Ike White - Changin' Times (1976)
Ike White 1976

Ike White - Changin' Times (1976)

Funk / Soul Funk Soul

Ike White『Changin' Times』(1976)

Ike Whiteの『Changin' Times』は、1976年にUSのLAX Recordsから出た、本人にとって唯一のフル・アルバムである。ファンク/ソウルを土台にしながら、刑務所内で録音されたという背景をそのまま作品の輪郭にしている点が大きい。派手な売り方をされた盤ではないが、後年になるほど作品そのものと、そこに至る経緯の両方が注目されてきた1枚である。

刑務所録音という出自

Ike Whiteは1945年にカリフォルニアで生まれたシンガー、ギタリスト、キーボード奏者。19歳のときに殺人罪で終身刑を受け、収監中に音楽を深めていった。ウェブ上で確認できる資料や関連情報によると、転機になったのは1971年のサン・クエンティン刑務所での催し「Soul Day」だった。そこでJerry Goldsteinの目に留まり、アルバム制作が動き出した。

録音はテハチャピ州立刑務所で行われた。空き建物をスタジオ代わりに使い、外部から機材やコーラスを持ち込んで制作したという経緯が残っている。参加者にはGreg ErricoやDoug Rauchの名前があり、刑務所の中で作られた作品としてはかなり本格的な編成で仕上げられている。盤面やクレジットの違いを含め、後年の再発盤やデータベースでは細かな表記差も見られるが、作品の核はこの時期の録音にある。

全6曲、長尺を含む構成

収録は全6曲。9分台から10分台に及ぶ長尺曲を含み、曲数は少なくても内容は濃い。ファンクのリズムを軸にしながら、ソウルの歌心と、少し荒れたギターや鍵盤の響きが重なる作りで、刑務所録音という条件を前提にしても演奏の輪郭ははっきりしている。一般的な70年代ソウルの滑らかさだけで押し切る盤ではなく、演奏の粘りと、歌の切迫感が前に出る。

実際に聴くと、音の作りはラフさよりも、むしろ現場の緊張感が残るタイプである。録音の空気感が閉じた空間の響きを思わせる場面もあり、同時代のファンク/ソウルの中でも、スタジオ作品とは違う質感がある。とくに長尺曲では、リズムの反復の中にフレーズを積み重ねていく進行が目立ち、歌と演奏が同じ速度で熱を上げていく。

1970年代ソウル/ファンクの中での位置

この時期のファンク/ソウルには、政治性や現場感を強く持った作品が多い。Ike Whiteの『Changin' Times』も、その流れの中に置くと見えやすい。Gil Scott-Heronの語りとソウル、あるいはSly & The Family Stone周辺の混ざり方を思わせる部分があり、同時代の社会的な空気を背負った音として捉えやすい。一方で、単なるメッセージ志向ではなく、歌と演奏で押し切るアルバムである点が重要である。

タイトル曲を含む収録曲は、作品全体のテーマをそのまま示すような並びになっている。変化、時間、拘束された環境の中で作られた音楽、という要素が重なり、アルバム全体に一貫性がある。ヒット曲として広く知られた1曲が中心にあるタイプではないが、アルバム全体を通して聴かれることに意味がある盤である。

唯一のオリジナル・アルバムとして

Ike Whiteにとって『Changin' Times』は、長く唯一の公式フル・アルバムとして扱われてきた。後年、本人の人生が再び注目され、ドキュメンタリー『The Changin' Times of Ike White』も作られたことで、作品単体だけでなく、その背景まで含めて語られることが増えた。Stevie Wonderが釈放に関わったというエピソードも知られており、音楽が現実の人生に影響した例としても印象が残る。

1976年のオリジナル盤は、刑務所録音という特殊な条件と、当時のファンク/ソウルの感触が交わった記録として見ておくと分かりやすい。LAX Recordsからのリリースで、当時のレーベル・ワークの中でも、背景の重さと音楽の実直さが同居した作品である。派手さよりも、制作の事情と演奏の熱で記憶される1枚。

トラックリスト

  1. A1 Changin' Times 9:23
  2. A2 Comin' Home 3:54
  3. A3 Antoinette 8:48
  4. B1 I Remember George 9:58
  5. B2 Happy Face 5:12
  6. B3 Love And Affection 5:37

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Ike White

Ike White

Ike Whiteは、カリフォルニア出身のシンガー、ギタリスト、作曲家、キーボード奏者だ。1945年にカリフォルニアで生まれ、2014年に同地で亡くなってい...

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