Etta James - At Last! (1960)
Etta James 1960

Etta James - At Last! (1960)

Blues Funk / Soul Soul Rhythm & Blues

Etta James『At Last!』

アメリカのR&B/ソウル/ブルース・シンガー、エタ・ジェイムズ(Etta James、出生名:Jamesetta Hawkins)が、1960年11月15日にシカゴの名門Chess Records(チェス・レコード)傘下のArgo Records(規格番号:LP 4003)から発表した記念すべきデビュー・スタジオ・アルバム。ジャケット写真はドン・ブロンスタイン(Don Bronstein)、ライナーノーツはドン・カメラー(Don Kamerer)が担当している。1960年に録音された全10曲を収め、R&B、ブルース、ジャズ・スタンダード、トラディショナル・ポップの境界を自在に横断する歴史的名盤として知られる。

制作背景・エピソード

10代でジョニー・オーティス(Johnny Otis)に見出され、1955年にModern Recordsから発表した「The Wallflower (Roll with Me, Henry)」でR&Bチャート1位を獲得していたジェイムズは、1960年にドゥーワップ・グループThe Moonglowsのリーダーで当時の恋人だったハーヴィー・フークア(Harvey Fuqua)の勧めでChess Recordsと契約した。チェス兄弟のレナード・チェス(Leonard Chess)とフィル・チェス(Phil Chess)は、彼女の力強く情感豊かなコントラルトの声質にはR&B市場にとどまらないメインストリーム・ポップへのクロスオーバーの可能性があると考え、1960年1月から10月にかけてシカゴのChess Studiosで行われた録音において、編曲家・指揮者のライリー・ハンプトン(Riley Hampton)による華麗なストリングス/オーケストラ・アレンジを全面的に導入した。

収録された10曲のうち4曲がシングルとして大ヒットを記録している。まずチェス移籍第1弾シングルとなったB3「All I Could Do Was Cry」(1960年)は、のちにモータウンを創設する若きベリー・ゴーディ(Berry Gordy)とその姉グウェン・ゴーディ・フークア(Gwen Gordy Fuqua)、ビリー・デイヴィス(Billy Davis)が共作した劇的なバラード(ハーヴィー・フークアがグウェン・ゴーディと結婚した実体験を投影したとも語られる)で、全米R&Bチャート2位・ポップ(Billboard Hot 100)33位を記録。続いてニューオーリンズのエディ・ボ(Eddie Bo)とポール・ゲイテン(Paul Gayten)が書いたA2「My Dearest Darling」がR&B 5位・ポップ34位、1937年のスタンダード曲カバーA3「Trust in Me」もR&B 4位・ポップ30位を記録した。そして、マック・ゴードン(Mack Gordon)とハリー・ウォーレン(Harry Warren)が1941年の映画『銀嶺セレナーデ(Sun Valley Serenade)』および1942年の映画『オーケストラの妻たち(Orchestra Wives)』のために書きグレン・ミラー楽団の演奏で知られていたスタンダード曲をハンプトンの流麗な弦編曲で甦らせたタイトル曲B2「At Last」は、1961年初頭にR&B 2位・ポップ47位を記録し、ジェイムズの生涯の代名詞(シグネチャー・ソング)として定着した。

時代の文脈と収録曲

本作は、1950年代のティーン向けジャンプ・ブルース/R&Bシンガーだったジェイムズが、より成熟したソウル/トーチ・バラード・シンガーへと飛躍したことを示す転換点となった。上記4大ヒット・シングルのほかにも、ソニー・トンプソン作のR&BバラードA1「Anything to Say You're Mine」、ジェイムズとジョー・ジョセア共作のR&BナンバーA5「Tough Mary」、サニー・クラップ作のB5「Girl of My Dreams」(歌詞では「Boy of My Dreams」と歌唱)に加え、ルイ・プリマらが書いた1946年のジャズ/ポップ・スタンダードA4「A Sunday Kind of Love」、ハロルド・アーレン&テッド・ケーラー作の1933年のトーチ・ソング名曲B4「Stormy Weather」といったスタンダード曲の堂々たる解釈、さらにはマディ・ウォーターズの1954年の録音で知られるウィリー・ディクソン(Willie Dixon)作のシカゴ・ブルース古典を圧倒的なシャウトで歌い上げたB1「I Just Want to Make Love to You」まで、彼女の幅広い表現力が一作に凝縮されている。

なお、1999年にはMCA/Chessから、ハーヴィー・フークアとのデュエット4曲(「My Heart Cries」「Spoonful」「It's a Crying Shame」「If I Can't Have You」)をボーナス・トラックとして追加したデジタル・リマスターCDが再発された。

後世への影響と評価

タイトル曲「At Last」は1999年にグラミーの殿堂(Grammy Hall of Fame)入りを果たし、2009年には米国議会図書館の国立録音登録簿(National Recording Registry)に永久保存登録されたほか、『ローリング・ストーン』誌の「歴代最高の500曲(500 Greatest Songs of All Time)」(2021年版)で115位に選出され、RIAAゴールド認定も受けている。カバーも数多く、スティーヴィー・ワンダー、ジョニ・ミッチェル、シンディ・ローパー、セリーヌ・ディオン、クリスティーナ・アギレラ(2012年のジェイムズの葬儀でも追悼歌唱)らが取り上げてきた。特に2008年の映画『キャデラック・レコード(Cadillac Records)』ではビヨンセ(Beyoncé)がエタ・ジェイムズ役を演じて「At Last」と「All I Could Do Was Cry」を歌い、2009年1月のバラク・オバマ米大統領就任舞踏会におけるオバマ夫妻のファースト・ダンスでもビヨンセが「At Last」を披露し、第52回グラミー賞で最優秀トラディショナルR&Bヴォーカル・パフォーマンス賞を受賞している。

アルバム自体も後年Billboard Top Catalog Albumsチャートで最高12位を記録するロングセラーとなり、『ローリング・ストーン』誌(星5つ満点)の「歴代最高のアルバム500選(500 Greatest Albums of All Time)」で119位(改訂版で191位)、『Pitchfork』(9.0/10点)の「1960年代のベスト・アルバム200選」で62位に選出、『Encyclopedia of Popular Music』でも最高評価の5つ星を獲得している。AllMusicのスティーヴン・クック(Stephen Cook)も星5つ満点を与え、ブルース、R&B、ジャズ・スタンダードの多彩でスウィングするプログラムの中で絶頂期の歌声が聴けると称賛し、特にタイトル曲において力強いブルース・シャウトから繊細で軽やかなフレージングへと自在に移り変わり、ルース・ブラウン譲りのバッド・ガール風の唸り(グロウ)がさらなる凄みを加えていると評している。

トラックリスト

  1. A1 Anything To Say You're Mine 2:35
  2. A2 My Dearest Darling 3:01
  3. A3 Trust In Me 3:08
  4. A4 Sunday Kind Of Love 3:15
  5. A5 Tough Mary 2:24
  6. B1 I Just Want To Make Love To You 3:03
  7. B2 At Last 3:00
  8. B3 All I Could Do Was Cry 2:57
  9. B4 Stormy Weather 3:07
  10. B5 Girl Of My Dreams (rendered as Boy Of My Dreams) 2:21

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Etta James

Etta James

Etta Jamesは、1938年1月25日にアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスで生まれたR&B/ソウル・シンガーだ。2012年1月20日にカリフォルニア州リ...

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