The Impressions - The Young Mods' Forgotten Story (1969)
The Impressions『The Young Mods' Forgotten Story』
1969年5月、カーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)が自ら設立したシカゴの名門インディペンデント・レーベル「カートム(Curtom Records)」からリリースされたThe Impressionsの通算11作目のスタジオ・アルバム。カーティス、フレッド・キャッシュ、サム・グーデンのトリオ編成による最高傑作として名高く、シカゴ・ソウルが1970年代の「ニュー・ソウル」へと脱皮していく決定的瞬間を捉えた歴史的名盤である。
制作背景とダニー・ハサウェイの参画
全曲の作詞・作曲・プロデュースをカーティスが単独で担当。編曲にはグループの初期から数々の名演を支えてきた名匠ジョニー・ペイト(Johnny Pate)に加え、当時カートムのスタッフ・アレンジャーとして腕を振るっていた若き天才ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)が参加した。ゴスペルに根ざした敬虔で豊かな和声感覚と、流麗なストリングスやホーン・セクションが融合し、極めて気品あふれるアンサンブルが構築された。
グループとしての精緻なボーカル・ハーモニーを軸に据えながらも、カーティスの作家性とアレンジャー陣の冴え渡る手腕が結実し、トータル・アルバムとしての高い完成度を誇っている。
時代の文脈とメッセージ
1968年のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師暗殺やブラック・パワー・ムーヴメントの台頭など、アメリカの人種問題が激動の局面を迎えていた時代に制作された。60年代型のスウィートなドゥーワップ/ヴォーカル・グループの伝統を受け継ぎながら、黒人の誇り、人種融和、社会的公正を訴える切実なメッセージを音楽の核へと昇華させている。
カーティスはこの直後にグループを離れ、歴史的ソロ作『Curtis』(1970年)や映画『Super Fly』(1972年)で世界を席巻するが、本作はその前夜におけるカーティスの創作的ピークを示す重要なマイルストーンとなった。
収録曲とサウンドの魅力
代表曲「Choice of Colors」は、「もし肌の色を選べるなら何色にするのか」と静かに問いかけ、人種融和と人間としての尊厳を歌った不朽の名作。全米R&Bチャートで見事1位(Hot 100で21位)を記録し、グラディス・ナイト&ピップスやジャマイカのヘプトーンズら無数のアーティストに歌い継がれる公民権運動のアンセムとなった。アルバムを締めくくる「Mighty Mighty (Spade & Whitey)」は、人種間の団結を力強くアジテートするファンキーなプロト・ファンク・アンセムで、後にカーティスの名盤『Curtis/Live!』のオープニングを飾ったことでも名高い。
さらに「The Girl I Find」「Seven Years」「My Deceiving Heart」などでは、カーティスの繊細なファルセット・ボイスと独自のオープン・チューニング・ギター、そしてフレッドとサムによる甘美なハーモニーが完璧な調和を見せ、シカゴ・スウィート・ソウルの真髄を聴かせている。
評価と歴史的位置づけ
アルバムは全米ビルボードR&Bチャート10位を記録。甘美なボーカル・グループの妙味と鋭い社会的視座が奇跡的なバランスで結晶化した本作は、現在も「60年代ソウルLPの最高峰のひとつ」として世界中のソウル・ファンやアーティストから敬愛され続けている。
トラックリスト
- A1 The Young Mods' Forgotten Story
- A2 Choice Of Colors
- A3 The Girl I Find
- A4 Wherever You Leadeth Me
- A5 My Deceiving Heart
- B1 Seven Years
- B2 Love's Miracle
- B3 Jealous Man
- B4 Soulful Love
- B5 Mighty Mighty (Spade & Whitey)