Radiohead - Pablo Honey (1993)
Radiohead『Pablo Honey』(1993) レコード紹介
Radioheadのデビュー・アルバム『Pablo Honey』は、1993年にUKのParlophoneから登場した作品だ。オックスフォードシャー出身の5人組が、まだ新しい名前でメジャー契約下に入った直後に形にしたアルバムで、のちの実験性や構築性が前面に出るRadiohead像とは少し違う、90年代初頭のオルタナティブ・ロックの空気が濃い1枚になっている。とはいえ、単に「初期作」で片づけるには情報量が多く、バンドの出発点としてはかなり重要な位置づけの作品でもある。
制作背景と当時のバンド
本作は、RadioheadがEMIと6枚契約を結んだのちに制作されたデビュー・アルバムで、1992年9月から11月にかけて録音された。プロデュースはPaul KolderieとSean Slade。Dinosaur Jr.やBuffalo Tomで知られるアメリカ人プロデューサーの参加もあって、音像にはUKのギターロックだけでなく、当時のUSオルタナティブの手触りも見える。録音は主にオックスフォードシャーのChipping Norton Studioで行われ、B4とB5のみCourtyard Studioで録られている。ミックスは米マサチューセッツ州ロクスベリーのFort Apache、マスタリングはAbbey Road。
バンド名が「On a Friday」からRadioheadへ変わって間もない時期でもあり、アルバム全体には、まだ自分たちの輪郭を探っているような雰囲気がある。だが演奏そのものはすでにまとまりがあり、Thom Yorkeの歌、Jonny Greenwoodのギター、Colin Greenwoodのベース、Phil Selwayのドラム、Ed O’Brienのギターが、それぞれの役割をきっちり担っている。
『Creep』を軸にしたアルバム
この作品を語るうえで外せないのが「Creep」だ。Thom Yorkeが1987年頃に書いた曲を元に、バンドがデモをもとにアレンジを詰めていったという経緯がある。Jonny Greenwoodはこの曲をあまり気に入らず、あえて強く歪んだカッティングを入れたという話が残っているが、その荒い一撃が結果的に曲の印象を決めている。実際に聴くと、静かな部分と一気に押し込むギターの対比がはっきりしていて、ラジオ向けの分かりやすさと、少し不穏な引っかかりが同居している。
「Creep」は当初から大ヒットだったわけではなく、イスラエルのラジオ局での反応をきっかけにオーストラリア、ニュージーランド、スペイン、さらにアメリカのオルタナティブ局へ広がっていった。1993年後半にはBillboard Hot 100で34位、オルタナティブ・チャートで2位を記録し、UKでの再発も最高7位まで上昇した。後に「The Air That I Breathe」との類似をめぐって訴訟となり、作曲クレジットが追加されている点も、この曲の歴史を語るうえで欠かせない。
レコードとしての仕様
このUK盤はParlophoneのPCS 7360。ラベルには白ラベル仕様の初回UKプレスが確認でき、半光沢のカラー・インナー・スリーブ付き。ジャケットもセミグロス仕上げで、90年代前半のメジャー・ロック盤らしい実用性のある作りだ。盤面の刻印では「COME TO FLORIDA」がエッチングされ、他はスタンプ。DマークはDirect Metal Masteringを示している。バックカバー、インナー、スパイン、バーコードには「0777 7 81409 1 7」が記載され、ラベルには「7814091」が小さく入る。製造・流通表記は「MANUFACTURED AND DISTRIBUTED BY EMI」「PRINTED IN UK」。
作品の位置づけ
『Pablo Honey』は、後年の『The Bends』や『OK Computer』のような緊張感の高い構築美とは異なり、ギターの押し出しと曲の即効性が前に出たアルバムだ。だが、その中でも「Creep」の存在感だけが突出しているわけではなく、アルバム全体を通して聴くと、90年代初頭のオルタナティブ・ロックが持っていた乾いた音、ラフな勢い、メロディの分かりやすさがまとまっている。The Smiths、Pixies、R.E.M.、Joy Division、Siouxsie & The Bansheesといった先行バンドの影響が、Radioheadの初期像にそのまま反映された時期でもある。
Radioheadにとっては、ここが出発点だ。のちに電子音響や実験性へ大きく舵を切る前段階として、まずこのデビュー作があり、そこから世界的な評価へつながっていく流れが見える。初期盤の白ラベルUKプレスは、その始まりの空気をそのまま閉じ込めたような一枚になっている。
トラックリスト
- A1 You
- A2 Creep
- A3 How Do You?
- A4 Stop Whispering
- A5 Thinking About You
- A6 Anyone Can Play Guitar
- B1 Ripcord
- B2 Vegetable
- B3 Prove Yourself
- B4 I Can't
- B5 Lurgee
- B6 Blow Out