Larry Young - Larry Young's Fuel (1975)
Larry Young『Larry Young's Fuel』
ラリー・ヤングが1975年にAristaから発表した『Larry Young's Fuel』は、「オルガンのジョン・コルトレーン」と称された名鍵盤奏者が、自身の新グループ「Fuel」を率いて録音した意欲作。ブルーノート期のストイックなモーダル・ジャズや、トニー・ウィリアムス・ライフタイム、マイルス・デイヴィス『Bitches Brew』セッションでジャズ・ロック/フュージョンの黎明期を切り拓いたヤングが、新興レーベルAristaに移籍して新たなサウンドに踏み込んだ記念碑的アルバムである。
制作背景・エピソード
参加メンバーには、ラリー・ヤングのアナログ・シンセサイザーとハモンド・オルガンを中核に、のちにルー・リードの右腕として活躍する名ベーシストのフェルナンド・サンダース(Fernando Saunders)、ギタリストのサンティアゴ・トラーノ(Santiago Torano)、ドラマーのロブ・ゴットフリード(Rob Gottfried)、そして妖艶なヴォーカルを聴かせるローラ・“テキーラ”・ローガン(Laura "Tequila" Logan)が集結した。
ヤングはアコースティックなオルガン・ジャズの枠組みを大きく飛び越え、当時最先端だったモーグ・シンセサイザーなどの電子楽器を大々的に導入。自ら「コズミック・ファンク」と標榜した宇宙的でサイケデリックな美学のもと、ジャズの高度な即興性とファンクの強靭なビート、エレクトリック・ロックのダイナミズムを融合させた。
時代の文脈
1970年代半ばは、ハービー・ハンコックの『Head Hunters』やマイルス・デイヴィスのアグレッシブなエレクトリック路線がシーンを席巻していた時代だった。その中にあって本作は、単なる聴きやすいクロスオーバーにとどまらず、Pファンク直系の粘り気あるグルーヴと攻撃的なシンセサイザー・ワークを大胆に押し出した。ジャズ・オルガンの巨匠でありながら、シンセサイザーの過激な音響変調やエレクトリック・ベースの強烈なスラップを前面に配したサウンドは、当時のジャズ界の常識を塗り替えるものだった。
リリース当初は従来のジャズ・ファンから商業ファンクへの転向と受け取られることもあり、ナショナル・チャートでの大きなブレイクには至らなかったが、時代の先を見据えた先駆的アプローチとして記録されている。
後世への影響
1990年代以降、レア・グルーヴ、アシッド・ジャズ、ヒップホップの興隆とともに本作は熱狂的な再評価を獲得した。特に白眉とされるメロウ・ファンク「Turn Off The Lights」は、引きずるような重厚なドラム・ブレイクと浮遊するモーグ・シンセ、テキーラ・ローガンの甘美な歌声が多くのクリエイターを魅了。J DillaがプロデュースしたSlum Village「Fat Cat Song」をはじめ、The Firm「Firm All Stars」、Madlib「Episode VII」、Groove Armada「Dan Solo」など数多くのトラックメイカーにサンプリングされている。また冒頭を飾る「Fuel For The Fire」も、疾走感あふれるドラムとシンセ・リフがブレイクビーツの定番として愛され続けている。
トラックリスト
- A1 Fuel For The Fire 6:07
- A2 I Ching (Book Of Changes) 6:25
- A3 Turn Off The Lights 7:03
- B1 Floating 4:12
- B2 H + J = B (Hustle + Jam = Bread) 6:17
- B3 People Do Be Funny 3:42
- B4 New York Electric Street Music 8:33