Fleet Foxes - Crack-Up (2017)
Fleet Foxes 2017

Fleet Foxes - Crack-Up (2017)

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Fleet Foxes『Crack-Up』

Fleet Foxesの『Crack-Up』は、2017年に発表された通算3作目のスタジオ・アルバムである。Seattle出身のインディー・フォーク・バンドとして知られる彼らにとって、前作『Helplessness Blues』(2011年)から実に6年ぶりの新作となった。長い空白を経て戻ってきた作品であり、その時間の重みがアルバム全体にそのまま反映されている。Nonesuchからのリリースで、US盤は限定1,500枚のハンドナンバード仕様。2017年のオリジナル盤としての存在感もはっきりしている。

バンドの位置づけと、この作品の意味

Fleet Foxesは、Robin Pecknoldを中心に2005年に結成された。初期作から、合唱的なコーラス、アコースティック楽器の重なり、古い民謡や室内楽を思わせる構成で注目を集めてきた。『Crack-Up』は、その路線を引き継ぎながら、より組曲的で、曲の区切りが曖昧な作りになっている。バンドの代表曲として広く知られる「Third of May / Ōdaigahara」を含み、アルバム全体の中心に置かれた長尺曲が、作品の輪郭を決めている。

このアルバムのタイトルは、F. Scott Fitzgeraldのエッセイ「The Crack-Up」から取られている。崩れた状態と向き合い、そこから立て直していく感覚が、楽曲の流れや言葉の選び方にまで入り込んでいる。個人の内面に沈み込むだけでなく、そこから視界を広げていくような運びがある。

録音とサウンドの特徴

制作は2016年7月から翌2017年1月にかけて行われ、ニューヨークのElectric Lady StudiosやSear Sound、シアトルのAvast Recording Company、ワシントン州アナコーテスのThe Unknownなど、全米6つのスタジオで録音された。プロデュースはRobin PecknoldとSkyler Skjelsetの共同。ミックスはPhil Ekが担当している。複数の場所で積み重ねられた録音だけあって、音像は一枚岩というより、部屋ごとの響きが層になったような質感を持つ。

冒頭の「I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar」から、1曲の中に複数の場面が連なっていく構成が目立つ。静かな立ち上がりから、拍子やコード感が少しずつ変わり、次の節へ自然に移る。9分近い「Third of May / Ōdaigahara」では、ピアノと弦楽四重奏が前に出て、バンドのフォーク・ロックという枠だけでは収まらない広がりを見せる。曲名の「Third of May」はSkyler Skjelsetの誕生日であり、バンドの2008年デビューEPの発売日にも重なっている。

収録曲の流れ

『Crack-Up』は、派手なヒット曲を前面に押し出すタイプの作品ではないが、曲ごとの役割がはっきりしている。長い導入部を持つ曲、短い転換点のような曲、終盤で感情をまとめる曲が並び、アルバム単位で聴く前提の作りになっている。メロディは耳に残るが、すぐに結論へ向かわず、言葉と音が少しずつ形を変えていく。Fleet Foxesらしいコーラスの厚みは保たれつつ、以前よりも明確に構成を意識した印象がある。

実際に聴くと、音の密度が高い場面でも、楽器の位置関係が比較的見えやすい。ボーカルが前に出る瞬間と、全体の和声に溶ける瞬間の切り替えが細かい。フォーク・ロックの持つ素朴さよりも、室内楽的な整理のされ方が印象に残る。バンドの初期作にあった開放感とは少し異なり、ここでは内省と構築の両方が前に出ている。

評価と当時の反応

リリース後は高い評価を受け、Billboard 200で9位、UKとベルギーでも9位、アイルランドで5位を記録した。Metacriticでは81点の“universal acclaim”、Pitchforkでも8.7点が付けられている。2010年代のインディー・フォーク/バロック・ポップの流れの中でも、Fleet Foxesが単なる懐古的なバンドではなく、長い休止を経てなお構成力を更新できる存在として戻ってきたことを示す一作として扱われている。

同時代の文脈で見ると、Bon IverやMidlake、さらには室内楽的な編成を取り入れるインディー勢と並べて語られることが多い。だが『Crack-Up』は、その中でも特にアルバム全体の組み立てに重心がある。曲単位の印象より、連なり方、切り替わり方、余白の置き方が作品の核になっている。Fleet Foxesのディスコグラフィの中では、再始動後の最初の大きな到達点として見られる内容である。

まとめ

『Crack-Up』は、Fleet Foxesが長い空白のあとに提示した、密度の高い2017年作である。フォーク・ロックを基盤にしながら、組曲的な構成、弦楽の使い方、歌詞の内省が重なり、アルバムとしてのまとまりを強く持っている。限定1,500枚のUS盤という物理的な希少性も含め、オリジナル盤らしい存在感のある一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 I Am All That I Need / Arroyo Seco / Thumbprint Scar 6:25
  2. A2 Cassius, - 4:50
  3. A3 - Naiads, Cassadies 3:11
  4. B1 Kept Woman 3:55
  5. B2 Third Of May / Odaigahara 8:48
  6. C1 If You Need To, Keep Time On Me 3:31
  7. C2 Mearcstapa 4:10
  8. C3 On Another Ocean (January / June) 4:23
  9. D1 Fool's Errand 4:48
  10. D2 I Should See Memphis 4:44
  11. D3 Crack-Up 6:24

動画プレイリスト

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