Aquarian Dream - Fantasy (1978)
Aquarian Dream『Fantasy』(1978) レビュー
Aquarian Dreamは、ジャズ・ドラマー/プロデューサーのノーマン・コナーズを軸に動いたソウル/ファンク・プロジェクトで、1970年代半ばのディスコ化するブラック・ミュージックの流れの中に位置するグループだ。本作『Fantasy』は1978年にElektraから出た作品で、コナーズ主導の制作体制をそのまま引き継ぎながら、ジャズ・ファンク、ソウル、ディスコの要素をまとまりよく並べたアルバムになっている。アクエリアン・ドリームにとっては、Buddahでのデビュー作に続くElektra移籍後の重要作であり、グループの輪郭をはっきり示した2作目にあたる。
ノーマン・コナーズ周辺の1978年作
コナーズはこの時期、自身の名義でも「You Are My Starship」などで存在感を強めていたが、Aquarian Dreamではよりバンド色の強い編成を使い、ホーンやストリングスを含む大きめのアンサンブルでまとめている。録音とミックスはABC Dunhill Studios、ホーンとストリングスはBurbank Studios、さらに「Friends」だけはElectric Lady Studios, NYで録音されたというクレジットが残る。最終的なマスタリングとリミックスはKendun Studios。制作拠点が複数にまたがっているのも、この時代の大型ソウル作品らしい動きだ。
演奏陣では、シルヴィア・ストリップリンのヴォーカルが大きな軸になっている。グロリア・ジョーンズ、ジャック・バーヴィックらも歌や演奏を分担し、アルバート・ジョーンズJr.のトランペット、アーニー・アダムスのベースなども加わる。メンバー表を見るだけでも、バンドというよりプロジェクト単位の流動的な編成で進んでいたことがわかる。
サウンドの中身
内容は、硬めのホーン・セクション、前に出るベース、細かく刻むパーカッションが中心。そこにストリングスが重なり、ジャズ・ファンクの推進力とディスコの足運びを同居させている。オープニングの「You’re A Star」は、グルーヴの立ち上がりが早く、リズムの押しが強い。タイトル曲「Fantasy」も同じくテンポ感のある曲で、リフを軸に進む構成。こうした曲では、シルヴィア・ストリップリンの歌がリズムの中にきれいに収まっていて、音数の多いアレンジでも輪郭が崩れにくい。
一方で、ハービー・ハンコックの「Gentle Thoughts」のカヴァーも収録されている。原曲は1976年の『Secrets』収録曲で、Aquarian Dream版ではジャズ寄りの素材をソウル/ディスコの文脈へ引き寄せているのが面白い。アルバム全体でも、単なるダンス志向だけで終わらず、ジャズ・ファンクの組み立てを残している点が印象に残る。
代表曲とその後
この作品で特に知られるのが「You’re A Star」だ。発売当時に大きなヒットになったわけではないが、その後ダンスフロアで繰り返し取り上げられ、2000年にはディミトリ・フロム・パリのコンピレーション『A Night at the Playboy Mansion』にも使われた。さらにノーマン・コナーズとジャック・バーヴィックは、1980年にStarship Orchestra名義で出した『Celestial Sky』でもこの曲を再演している。曲自体が後年まで再利用された事実は、当時の作品の中でも長く残るグルーヴを持っていたことを示している。
同時代の比較対象としては、アース・ウィンド&ファイアーのような大編成のファンク/ディスコ・バンドが思い浮かぶ。Aquarian Dreamもホーン、ストリングス、コーラスを使う点では近いが、ノーマン・コナーズの出自もあって、よりジャズ・ファンク側の感触が強い。派手なヒット性を前面に出すというより、演奏の密度で押していくタイプのアルバムだ。
盤の体裁とElektra期の位置づけ
US盤はElektraの6E-152。1970年代後半のElektraは、いわゆるバタフライ・ラベル期にあたり、Warner傘下での運用が進んでいた時期でもある。本作のレーベル面でもその年代の流れが見える。なお、B面ラベルにはHerbie Hancockのクレジットが「Herbie Hancodk」と誤記されている。細かな部分だが、当時のプレス事情をそのまま伝える要素として残っている。
『Fantasy』は、Aquarian Dreamがノーマン・コナーズの企画色を保ちながら、より洗練されたジャズ・ファンク/ディスコへ寄った一枚としてまとまっている。シルヴィア・ストリップリンの歌、ホーンの切れ味、ストリングスの配置、そのあたりがこのアルバムの核。1978年という年の空気を、かなり具体的な音の組み合わせで封じ込めた作品だ。
トラックリスト
- A1 You're A Star 5:30
- A2 Friends 5:41
- A3 It Ain't Watcha Say 3:52
- A4 Yesterday (Was So Nice Today) 4:45
- B1 Play It For Me (One More Time) 4:28
- B2 Fantasy 3:34
- B3 Gentle Thoughts 4:42
- B4 Do You Realize 4:41