The Gap Band - Gap Band III (1980)
The Gap Band『Gap Band III』(1980)
The Gap Bandの『Gap Band III』は、1980年にMercuryから出た3作目のアルバムで、グループの名前を広く押し上げた重要作である。オクラホマ州タルサ出身のWilson三兄弟、Ronnie、Charlie、Robertを中心にしたこのバンドは、ファンクを軸にしながら、ディスコ以後のダンス・ミュージックの感覚と、黒人音楽のメロディ重視の流れをつないでいく存在だった。本作はその輪郭がはっきり見える一枚で、のちのヒット連発へ向かう入口としても位置づけられる。
バンドの輪郭が固まった時期の作品
The Gap Bandの名は、地元タルサの黒人街グリーンウッド、アーチャー、パイン・ストリートに由来する。バンド名自体に土地の記憶が刻まれていて、単なるパーティー・バンドとは少し違う背景を持つ。そのうえで『Gap Band III』では、そうした出自を前面に出すというより、洗練されたファンク・グルーヴと歌の強さを前に出している。制作面ではLonnie Simmonsが深く関わり、バンドを自らのTotal Experienceへ迎え入れた時期の仕事でもある。
録音とミックスはハリウッドのTotal Experience Recording Studiosで行われ、マスタリングはAllen Zentz Mastering。メモとして残るクレジットを見るだけでも、当時の西海岸R&B制作の現場感が伝わってくる。演奏はライン録りを中心に組み立てられ、メンバーが半円形に並んで反応し合いながら進めたという制作エピソードもある。こうした方法は、音の輪郭をくっきりさせつつ、演奏の呼吸も残す作りにつながっている。
「Burn Rubber On Me」と「Yearning For Your Love」
本作を語るうえで外せないのが「Burn Rubber On Me (Why You Wanna Hurt Me)」である。Charlie WilsonがMinimoogで思いついたフレーズを起点にしたグルーヴで、あとからタイヤのスキール音が加えられたという逸話が残る。タイトル・フレーズの耳への残り方も強く、ファンクの反復性とポップな記号性がうまく噛み合っている。シングルとしてはR&Bチャート1位を記録し、Hot 100でも84位まで上がった。
一方で「Yearning For Your Love」は、アルバムの中で別の役割を担う。Oliver Scottの作曲にRonnie Wilsonが詞をつけ、スタジオ入り前にはほぼ形ができていた曲で、Earth, Wind & Fireのような雰囲気を狙ったという。実際、派手なファンクだけでなく、歌の輪郭がきれいに立つバラードとして機能している。こちらもR&Bチャート5位、Hot 100では60位を記録し、本作が単発のダンス盤ではないことを示した。
収録曲の流れとアルバムの性格
『Gap Band III』は、前のめりなリズムの曲と、メロウな曲の振れ幅が大きい。ディスコ以後の時代に、ファンクがどうアルバム単位で聴かれるか、その答えを出しているような構成である。James Gadsonらセッション・ミュージシャンの参加もあり、単純なバンド演奏だけで押し切る感じではない。音の厚みとキレの両方がある。
「Humpin'」もR&Bチャート60位を記録していて、アルバム全体のダンス志向を支える一曲になっている。ヒット曲だけを切り出すと派手な印象が強いが、実際には曲間の温度差や、リズムの置き方の違いがアルバムの聴きどころになっている。ファンクの硬さと、歌ものとしての親しみやすさ、その両方が同居する内容である。
作品の位置づけ
このアルバムは、The Gap Bandにとって初のプラチナ・アルバムになった。Billboardのブラック・アルバム・チャートでは1位、Billboard 200では16位を記録している。グループの代表作として扱われることが多いのも自然な流れで、ここで得た勢いがのちの「Outstanding」「Early in the Morning」「You Dropped a Bomb on Me」といった大きな成功へつながっていく。
また、レーベル面でも意味がある。Mercury時代の中でも、Total Experience Productionsとの関係が前面に出た時期の成果で、次作以降はTotal Experience Recordsからの発表へ移っていく。つまり『Gap Band III』は、バンドの商業的な飛躍点であると同時に、制作体制の転換点でもある。
同時代の文脈
1980年のファンク/ソウルは、70年代ディスコの余韻を引きながら、よりシンセや機械的なリズムへ寄っていく時期でもあった。その中でThe Gap Bandは、Kool & The Gangのようなパーティー感覚や、Earth, Wind & Fireの洗練を参照しつつ、よりストレートなグルーヴと歌のフックを前に出している。結果として、後の80年代R&Bに向かう橋渡しの役割も見えてくる。
聴感としては、ベースの押し出し、シンセの輪郭、コーラスのまとまりがはっきりしていて、演奏の熱量がそのまま録音に残っている印象が強い。派手な装飾より、リズムの芯とフレーズの反復で引っ張る作りで、そこにCharlie Wilsonの声が乗ると、硬さだけでは終わらない。ファンクの実用性と、ソウルの歌心が同じ盤面に置かれたアルバムである。
トラックリスト
- A1 When I Look In Your Eyes 4:58
- A2 Yearning For Your Love 5:41
- A3 Burn Rubber On Me (Why You Wanna Hurt Me) 5:16
- A4 Nothin' Comes To Sleepers 5:34
- B1 Are You Living 4:24
- B2 Sweet Caroline 3:21
- B3 Humpin' 5:06
- B4 The Way 4:46
- B5 Gash Gash Gash 5:18