Maze Featuring Frankie Beverly - Maze Featuring Frankie Beverly (1977)
Maze Featuring Frankie Beverly『Maze Featuring Frankie Beverly』(1977年)
Maze Featuring Frankie Beverly のデビュー作『Maze Featuring Frankie Beverly』は、1977年にCapitol Recordsから出た作品で、のちに長く続くメイズの基礎を作った1枚だ。フィラデルフィアでフランキー・ビヴァリーが前身バンド「Raw Soul」を率いて活動を始め、サンフランシスコへ拠点を移したのち、マーヴィン・ゲイの助言も受けながらバンド名を Maze に改め、その最初のアルバムとして世に出た。タイトルに“Featuring Frankie Beverly”とある通り、最初からフロントマンの存在感を前面に出した形になっている。
録音はワシントン州タコマのPacific Studios。プロデュースもフランキー・ビヴァリー自身が手がけていて、バンドの方向性をそのままパッケージしたような内容だ。収録は7曲で、ミディアム・テンポの曲を軸に、歌と演奏が同じ温度で進んでいく。ファンクの鋭さを前に出すというより、ソウルの滑らかな流れの中にリズムの粘りを置いた作りで、のちのメイズらしい手触りはこの時点でもはっきりしている。
アルバムの位置づけ
この作品は、メイズにとっての出発点であると同時に、70年代後半のアーバン・ソウル、ファンク、ディスコの接点に置かれるアルバムでもある。フィラデルフィア出身のバンドらしい整ったコード感と、西海岸で録音されたことによる開放感が同居していて、当時のソウル作品の中でも輪郭がわかりやすい。アース・ウィンド・アンド・ファイアーのような祝祭感や、カーティス・メイフィールド系の滑らかな社会性とは少し違い、ここでは日常の時間に寄り添うような進み方が中心だ。
フランキー・ビヴァリーの歌は、強く押し切るタイプというより、伸びるフレーズで曲全体をまとめるタイプ。声の置き方が丁寧で、バンドの厚い演奏の上に乗っても埋もれない。聴き進めると、派手な展開よりも、同じテンポ感の中で少しずつ熱を上げていく構成が印象に残る。実際、アルバムを通して聴くと、曲ごとの色の違いよりも、全体の流れの良さが先に立つ。
代表曲とチャート成績
本作で特に知られているのが「Happy Feelin's」と「Lady Of Magic」だ。後年までライブで愛された曲で、メイズの代表曲として扱われることが多い。「Happy Feelin's」は、軽やかなグルーヴとコーラスのまとまりが目立つ一曲で、アルバムの空気をそのまま象徴している。「Lady Of Magic」も、メロウな進行の中にリズムのうねりがあり、ビヴァリーの歌が曲の中心を保っている。
シングル「While I'm Alone」はR&Bチャートで21位、Billboard Hot 100で89位を記録した。アルバム自体もBillboard 200で52位、R&Bアルバム・チャートで6位まで上昇し、ゴールド・ディスク認定を受けている。デビュー作としては十分に強い反応で、この時点でメイズが単なる新人バンドではなく、R&Bの主要プレイヤーとして受け止められていたことがわかる。
演奏とサウンド
このアルバムの聴きどころは、派手なソロよりもリズム隊の粘りと、鍵盤やギターの細かな配置にある。ベースが前に出すぎず、ドラムが曲の歩幅を整え、上物がその上で滑るように動く。ソウルとファンクの中間に置かれた感触で、ディスコの要素もあるが、完全にダンスフロアへ寄せ切る感じではない。むしろ、夜の遅い時間にじわじわ効いてくるタイプのアルバムだ。
後年のメイズは、より成熟したメロウネスや洗練されたアレンジで知られるようになるが、その原型はこの1枚にある。派手な一撃で押すのではなく、曲の温度を保ちながら長く聴かせる作り。そうした方向性は、のちのR&Bやネオ・ソウル系の聴き手にもつながる感覚として残っている。
オリジナル盤について
US盤のCapitol Records、カタログ番号はST-11607。盤面の刻印にはCapitol Records Pressing Plant, Winchester を示す “—◁” があり、カスタム・インナー・スリーブ付きで出ている。1977年当時のCapitolらしいステレオLPの流れの中にある作品で、同時代の同レーベル作品と並べても、ソウル寄りの落ち着いた設計が目立つ。
メイズのデビュー作として、そしてフランキー・ビヴァリーの歌声を軸にしたバンドの出発点として、このアルバムは重要な位置を占める。収録曲の中では「Happy Feelin's」と「While I'm Alone」が特に知られ、アルバム全体では、のちのメイズを形作る“歌で引っ張るファンク”の輪郭がすでに見えている。
トラックリスト
- A1 Time Is On My Side 5:19
- A2 Happy Feelin's 7:10
- A3 Color Blind 3:22
- A4 Lady Of Magic 4:45
- B1 While I'm Alone 4:35
- B2 You 8:24
- B3 Look At California 9:27