Joao Donato , Deodato - DonatoDeodato (1973)
Joao Donato , Deodato『DonatoDeodato』
1973年にUSのMuse Recordsから出た『DonatoDeodato』は、ジョアン・ドナートとエウミール・デオダートの名が並ぶブラジリアン・ジャズ・ファンク作品。録音は1973年3月26日と4月10日。制作の経緯そのものが、このアルバムの大きな話題になっている。
制作背景・エピソード
物語の始まりは、ニューヨークでのジョアン・ドナートの録音。彼はフェンダー・ローズで、空気感のある簡素なバッキング・トラックをいくつか残したあと、未完成のテープをレーベルに預けたままブラジルへ戻ったとされる。曲のひとつ「Where's J.D.?」というタイトルも、この“どこへ行ったのか”という出来事をそのまま反映したものとして語られている。
その後、Muse Recordsは当時国際的な成功を収めていたデオダートに完成を託した。デオダートは、ドナートの素描のような素材にメロディを書き足し、ホーン・アレンジを組み立て、セッション・ミュージシャンを集めて作品を仕上げている。参加した面々としては、アイアート・モレイラ、レイ・バレット、ランディ・ブレッカー、ウィルバー・バスコムらの名前が挙がっている。
完成後、ジョアン・ドナートはこの仕上がりに強い不満を示した。デオダートの商業的なプロダクションや、前面に出たブラス・アレンジが、自身の持っていたミニマルな感覚を損なったと受け止めたためで、ここから二人の間に深い対立が生まれたとされる。
時代の文脈
1973年という年は、ボサノヴァの第一世代がアメリカのファンク、ソウル、ジャズ・ロックと接近し、クロスオーバーやフュージョンの作品が形になっていった時期に当たる。ドナートが持っていた独特のタイム感やコード感と、デオダートの都会的なビッグバンド・ファンクが同じ作品の中で交錯している点が、このアルバムの特徴として語られている。
デオダート自身もこの時期、CTIで「ツァラトゥストラはかく語りき」のヒットを持つアレンジャーとして注目されていた。そうしたキャリアの流れの中で、ドナートの断片的な素材を引き受け、別の形にまとめ上げる役割を担ったことになる。
後世への影響
当初は広く知られた作品ではなかったが、1980年代後半以降のアシッド・ジャズやレアグルーヴの流れの中で再評価が進み、ブラジリアン・ジャズ・ファンクのカルト作品として扱われるようになった。コンピレーションへの収録も重ねられ、オリジナル盤は現在も高値で取引されることで知られている。
とくに「Whistle Stop」は、軽快なフルートの旋律とパーカッション、ホーンが前進するトラックとして取り上げられることが多い。ほかにも、「Where's J.D.?」や「Capricorn」、「Nightripper」など、曲ごとにドナートの素材とデオダートのアレンジがせめぎ合う構図が見える構成になっている。
二人の関係性まで含めて記憶されるアルバムだが、1973年の録音としてまとまったこの1枚は、ブラジル音楽とジャズ・ファンクが交差した時代の記録として語られ続けている。
トラックリスト
- A1 Whistle Stop 4:00
- A2 Where's J.D.? 5:52
- A3 Capricorn 6:00
- B1 Nightripper 6:31
- B2 You Can Go 5:15
- B3 Batuque 4:03
動画プレイリスト
このアーティストについて
ジョアン・ドナート(João Donato、本名João Donato de Oliveira Neto、1934年8月17日 - 2023年7月17日)は、ブラジル・アクレ州リオ・ブランコ出身の...
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