Ohio Players - Pain (1972)
Ohio Players『Pain』(1972)レビュー
オハイオ・プレイヤーズの『Pain』は、1972年にUSのWestbound Recordsから出たアルバムで、バンドがデトロイトの同レーベルへ移ってから最初に発表した作品だ。デイトンで結成されたグループが、60年代の活動を経て新しい拠点と制作環境を得たタイミングの記録でもある。ファンクを軸にしながら、ソウルの感触やジャズ寄りのフレーズを曲の中へ差し込んでいく作りで、のちの大きな成功へつながる輪郭がここで見えてくる。
Westbound移籍後の出発点
オハイオ・プレイヤーズは1959年にオハイオ州デイトンで活動を始め、当初は別名義でスタジオ・ハウス・バンドとして演奏していた。60年代にはキャピトルで作品を出し、72年にWestboundへ移籍。その後の商業的な飛躍を考えると、『Pain』は単なる移籍第1弾ではなく、グループの方向性を固めた1枚として見えてくる。ここで中心にいるのは、クラレンス・サッチェル、リロイ・“シュガーフット”・ボナー、マーシャル・ジョーンズ、ラルフ・“ピーウィー”・ミドルブルックス、グレゴリー・ウェブスター、そして鍵盤の若い才能ジュニー・モリソンらの編成だ。
録音は1971年5月、ナッシュヴィルのMusic City Recordersで行われた。プロデュースはオハイオ・プレイヤーズ自身とハーブ・ジェイムス、ビリー・ピットマン。バンド主体の作り込みが前面に出ていて、演奏のまとまりとリズムの押し出しがはっきりしている。
先行シングル「Pain (Part 1)」の存在感
アルバムの核になるのが先行シングル「Pain (Part 1)」だ。1971年にシングルとして出て、Billboard Hot 100で64位、R&Bチャートで35位を記録している。大ヒット級ではないが、バンドが全米のポップ・チャートにも届き始めたことを示す数字だ。アルバム全体もBillboard 200で177位、Top Soul LPsで21位を記録し、派手な上昇ではないものの、時間をかけて存在感を積み上げた。
曲のつくりは長めの展開を生かしつつ、リフを軸に前へ進めるタイプで、オハイオ・プレイヤーズらしい粘りのあるグルーヴが早い段階から出ている。のちの「Fire」や「Love Rollercoaster」のような大ヒット期に比べると骨格はやや素朴だが、リズムの置き方やフレーズの間合いにはすでにバンドの個性がある。
サウンドと内容
『Pain』の面白さは、ファンクの推進力だけで押し切らず、演奏の隙間にソウルの湿り気やジャズ寄りのコード感を置いている点にある。特にジュニー・モリソンの加入は大きく、鍵盤の色づけが曲の輪郭を広げている。ギター、ベース、ドラムが一体で進みながら、ホーンやオルガンの処理が曲ごとに表情を変えるため、単調になりにくい。
全体を通して、後年のオハイオ・プレイヤーズに見られる官能的なテーマや、ロマンティックな空気の下地もここで固まり始めている。ジャズ的な動きのあるファンクと、歌ものとしての引きの強さが同居する作りで、70年代初頭のブラック・ミュージックの流れの中でも位置づけやすい。Funkadelicのような同時代のデトロイト系ファンクと比べても、こちらはよりメロディと歌の輪郭が前に出る印象がある。
ジャケットとアルバムの印象
本作はジャケットでも知られる。ジョエル・ブロドスキー撮影による、パット・“ランニング・ベア”・エヴァンスを起用したインパクトの強いアートワークだ。スキンヘッドに鋲付きの黒いレザー・ビキニという図像は、単なる装飾ではなく、以後の『Pleasure』『Ecstasy』『Climax』へつながるバンドの視覚的な記号になっていく。音だけでなく、見た目の印象まで含めてオハイオ・プレイヤーズの個性が固まり始めた時期の作品と受け取れる。
再発盤としてのこの盤
この盤は1972年のオリジナル期の作品を収めたUS盤で、Westbound Records名義、Janus Records流通のクレジットが入っている。リリースノートには、Ivy Duo-Pakのゲートフォールド仕様ジャケットであること、ラベルの組版やランアウトの刻印で別版と判別できることが記されている。オリジナル期の空気をそのまま持つ盤として、当時のレーベル事情や流通の形も含めて興味深い。
後年へのつながり
『Pain』は、のちのヒップホップやサンプリング文化でも参照される。表題曲はGang Starrの「Love Sick」で使われ、「Players Balling (Players Doin' Their Own Thang)」はPete Rock & C.L. Smoothの「Lots of Lovin'」でサンプリングされている。70年代初頭のファンクが、その後のブラック・ミュージックの制作手法にまで届いている例でもある。
オハイオ・プレイヤーズにとって『Pain』は、商業的なブレイクの前段階でありながら、後の代表作に直結する要素がすでに詰まった一枚だ。演奏のまとまり、リフの組み立て、歌とグルーヴの結びつき、そのあたりがはっきり見える作品である。
トラックリスト
- A1 Pain 6:12
- A2 Never Had A Dream 4:35
- A3 Players Balling (Players Doin' Their Own Thang) 4:22
- B1 I Wanna Hear From You 2:52
- B2 The Reds 5:08
- B3 Singing In The Morning 7:01