Ramp - Come Into Knowledge (1977)
Ramp『Come Into Knowledge』(1977)
RAMPは、ロイ・エアーズの名前を冠したプロダクション・ユニットとして1976年にシンシナティで結成された、アメリカのソウル/ジャズ・バンドだ。メンバーはヴォーカルのシャロン・マシューズとシベル・スラッシャー、ギターのランディ・ショアーズ、ベースのネイト・ホワイト、ドラムとパーカッションのジョン・マニュエル。ロイ・エアーズ本人は正式メンバーではないが、楽曲提供と共同プロデュースで深く関わっている。1977年にABC Blue Thumbから出た『Come Into Knowledge』は、そのRAMPにとって唯一のアルバムであり、グループの全体像をそのまま封じ込めた1枚として知られている。
シンシナティのグループが残した、1977年の1枚
録音はニューヨークのElectric Lady StudiosとハリウッドのRecord Plantで行われている。地方都市シンシナティで生まれたグループが、最終的に当時の主要スタジオへ持ち込まれた形で、作品の現場感はかなりはっきりしている。アルバムは「This album is dedicated to everybody in Cincinnati」と記されており、地元への意識も見える。1970年代後半のジャズ・ファンク、ソウル・ジャズの文脈に置くと、ロイ・エアーズ周辺の作品群、あるいはウディ・ショーやユビキティ系の滑らかなグルーヴと近い空気を持つ。
レーベルはABC Blue Thumb、品番はBT-6028。Blue ThumbのブランドがABC傘下で使われていた時期のリリースで、表記には「℗1977 Blue Thumb Records, Inc.」が入る盤とそうでない盤があることも確認されている。なお、ここで扱っているのは1977年のオリジナル盤としての『Come Into Knowledge』だ。
楽曲の中心にあるロイ・エアーズの色
このアルバムの核は、ロイ・エアーズの作家性が強く出た楽曲群にある。収録曲には「Daylight」「Come Into Knowledge」など、後年のサンプリング・ソースとして何度も参照された曲が並ぶ。特に「Daylight」は、A Tribe Called Quest「Bonita Applebum」で使われたことでよく知られ、その後もErykah Badu、Mary J. Blige、Common、PM Dawn、Tyler, the Creatorらの作品でネタとして触れられてきた。ヒップホップ側からの再発見によって、アルバム全体の評価が大きく上がったタイプの作品だ。
一方で、アルバムを通して聴くと、単にサンプリング向きのフレーズがあるだけではなく、ヴォーカル・ハーモニーとベース、ドラム、ギターの運びがかなり整理されている。シャロン・マシューズとシベル・スラッシャーの歌は前に出すぎず、リズム隊の上に自然に重なる作り。派手な展開で押すより、短いフレーズの反復と細かな間で引っ張る構成が多く、70年代後半のソウル/ジャズ・ファンクらしい落ち着いた推進力がある。
当時は広く知られず、後年に掘り返された作品
発売当時は大きな商業的成功にはつながらず、RAMPもこの1作のみで活動を終えている。ただ、その後のレア・グルーヴ文脈では重要盤として扱われるようになった。ロイ・エアーズ関連作の中でも、ディガーたちが探す対象として定着しており、オリジナル盤は中古市場で高値がつきやすい。もともと流通量が多いタイプではなく、しかも再評価のきっかけがクラブ/サンプリング文化側にあったため、一般的なソウル名盤とは少し違う広がり方をしている。
2007年にはVerve/P-VineからCD再発も行われ、長く入手しにくかったアルバムがまとまって聴かれるようになった。オリジナル盤との違いを語るなら、まずは音源の入手性が大きい。オリジナルのABC Blue Thumb盤は1977年当時のプレスで、ジャケットやラベルの表記差も含めてコレクター性が強い。一方、再発盤は聴くための入口として機能し、この作品がサンプリング・ソース集ではなく、1枚のアルバムとしても評価される土台を作った。
まとめ
『Come Into Knowledge』は、RAMPという短命のグループが残した唯一のアルバムであり、ロイ・エアーズ周辺のソウル/ジャズ・ファンクを1977年の形で切り取った記録でもある。録音環境、演奏のまとまり、ヴォーカルの配置、そして後年のヒップホップによる引用まで含めると、単なる埋もれたレア盤では終わっていない。シンセや派手なアレンジで押す作品ではなく、リズムと歌、フレーズの反復でじわじわ輪郭を作るタイプのアルバム。『Daylight』を中心に名前が広まったが、全編を通して聴くと、1970年代後半のジャズ・ファンクが持っていた実用性と柔らかさがきれいに残っている。
トラックリスト
- A1 The American Promise 6:30
- A2 I Just Love You 4:55
- A3 Give It 4:40
- A4 Everybody Loves The Sunshine 3:42
- B1 Come Into Knowledge 4:37
- B2 Try, Try, Try 4:55
- B3 Daylight 4:12
- B4 Look Into The Sky 4:42
- B5 Deep Velvet 3:33