Roy Ayers Ubiquity - Red Black & Green (1973)
Roy Ayers Ubiquity『Red Black & Green』(1973年)
ロイ・エアーズ率いるRoy Ayers Ubiquityが1973年にPolydorから発表した『Red Black & Green』は、ジャズの演奏力とソウル/ファンクの感触が同じ場所に置かれた作品だ。エアーズはヴィブラフォン奏者として知られるが、この時期は自分のバンド名に「Ubiquity」を掲げ、広い意味での黒人音楽を横断する形で作品を作っていた。その流れの中で出た本作は、Electric Lady Studiosで録音され、本人プロデュースによる一枚になっている。
作品の輪郭
アルバム全体を通して、演奏はきっちりしているのに、空気は硬くなりすぎない。ヴィブラフォンの音が前に出る場面でも、リズム隊がしっかり床を支えていて、ジャズの即興性とダンス寄りの推進力が並んでいる。参加メンバーにはハリー・ウィテカーやデニス・デイヴィスらが名を連ね、当時のスピリチュアル・ジャズやジャズ・ファンクの人脈がそのまま結びついたような編成になっている。
本作の聴きどころとしてよく挙げられるのが、エアーズのフレーズ運びとデイヴィスのドラムの噛み合い方だ。リズムが前に進むだけでなく、少し引っかかるような間が残る。その感触が、70年代前半のジャズ・ファンクらしい粘りを作っている。
収録曲とカヴァーの扱い
収録曲はオリジナル曲と当時のソウル・ヒットのカヴァーが半々という構成。ビル・ウィザースの「Ain't No Sunshine」、アレサ・フランクリンの「Day Dreaming」、ノーマン・ホイットフィールドとバレット・ストロングの「Papa Was a Rolling Stone」を取り上げている。こうした選曲は、同時代のジャズ奏者がポップスやR&Bの楽曲を自分たちの文法に置き換えていた流れの中にある。
とくに「Ain't No Sunshine」は、陰りのある入り口としてアルバムのA面を引き締める。原曲の持つ孤独感を残しながら、エアーズのバンドの手つきで別の重心に置き直している。「Papa Was a Rolling Stone」はB面の締めとして配置され、ファンク寄りの推進力がそのまま出る曲だ。こうした曲順も含めて、アルバムの流れがよく考えられている。
タイトル曲と時代背景
タイトル曲「Red Black & Green」は、黒人解放やパン・アフリカ的な意識を連想させる題名で、赤・黒・緑という三色もその文脈を強く思わせる。1970年代前半のブラック・ミュージックには、政治性や共同体意識を前面に出す表現が少なくなく、このアルバムもその空気の中に置くと見え方がはっきりする。音だけを追っても、装飾的なジャズではなく、現実のリズムに接続した音作りが中心にある。
同時期のジャズでは、ローランド・カーク、グローヴァー・ワシントンJr.、グラント・グリーンのように、ソウルやR&Bのカヴァーに踏み込む例が多いが、本作はその中でも曲の置き方が明快だ。ジャズの演奏でありながら、曲の輪郭が曖昧にならない。そこがこの作品の強さになっている。
位置づけとその後の評価
Roy Ayers Ubiquityは、ロイ・エアーズが70年代初頭に立ち上げた自分のバンドで、彼のヴィブラフォンを軸にしたジャズ・ファンクの核を示す存在だった。本作はその初期の流れにある一枚で、同じ1973年には『Coffy』のサウンドトラックもPolydorから出ている。つまりこの時期のエアーズは、映画音楽とアルバム作品の両方で、ファンク寄りの黒人音楽を強く押し出していたことになる。
発売当時のチャート記録は目立たないが、その後はヒップホップのサンプリング・ソースとしても再注目されてきた。Polydor盤は1973年のUSオリジナルで、後年の再発盤とは時期が異なる。オリジナルの空気感をそのまま持つ初出盤として見ると、この作品が当時のジャズ・ファンクの現場にどれだけ近い場所で作られていたかが伝わってくる。
『Red Black & Green』は、ロイ・エアーズの代表的な活動期の輪郭をそのまま示すアルバムだ。ヴィブラフォン中心のジャズでありながら、ソウルの曲、ファンクのリズム、ブラック・コンシャスな題材が自然につながっている。70年代初頭の空気をそのまま閉じ込めたような一枚として記憶されている。
トラックリスト
- A1 Ain't No Sunshine 6:20
- A2 Henceforth 3:53
- A3 Day Dreaming 5:32
- B1 Red Black & Green 4:43
- B2 Cocoa Butter 4:50
- B3 Rhythms Of Your Mind 3:08
- B4 Papa Was A Rolling Stone 5:32