Nine Days' Wonder - Sonnet To Billy Frost (1976)
Nine Days' Wonder『Sonnet To Billy Frost』(1976)
ドイツ・マンハイム出身のプログレッシヴ・ロック・バンド、Nine Days' Wonderが1976年に発表したアルバムが『Sonnet To Billy Frost』である。Walter Seyfferの個性的なヴォーカルを軸に、メンバー変動の多いバンドの歩みの中でも、後期Nine Days' Wonderのまとまった形を示した作品として位置づけられている。ドイツのクラウトロック文脈にありながら、演奏や曲の組み立てには英国プログレやフランク・ザッパ的な要素も見える、かなり独特な一枚である。
バンドの背景と作品の位置づけ
Nine Days' Wonderは1960年代から活動していたWalter Seyfferを中心に、1970年ごろに現在の形へ移行したバンドである。ドイツ、オーストリア、アイルランド、イングランドの音楽家が集まった編成で、国籍の違うメンバーが混ざることで、演奏の感触にもまとまりすぎない部分が残っている。『Sonnet To Billy Frost』は、そうした流動的な編成の末に制作された後期作で、バンド史の中でも最終期の到達点として語られることが多い。
制作は1975年秋に行われ、1976年4月に発売されたとされる。クレジット上ではPeter HaukeとChristian Kolonovitsがプロデュースを担当し、前作群よりも整理された構成が意識されている。Nine Days' Wonderの作品群の中では、初期の荒さや即興性よりも、曲の流れとアレンジのまとまりが前に出た時期のアルバムである。
音の印象
この作品は、短めの曲を連ねながら全体をひとつの流れとして聴かせる作りになっている。ロック・オペラ的な構成が意識されており、曲同士のつながりやモチーフの反復が見える。歌の線は英語圏のバンドに近い感触を持ちつつ、Walter Seyfferの発声がそのままNine Days' Wonderらしさになっている。John Earleのサックス/フルートも重要で、ロック色の強い場面に管楽器が入ることで、単純なハードロックには寄らない。
実際に聴くと、音の密度は高いが、むやみに音数で押すタイプではない。リズム隊が土台を作り、その上にギター、キーボード、サックス、ヴォーカルが交差する形で進む。派手な展開よりも、細かい切り替えや曲の区切り方に耳が向く作品で、1970年代中盤のドイツ・プログレの中でも、かなり英語圏のロック作品に近い手触りを持っている。
同時代の文脈
1976年のドイツでは、クラウトロックの実験性とプログレッシヴ・ロックの構成美が重なる作品が多く、Nine Days' Wonderもその中に置ける。NektarやOmegaのような国際色のあるバンドと同じレーベル圏にありつつ、よりバンド内部の個性、特にSeyfferの声と歌い回しが前面に出ている点が特徴である。Frank Zappaや英国プログレの影響は、楽曲のひねりや構成の組み方に見えるが、そのまま模倣した感じではない。
当時の評価は必ずしも高くなく、発売時の反応は控えめだったとされる。ジャンルの枠にきれいに収まらないこと、そしてドイツのロックとしてはやや英語圏的に響くことが、受け止められ方に影響したようだ。一方で後年の回顧では、演奏と制作の完成度が高い作品として見直されている。
収録曲と代表性
『Sonnet To Billy Frost』は、特定の大ヒット曲で知られるアルバムではない。むしろアルバム全体の構成で聴かれる作品であり、タイトル曲を含めて流れの中で印象を残すタイプである。曲単位で切り出すより、全体を通して聴いたときに、Nine Days' Wonderの後期らしい整理された演奏と、少し不穏さを残すメロディの扱いが見えてくる。バンド側の回顧でも重要作として扱われており、最終期のNine Days' Wonderを示す一枚として記憶されている。
レーベルと盤の情報
オリジナルはドイツのBacillus Recordsからのリリースで、カタログ番号はBLPS 19234。レーベルの配給はBellaphonが担っており、盤面には「Made in Germany by Bellaphon Records.」の表記がある。Bacillusは1970年代のドイツ・プログレ/クラウトロックを多く出したレーベルで、Nine Days' Wonderもその流れの中にある。今回の盤は1976年リリースのオリジナル期のもので、後年の再発盤とは区別して考える必要がある。
まとめ
『Sonnet To Billy Frost』は、Nine Days' Wonderの後期を代表する1976年作であり、Walter Seyfferの個性、編成の流動性、英語圏ロックに近い感触、ドイツ・プログレの構成感がひとつにまとまったアルバムである。派手な売れ方をした作品ではないが、後年の再評価で見えてくる部分が多い。ドイツの70年代ロックを追ううえでは、バンドの終着点として押さえておきたい一枚である。
トラックリスト
- A1 Alchemists 5:50
- A2 I Need A Rest 4:06
- A3 In Memory Of Sir Hillary 3:25
- Five Minute Musical
- A5 Turn And Go On 4:05
- B1 Sonnet To Billy Frost 6:23
- B2 Empty Frame 3:56
- B3 Almost October 3:50
- B4 Jamie 3:42
- B5 You're Always All Alone With The Things You Love 5:39
- B6 I Need A Rest, Part II 1:12