Donald Byrd - Electric Byrd (1970)
Donald Byrd 1970

Donald Byrd - Electric Byrd (1970)

Jazz Funk / Soul Funk Fusion Hard Bop

Donald Byrd / Electric Byrd(1970, Blue Note BST 84349)

ドナルド・バードの『Electric Byrd』は、1970年にブルーノートから出たアルバムで、ハード・バップの名手がエレクトリック期へ踏み込んだ時期の記録として重要な一枚。バードは1950年代からジャズ界で活躍してきたトランペッターで、端正な音色と推進力のあるフレーズで知られる人物だが、この時期にはジャズ、R&B、ソウル、そしてフュージョンの要素を取り込んだ方向へ動いていく。本作はその移行期を、比較的まとまりのある形で捉えた作品になっている。

録音と参加メンバー

録音は1970年5月15日、ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのヴァン・ゲルダー・スタジオ。プロデュースはデューク・ピアソンで、彼自身がエレクトリック・ピアノでも参加している。演奏陣も充実していて、ジェリー・ドジオン、フランク・フォスター、ルー・タバキン、ペッパー・アダムスらの管楽器、ギターのウォーリー・リチャードソン、ロン・カーターのベース、ミッキー・ローカーのドラムス、アイアート・モレイラのパーカッションが並ぶ。さらに「Xibaba」ではブラジルのフルート奏者エルメート・パスコアールも加わる。

ペッパー・アダムスはバードとデトロイト時代からの旧知で、1958年から1961年にかけて双頭クインテットを組んでいた相手。その関係性が、ここでも厚みのある管アンサンブルに表れている。

収録曲の構成

収録は4曲。バード作の「Estavanico」「Essence」「The Dude」と、アイアート・モレイラ作の「Xibaba」からなる。「Estavanico」は冒頭から管が重なり、電気ピアノとギターが下支えする中で曲が進む。「Essence」は展開が長く、リズムの置き方が比較的はっきりしている。「The Dude」はタイトル通りにファンキーな要素が前に出る一方、即興のスペースも確保されている。「Xibaba」はブラジル色が強く、パーカッションの動きがアルバム全体のなかでも目立つ。

どの曲も8分台から13分台の長尺で、短いテーマを繰り返すだけではなく、アンサンブルの層を少しずつ変えながら進む作り。管楽器を厚く重ねた音像と、エレクトリック・ピアノ、ギター、ラテン系の打楽器が作るグルーヴが軸にある。

この時期のバードの位置づけ

ドナルド・バードは1960年代までブルーノートのハード・バップ文脈で評価されてきたが、1970年前後には電化ジャズの流れを取り込み始める。本作は、マイルス・デイヴィス『Bitches Brew』以後の空気を受けつつ、よりファンキーで聴きやすい側へ寄せたフュージョンの入口にある作品として見られることが多い。後年の『Black Byrd』がクロスオーバー路線の大きな成功作になることを思うと、『Electric Byrd』はその前段階にあたる。

同時代のブルーノートでも、ジャズの電化とソウル、ファンクの接近は進んでいたが、本作はその中でも演奏の密度が高い。単純なダンス志向に傾くのではなく、ハード・バップ由来の管アレンジと、1970年代的な電気的サウンドが同居している点が特徴的だ。

音の印象

実際に聴くと、まず耳に残るのは編成の厚さ。トランペットが前に出る場面でも、背後で管とリズム隊が動き続けるため、音の隙間が少ない。ロン・カーターのベースは安定感があり、ミッキー・ローカーとアイアート・モレイラの打楽器が加わることで、ジャズの拍感にラテン系の揺れが混ざる。ギターとエレクトリック・ピアノは、ソロの主役というより、全体の流れを押し出す装置として機能している印象だ。

特に「Xibaba」は、アルバムの中でも異なる色合いを持つ曲で、ブラジルの要素が前面に出る。ここにエルメート・パスコアールが加わることで、単なるジャズ・ファンクではない広がりが出ている。『Electric Byrd』が一枚の作品としてまとまっているのは、この多国籍な要素を、派手に散らさず長尺の展開に落とし込んでいるからだろう。

オリジナル盤の仕様

このUS盤は、ブルー/ホワイトのラベルで、「Blue Note Records • A Division Of Liberty Records, Inc.」表記があるタイプ。ラベル上ではアルバム・タイトルがアーティスト名の下に大文字で、かつ引用符付きで表記される。マトリクスには両面ともVAN GELDERの刻印があり、ヴァン・ゲルダー・スタジオ録音らしい盤面。ジャケット裏面には「Los Angeles, California 90028」の住所とロゴが入る仕様になっている。

まとめ

『Electric Byrd』は、ハード・バップの語法を持つバードが、1970年代初頭の電化ジャズへ歩を進めた時期の記録。4曲構成で長尺中心、管のアレンジ、電気ピアノ、ギター、パーカッションが絡む中で、バードのトランペットはなお芯を保っている。ブルーノートの歴史の中でも、伝統的なジャズからフュージョンへ移る途中の空気がはっきり残る一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Estavanico 11:00
  2. A2 Essence 10:30
  3. B1 Xibaba 13:35
  4. B2 The Dude 8:00

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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