Leon Spencer - Bad Walking Woman (1972)
Leon Spencer, Jr. 1972

Leon Spencer - Bad Walking Woman (1972)

Jazz Jazz-Funk

Leon Spencer『Bad Walking Woman』(1972)

レオン・スペンサーの『Bad Walking Woman』は、1972年にPrestigeから出たリーダー作で、彼にとって同レーベル3作目のアルバムにあたる。オルガン奏者としての持ち味を前面に出しながら、ソウル・ジャズの流れを保ちつつ、ジャズ・ファンク寄りの手触りも強く押し出した一枚だ。Prestigeが1970年代初頭に展開していたオルガン主導の作品群の中でも、かなり輪郭のはっきりしたタイトルとして記録されている。

制作の背景

本作は1972年2月22日にヴァン・ゲルダー・スタジオで録音されている。プロデュースはオジー・カデナ、エンジニアはルディ・ヴァン・ゲルダー。Prestigeの看板ともいえる録音環境とスタッフがそろった作品で、レーベルが得意としてきた「オルガン・コンボ」の文脈にしっかり置かれている。

収録は全7曲で、すべてスペンサー自身のオリジナル。A面の「Bad Walking Woman」を軸に、ハードなリズム感とメロディの分かりやすさを両立させた構成になっている。A2はレーベル表記では「Down On Dowling St.」となっており、曲名の扱いに細かな違いが見られる点も、この時代のジャズ盤らしいところだ。

サウンドの特徴

実際に聴くと、まずオルガンの低音の動きが耳に残る。左手のラインが前に出る場面が多く、ベースを兼ねるような運び方でグルーヴを支えている。ギター、ドラム、ホーン、さらに弦が入る曲もあり、単純なオルガン・トリオでは終わらない編成感がある。

とくにA3、A4、B2、B3ではストリングスが加わり、Prestigeのオルガン作品の中でも少し広がりのある響きになっている。フルートやホーンの使い方も含めて、リズムを前に押し出すだけでなく、曲ごとの色分けを意識した作りだ。派手に展開するというより、リフと反復の中で少しずつ景色を変えていくタイプのアルバムである。

参加ミュージシャンと当時の文脈

この時期のPrestigeは、ジャズ・ファンクやソウル・ジャズの文脈で強い存在感を持っていた。Jack McDuff、Richard “Groove” Holmes、Charles Earlandらの作品が並ぶ中で、レオン・スペンサーもその流れに連なる奏者として位置づけられる。スペンサーはJimmy Smith系のオルガン語法を土台にしながら、より泥臭い低音感とリズムの粘りを出すタイプとして語られることが多い。

本作にはイドリス・ムハマド、メルヴィン・スパークス、ヒューバート・ロウズ、ソニー・フォーチュンらの名前も並び、1970年代初頭のジャズ・ファンクを支えたプレイヤーたちの感触がそのまま入っている。PrestigeがFantasyグループに入った直後の時期でもあり、レーベルのカラーがソウル寄りに寄っていく流れの中で出た作品でもある。

作品の位置づけ

レオン・スペンサーのディスコグラフィーの中では、単独で大きく語られる機会は多くないが、Prestige期のオルガン作品としては要所にある一枚だ。前作までの流れを引き継ぎながら、弦や管を交えたアレンジで音の幅を少し広げている点が特徴になっている。商業的なヒット作として知られる盤ではないが、Prestigeが持っていた1970年代初頭の空気をそのまま封じ込めた記録として見ると、かなり興味深い。

同時代のオルガン・ジャズと比べると、華やかな技巧で押すというより、曲の骨格を太くしていく作りが目立つ。オルガン・ジャズの王道を踏みながら、ジャズ・ファンクのリズム感へ自然に接続しているところに、このアルバムの性格がある。タイトル曲を含め、スペンサーのオリジナル曲が並ぶことで、演奏だけでなく作曲面でも本人の輪郭が見えやすい作品になっている。

盤の情報

  • アーティスト: Leon Spencer
  • タイトル: Bad Walking Woman
  • オリジナル発売年: 1972年
  • 発売国: US
  • レーベル: Prestige (PRST-10042)
  • 録音: 1972年2月22日、Van Gelder Studio
  • プロデュース: Ozzie Cadena
  • エンジニア: Rudy Van Gelder

Prestigeのオルガン・ジャズが好きな人にとっては、レーベルの時代感がよく出た一枚として目に入る作品だ。派手な話題性よりも、録音、編成、リズムの組み立てがきれいに揃ったところに価値がある。1972年のPrestigeらしさを、そのまま音で残したアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Hip Shaker 3:50
  2. A2 Down On Dowling Street 4:55
  3. A3 In Search Of Love 4:00
  4. A4 If You Were Me And I Were You 5:57
  5. B1 Bad Walking Woman 5:01
  6. B2 When My Love Has Gone 6:10
  7. B3 When Dreams Start To Fade 7:42

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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