Nico Gomez And His Afro Percussion Inc. - Ritual (1971)
Nico Gomez And His Afro Percussion Inc. 1971

Nico Gomez And His Afro Percussion Inc. - Ritual (1971)

Jazz Funk / Soul Latin Afro-Cuban Jazz Funk Bossanova

Nico Gomez And His Afro Percussion Inc.『Ritual』(1971)レビュー

Nico Gomez And His Afro Percussion Inc.名義の『Ritual』は、1971年にオランダのOmega Internationalから出たラテン作品で、Nico GomezことJoseph van het Groenewoudが率いたプロジェクトの代表作として知られている。ラテンの定番曲を軸にしながら、アフロ・パーカッション、ファンク、ジャズの要素を強く前に出した内容で、当時のヨーロッパ産ラテン・レコードの中でもかなり個性のある一枚だ。

まず人物像を押さえておくと、Nico Gomezは1925年にアムステルダムで生まれ、幼少期をカリブ海で過ごした。父はオランダ人、母は南アフリカ出身で、一家はキュラソー、のちにキューバへ移っている。このカリブ海での経験が、後年の音楽性に深くつながったとされる。1947年にはオランダを離れてベルギーへ移り、ブリュッセルで活動を始めた。のちにはベルギーのラテン・グループ、Chakachasの初期活動にも関わっており、ベルギーのシンガーソングライター、Raymond van het Groenewoudの父でもある。

ラテンの定番曲を、重いグルーヴで再構成した内容

『Ritual』で耳に残るのは、既存のラテン・スタンダードをただのカバーに終わらせていない点だ。Pérez Pradoの「Caballo Negro」、Antonio Carlos Jobimの「Samba De Uma Nota Só」、そしてペルーの民謡として広く知られる「El Condor Pasa」など、元から知名度のある曲を取り上げつつ、ファズの効いたギター、重めのドラム・ブレイク、前に出るオルガンを加えて、かなり攻めた演奏に仕上げている。

特に印象に残るのは、ラテンのリズムが土台にありながら、70年代ファンクの感触がしっかり乗っているところだ。パーカッションは細かく動くが、全体の推進力はむしろドラムとベースが握っている場面が多い。そこにオルガンのコードが差し込まれ、ギターがざらついた音で空間を切る。結果として、ラテン・バンドの演奏でありながら、ライブラリー・ミュージックやヨーロッパのサイケ・ファンクに近い聴こえ方もする。

70年代初頭のヨーロッパ産ラテン作品としての位置

この作品は、発売当時はヨーロッパのローカルなラテン盤の一つとして扱われていたが、その後DJやレア・グルーヴの収集家の間で評価が高まった。今では、同時代のアフロ・ラテン作品の中でもかなり注目される存在になっている。背景には、単にラテン・スタイルを輸入しただけではなく、欧州の録音環境らしい乾いた質感や、ファンク寄りのリズム処理がある。そうした要素が、後年の再発掘で強く響いたのだろう。

ジャンル表記としてはJazz、Latin、Funk / Soul、スタイルとしてAfro-Cuban Jazz、Funk、Bossanovaが挙げられているが、実際の聴感もその範囲に収まる。ボサノヴァの要素がそのまま前面に出るというより、ラテンの旋律感やコード感の一部として溶け込み、そこへファンクのリズムとアフロ・パーカッションが重なる構図だ。

収録曲と後年の再評価

収録曲の中では、「Baila Chibiquiban」や「Lupita」が後年の再評価で特に扱われることが多い。2020年にはMatasuna Recordsがこの2曲を7インチで切り出し、それぞれのB面にTonton BoomとBosqによるリミックス/リワークを収めた。作品全体の中でも、こうした曲はフロア向けの推進力が強く、現代のDJ文脈に接続しやすい部分として機能している。

また、Mr Bongoからはオリジナル・テープをもとにしたLP/CD再発が出ており、元盤の音像を追いやすくなっている。オリジナルの1971年盤は、ラミネート加工のジャケットを持つ初回プレスとして知られる。再発によって聴かれる機会が増えたことで、この作品が単なる珍盤ではなく、ラテン、ファンク、レア・グルーヴの交差点にある重要作として見直された流れははっきりしている。

まとめ

『Ritual』は、Nico Gomezのカリブ海由来の感覚と、ブリュッセルを拠点にしたヨーロッパ的な録音感覚が重なった作品だ。ラテンの既成曲を素材にしながら、ファズギター、オルガン、重いブレイクで押していく作りは、1971年という年を考えるとかなり先鋭的に聴こえる。発売当時のローカル盤から、のちにレア・グルーヴの定番へと位置づけが変わった経緯も含めて、Nico Gomezの代表作として扱われるのに十分な内容を持っている。

トラックリスト

  1. A1 Caballo Negro
  2. A2 Naci Para Bailar
  3. A3 Cuba Libre
  4. A4 Samba De Una Nota So
  5. A5 Baila Chibiquiban
  6. B1 El Condor Pasa
  7. B2 Lupita
  8. B3 Pa! Pa! Pa! Pa!
  9. B4 Ritual
  10. B5 Eso Es El Amor

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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