Milton Wright - Friends And Buddies (1975)
Milton Wright『Friends And Buddies』(1975)について
Milton Wrightの『Friends And Buddies』は、1975年にUSのAlston Recordsから出たファースト・フル・アルバムである。ベティ・ライトの兄として知られるミルトン・ライトが、自身のソウル・シンガー/ソングライター/プロデューサーとしての輪郭をはっきり示した作品で、70年代マイアミ・ソウルの中でも独特の位置を占める一枚だ。ファンクの推進力を持ちながら、単なるダンス志向に寄らず、社会意識のある歌詞やジャジーなコード感、アコースティック・ギターの響きが前に出てくるところに個性がある。
マイアミ・ソウルの中での立ち位置
Alston Recordsはマイアミを拠点にしたレーベルで、ベティ・ライトやジミー・“ボー”・ホーン、The Beginning Of The Endなどを送り出したことで知られる。そんな環境の中で出た本作は、同レーベルのヒット路線にそのまま乗るというより、より内省的で作家性の強いアルバムとして聴こえる。KC & The Sunshine Bandのような同時期のマイアミ・サウンドが強いリズムと即効性を前面に出していたのに対し、こちらは曲の展開や言葉の置き方に重心がある。
ミルトン・ライトは家族ゴスペル・グループ「Echoes Of Joy」で育ち、宗教音楽由来の歌心を持ちながら、70年代のソウル/ファンクの語法へと自然につないでいる。その背景が、歌の熱量だけでなく、曲全体の組み立てにも表れている。
サウンドの印象
実際に聴くと、まず耳に残るのは自分のアコースティック・ギターを軸にした演奏感だ。そこへ温かいキーボード、シンセやムーグ系の音色が重なり、リズムはタイトだが、音像は思った以上に柔らかい。ファンクのビートがありつつ、ジャズ寄りの和声感が入り、曲によってはStevie WonderやGil Scott-Heronを連想させるという評価にもつながっている。
一方で、派手なホーンや大きなコーラスで押し切るタイプではないため、派手さよりも曲の中にある細かなうねりを追う聴き方が合う。ベースの動き、ギターの刻み、キーボードの薄いレイヤーが少しずつ重なっていく感触があり、アルバムとしての統一感も強い。
代表曲「Keep It Up」
本作の中で特に知られているのが「Keep It Up」だ。リリース当時、ある程度の反響はあったとされるが、大きなヒットには届かなかった。ただし後年、レア・グルーヴやサンプリングの文脈で評価が高まり、Kenny Dopeの「Oh Baby」(2001年)などで使われたことで、再び耳に触れる機会が増えた。元曲のグルーヴがそのまま引用に耐えるだけの粘りを持っている点は、このアルバムの強みでもある。
表題曲「Friends And Buddies」も重要だ。こちらはMac Millerの「Blue Slide Park」でサンプリングされたことでも知られ、アルバムの中核にあるメロディと質感が、世代を越えて拾われてきたことがわかる。曲単位で見ても、70年代ソウルの中で埋もれず残る要素を持っている。
制作の背景と再評価
このアルバムには、正式盤とは別に初期ヴァージョンが存在した。発売直前に差し替えられたとされる内容で、プロモ盤のみが流通したという経緯がある。後年になって、その初期ヴァージョンと正式盤の両方をまとめた復刻盤『Complete Friends & Buddies』が2015年にAthens Of The Northから出ており、作品の成り立ちを追う上では重要な存在になっている。こうした経緯もあって、『Friends And Buddies』は単なる初期ソウル・アルバムではなく、制作段階の違いまで含めて語られることが多い。
また、ミルトン・ライトはその後音楽の世界から離れ、法曹界へ進んだことでも知られる。後年にはボストンで判事を務めたという経歴があり、2022年にはスペイン・ビルバオでこれら初期作品の曲を初めてライヴで披露したという話もある。音楽活動の期間は長くないが、その短い時期に残したこのアルバムが、いまも掘り返され続けるだけの理由を持っている。
まとめ
『Friends And Buddies』は、70年代マイアミ・ソウルの流れの中で、ファンクの推進力とソウルの歌心、そして作者性の強い視点が同居した作品である。派手な成功作ではないが、「Keep It Up」や表題曲のように後年まで残る曲があり、サンプリングや再評価を通じて存在感を保ってきた。Alston Recordsというローカル色の強いレーベルから出た一枚でありながら、内容はかなり個性的で、同時代のソウル/ファンクを掘るうえで外せないアルバムとして扱われている。
トラックリスト
- A1 Friends And Buddies 3:25
- A2 Brothers & Sisters 4:15
- A3 Get No Lovin' Tonight 4:05
- A4 Po' Man 6:47
- B1 Keep It Up 4:15
- B2 My Ol' Lady 3:10
- B3 Black Man 4:10
- B4 The Silence That You Keep 3:22