された。
制作背景と音楽性の進化
スタジアムや大型フェスティバルを揺るがしてきたアリーナ・アンセムや、前作『Giants of All Sizes』(2019年)の切迫したトーンから一転し、本作では極めて親密で静謐なチェンバー・ポップ/ジャズ・アプローチへと舵を切っている。ヴァン・モリソンの『Astral Weeks』やトーク・トークの後期作品に影響を受けたというサウンドは、柔らかなアップライト・ピアノ、暖かなウッドベース、ブラシを用いた繊細なパーカッションが主体となり、空間の広がりそのものが一つの楽器のように機能している。
ガイ・ガーヴィーの慈愛に満ちた包容力のある歌声は、ロンドン・コンテンポラリー・ボイシズの幽玄なコーラスや、盟友ジェスカ・フープ(Jesca Hoop)のゲスト・ボーカルによってより一層の深みを獲得している。
主要楽曲とアルバムの意義
幼少期の記憶と飛翔感を重ね合わせたオープニングのタイトル曲「Flying Dream 1」や、パートナーへの純真な愛と感謝を静かに紡ぎ出す「Six Words」、そして2008年のマーキュリー賞受賞作と同名を冠しながら、亡き親友ブライアン・グランシーへの変わらぬ哀惜と愛惜を歌い上げた「The Seldom Seen Kid」など、全編にわたって誠実で温もりあふれる楽曲が並ぶ。
孤独と不確実性に覆われた時代にあって、人々の心にそっと寄り添う祈りのような優しさを宿した本作は、30年以上のキャリアを誇るエルボーのディスコグラフィにおいても格別の純度と美しさを誇る傑作である。
トラックリスト
- A1 Flying Dream 1
- A2 After The Eclipse
- A3 Is It A Bird
- A4 Six Words
- A5 Calm And Happy
- B6 Come On, Blue
- B7 The Only Road
- B8 Red Sky Radio (Baby Baby Baby)
- B9 The Seldom Seen Kid
- B10 What Am I Without You