Gene Harris - Astralsignal (1974)
Gene Harris 1974

Gene Harris - Astralsignal (1974)

Jazz Funk / Soul Jazz-Funk Soul-Jazz

Gene Harris『Astralsignal』(1974)

Gene Harrisの『Astralsignal』は、Three Soundsで知られるピアニストが、1970年代前半のBlue Noteで展開したソウル・ジャズ/ジャズ・ファンク路線をはっきり示す一枚だ。オリジナルは1974年のUS盤で、レーベルはBlue Note、カタログ番号はBN-LA313-G。Gene Harrisは1950年代から60年代にかけて、Andrew SimpkinsとBill Dowdyを擁するThe Three Soundsの中心人物としてBlue Noteに多くの録音を残してきたが、本作ではそのトリオ時代とは違う編成と音作りが前に出る。アコースティック・ピアノだけでなく、フェンダー・ローズやシンセサイザーも使い、ロサンゼルスのスタジオ・ミュージシャンを集めたセッションとしてまとまっている。

1970年代Blue Noteの空気を映す作品

録音はロサンゼルスのThe Village Recorderで行われ、プロデュースにはJerry Petersの名前がある。PetersはR&Bやソウル寄りの仕事でも知られる人物で、この人選だけでも、ここでのGene Harrisが従来のピアノ・トリオの延長ではなく、より当時の都会的なジャズ・ファンクの文脈に寄せていたことが見えてくる。参加メンバーも強力で、David T. WalkerとJohn Rowinのギター、Chuck Raineyのベース、Harvey Masonのドラム、Ernie Wattsのサックス、Oscar Brashearのトランペット、George BohanonとKeg Johnsonのトロンボーンなど、70年代LAのセッション現場を支えた面々が並ぶ。

Blue Note自体もこの時期は、ハード・バップ中心のイメージから少し離れ、フュージョンやソウル寄りの作品を多く出していた時期にあたる。『Astralsignal』はその流れの中で、Gene HarrisというBlue Noteの古参を新しい音の環境に置いた記録になっている。

収録曲と聴きどころ

収録曲はオリジナル曲だけでなくカバーも多い。Bobby Goldsboroの「Summer (The First Time)」、Creedence Clearwater Revivalの「Green River」、Sly & The Family Stoneの「Don't Call Me Nigger, Whitey」、Chicagoの「Beginnings」など、当時のポップスやロック、ソウルの曲を取り込んでいる点が目立つ。中でも「Beginnings」ではGene Harris自身がリード・ボーカルを取っており、彼の録音としてはかなり珍しい側面だ。

一方で、アルバムの中で特に後年まで名前が残るのが「Losalamitoslatinfunklovesong」だ。タイトル通りの長い曲名で、ラテン要素を含んだファンク・トラックとして扱われることが多い。後年、この曲はCompton's Most WantedやJermaine Dupri、Freddie Gibbsらのヒップホップ作品でサンプリングされ、別の世代に拾われていった。オリジナル発売時の商業的な大成功は大きくなかったとされるが、素材としての存在感は後から増している。

オリジナル盤の表記と仕様

このUSオリジナル盤には、いくつか細かな表記の違いがある。ジャケット裏ではタイトルが「AstralSignal」と表記され、ラベルでは「Astralsignal」となっている。盤面のクレジットには©℗ MCMLXXIV United Artists Records, Inc.、Printed In U.S.A.、Made In U.S.A.の記載があり、フロントカバー左下には© UAR, Inc.の表記。シールド状態の個体には、前面にアーティスト名とタイトル、カタログ番号を入れた半透明のステッカーが付いていたという。Blue Noteの内袋も使われており、細かな青いロゴ柄のタイプが確認されている。

なお、同作には1974年表記の資料と1975年発売とする資料が見られるが、ここでは1974年の作品として扱うのが自然だろう。タイトル初出年のUS Blue Note盤としては、Gene HarrisがThree Soundsのイメージを引きずらず、ソウル・ジャズからジャズ・ファンクへ踏み出した時期をそのまま反映した一枚になっている。

Gene Harrisの位置づけ

Gene Harrisは1933年生まれ、2000年没。Three Soundsのリーダーとして知られる一方で、ソロ名義ではより幅広い音を試している。本作はその中でも、バンド編成、選曲、録音環境、演奏楽器のすべてが当時の時代性に寄った作品で、Blue Noteの70年代の顔つきもよく出ている。ハード・バップのレーベルというBlue Noteの古い印象だけでは収まらない時期の記録として、そしてGene Harrisがジャズ・ピアニストの枠を少し広げた時期の記録として、見ておきたいアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 Prelude 1:38
  2. A2 Summer (The First Time) 3:32
  3. A3 Rebato Summer 0:44
  4. A4 I Remember Summer 2:03
  5. A5 Don't Call Me Nigger, Whitey 3:44
  6. A6 Losalamitoslatinfunklovesong 3:06
  7. A7 My Roots 4:15
  8. B1 Green River 3:01
  9. B2 Beginnings 5:50
  10. B3 Feeling You, Feeling Me Too! 1:57
  11. B4 Higga-Boom 5:57
  12. B5 Love Talkin' 4:47

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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