Al Greene - Back Up Train (1968)
Al Greene『Back Up Train』
のちにメンフィスのHi Recordsで1970年代ソウル界の頂点に立つアル・グリーンが、ウィリー・ミッチェルと出会う前の初期キャリアにおいて、本名の綴りである「Al Greene」名義で発表したファースト・アルバム(Hot Line Music Journal Records、カタログ番号:HLS-1500S)。タイトル曲「Back Up Train」は、高校時代の友人たちが立ち上げた同レーベルから「Al Greene & The Soul Mates」名義のシングルとして発表され、その全米ヒットを受けて大手Bell Recordsの全国配給のもとで制作された初期の貴重な記録だ。
制作背景・エピソード
アル・グリーン(本名:Albert Leornes Greene)は1946年、アーカンソー州フォレスト・シティ生まれ。1950年代後半に家族とともにミシガン州グランドラピッズへ移住し、幼少期から父親が率いるゴスペル・カルテット「The Greene Brothers」で歌っていたが、10代の頃に自宅でジャッキー・ウィルソンの世俗的なR&Bレコードを聴いていたことが敬虔な父親の逆鱗に触れ、家を追い出されてしまう。その後、グランドラピッズのサウス・ハイスクール時代の友人だったカーティス・ロジャース(Curtis Rodgers)やパーマー・ジェームズ(Palmer James)らとR&Bヴォーカル・グループ「Al Greene & the Creations」を結成。1967年にロジャースとジェームズが地元でインディペンデント・レーベル「Hot Line Music Journal」を設立すると、グループ名を「Al Greene & the Soul Mates」に改め、ロジャースとジェームズが共作・プロデュースしたシングル「Back Up Train」をリリースした。
このシングルが1967年末から1968年初頭にかけて全米R&Bチャート5位まで上昇する大ヒットとなったことを受け、フル・アルバム『Back Up Train』が制作・発売された。収録曲の大半はプロデューサーのパーマー・ジェームズ、カーティス・ロジャース、ティップ・ワトキンス(Tip Watkins)によって書かれており、ロバート・アール・ウィリアムズ作の「Guilty」なども収められている。
時代の文脈
1967年から1968年当時のアメリカ・ソウル界は、同じミシガン州デトロイトのモータウンが誇る洗練されたポップ・ソウルと、メンフィスのスタックスやマッスル・ショールズに代表される泥臭く熱狂的なサザン・ソウル、さらにシカゴのカーティス・メイフィールド/インプレッションズ流のノーザン・ソウルが交錯していた時期だった。グランドラピッズという地方都市のローカル・シーンから生まれた本作には、モータウンにならって自前のソウル・レーベルを築こうとした若きロジャース&ジェームズのDIY精神が息づいている。
また、まだ代名詞となるウィスパー&ファルセット唱法を確立する前の、20歳前後のアル・グリーンが敬愛するサム・クック、ジャッキー・ウィルソン、ウィルソン・ピケット、ジェームズ・ブラウンらの歌唱スタイルを貪欲に吸収していた「原石の時代」の記録でもある。このヒットを引っ提げてチトリン・サーキットを巡業していたグリーンは、後続シングルの不発でグループが解散状態となった1969年、テキサス州でのクラブ公演でウィリー・ミッチェルに見出され、ミッチェルから「他の誰かの真似ではなく、自分の声で歌え」と助言を受けて、名前の末尾から「e」を取った「Al Green」としてHi Recordsと契約することになる。
サウンドと聴きどころ
アルバム最大の聴きどころは、オープニングを飾るタイトル曲「Back Up Train」だ。列車のリズムを模した緩やかなシャッフル・ビートと泣きのギター、静かに寄り添うオルガンとホーンの上で、若きグリーンが失った恋人に「列車よ、どうか引き返してくれ」と切実に訴えかけるディープ・バラードであり、すでに後のHi Records時代を予感させる繊細な節回しとエモーショナルな爆発力が同居している。
そのほか、軽快なノーザン・ソウル調の「Hot Wire」や「Don’t Leave Me」「Get Yourself Together」、ブルージーなバラード「Guilty」など、1960年代後半のオーセンティックなR&B/ソウル・ナンバーが並ぶ。中でも特筆されるのが、本作で唯一アル・グリーン自身が単独で作曲を手がけたA3「Stop And Check Myself」で、1分41秒という短さながらジェームズ・ブラウン直系のファンキーでタイトなリズム感覚が弾ける1曲として、AllMusicのStephen Thomas Erlewineら批評家からも「後の1970年代の傑作群に通じるファンキーな感性の萌芽が聴ける」と高く評されている。
後世への影響と評価
リード・シングルの「Back Up Train」は1968年初頭に米Billboard R&Bシングル・チャートで最高5位、Billboard Hot 100でも最高41位(Cash Box誌では46位)を記録した。その後、グリーンが『Let's Stay Together』(1972年)で世界的スターとなった1972年には、Bell Recordsから『Al Green』と改題して再発(カタログ番号:BELL 6076)され、アルバムがBillboard R&Bアルバム・チャートで最高25位、そこからシングル・カットされた「Guilty」もBillboard R&Bチャートで最高29位(Hot 100で69位)のヒットとなった。
本作は、1970年代の「ザ・ラスト・オブ・ザ・グレート・ソウル・シンガーズ」へと変貌を遂げる直前のミッシング・リンクとしてソウル史において重要な位置を占めており、オリジナルのHot Line Music Journal盤LPは、インディ・ソウルの希少盤としてコレクターの間で高く珍重されている。
トラックリスト
- A1 Back Up Train
- A2 Hot Wire
- A3 Stop And Check Myself
- A4 Let Me Help You
- A5 I’m Reachin’ Out
- A6 Don’t Hurt Me No More
- B1 Don’t Leave Me
- B2 What’s It All About
- B3 I’ll Be Good To You
- B4 Guilty
- B5 That’s All It Takes (Lady)
- B6 Get Yourself Together
動画プレイリスト
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Back Up Train (Remastered)
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Hot Wire (Digitally remastered)
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Stop And Check Myself (Digitally remastered)
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Let Me Help You (Digitally remastered)
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I'm Reachin' Out (Digitally remastered)
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Don't Hurt Me No More (Digitally remastered)
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Don't Leave Me (Digitally remastered)
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I'll Be Good To You (Digitally remastered)
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Guilty (Digitally Remastered)
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That's All It Takes (Lady) (Digitally Remastered)
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Get Yourself Together (Digitally remastered)
このアーティストについて
Al Green(アル・グリーン)は、1946年4月13日生まれのアメリカのソウル/ゴスペル・シンガー、ソングライターだ。アーカンソー州フォレスト・シティ...
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