Maceo And All The King's Men - Doing Their Own Thing (1970)
Maceo And All The King's Men『Doing Their Own Thing』
1970年にUSのHouse Of The Foxからリリースされた、Maceo And All The King's Menのファースト・アルバム。メイシオ・パーカーを中心に、ジェームス・ブラウンの黄金期バンドを支えていた精鋭ミュージシャンたちが一斉に離脱して録音した作品であり、メンフィスのSounds Of Memphis Studioで制作された。レーベルはリーラン・ロジャース(Lelan Rogers Entreprises)傘下のHouse Of The Foxである。
制作背景・エピソード
1970年3月、ジェームス・ブラウンの苛烈なワンマン体制や賃金・待遇への不満から、バック・バンドの中核メンバーが一斉にストライキを起こして離脱。アルト・サックス奏者のメイシオ・パーカーをリーダーに、ドラムのメルヴィン・パーカー、ギターのジミー・ノーランとアルフォンソ・ケラム、ベースのバーナード・オダムらが集結し、新グループとして本作の制作に乗り出した。
アルバム・タイトルの『Doing Their Own Thing(自分たちのやりたいことをやる)』には、専制君主JBの厳しい統制から解き放たれ、自分たちの意志とスタイルでファンクを鳴らすという強い独立宣言が込められている。激怒したジェームス・ブラウン側からラジオ局やレコード配給網への圧力があったとも伝えられ、当時は大きなヒットには至らなかったものの、熱狂的なファンク・ドキュメントとして語り継がれることとなった。
時代の文脈
1970年はファンクが新たな局面を迎えた転換点だった。ジェームス・ブラウンはメンバー離脱の直後、若きブーツィ・コリンズ兄弟らを緊急招集して新生The J.B.'sを結成し、より硬質な新時代のファンクへと突き進んでいった。一方、メイシオ率いるオール・ザ・キングス・メンは、JBの現場で鍛え上げられた鉄壁のアンサンブルを土台にしつつ、長尺のソロや自由なジャム・セッションの感覚を大胆に導入した。ジミー・ノーランの鋭利なチキン・スクラッチ・ギター、メルヴィン・パーカーの重くタイトなスネア、バーナード・オダムのうねるベースライン、そしてメイシオのエモーショナルなサックスが、規律から解き放たれた開放感とともに躍動している。
バンドはこのあとExcelloからもアルバムを発表し、1972年頃まで活動を継続。のちにメイシオら多くのメンバーは再びジェームス・ブラウンの元へ戻り、The J.B.'sの黄金期を築くこととなる。
後世への影響
オリジナルLPは流通量の少なさも相まって、後年のレア・グルーヴ/ファンク・ディガーの間で「究極のホーリー・グレイル(聖杯)」と称される幻の名盤となった。さらに1980年代末以降のヒップホップ・シーンにおいて、極めて重要なサンプリング・ソースとして絶大な再評価を獲得している。
代表曲「Got To Getcha」の強烈な16ビート・ベースラインは、LL Cool J「To da Break of Dawn」(1990年)やBig Daddy Kane「Flow On」(1989年)でサンプリングされ、ファンク・ベースの教本的存在となった。「Southwick」はフランスの著名なラップ/コメディ・トリオLes Inconnusが「Auteuil, Neuilly, Passy」(1991年)で無断使用したことから、サンプリングを巡る歴史的な著作権裁判へと発展したことでも知られる。そのほかオープニングの「Maceo」がPete Rock & C.L. Smoothの「Ghettos of the Mind」に、「Better Half」がGang Starrの「Form of Intellect」に引用されるなど、90年代イーストコースト・ヒップホップの名作群の骨格を支え続けた。
トラックリスト
- A1 Maceo 7:46
- A2 Got To Getcha 2:46
- A3 Southwick 3:25
- A4 Funky Women 5:31
- B1 Shake It Baby (Keep On Shakin It) 2:10
- B2 Better Half 5:00
- B3 Don't Waste This World Away 6:17
- B4 Mag-Poo 3:16
- B5 (I Remember) Mr. Banks 5:27