The Temptations - Masterpiece (1973)
The Temptations『Masterpiece』(1973)
The Temptationsの『Masterpiece』は、1973年にGordyから発表されたアルバムで、グループの70年代前半を代表する一枚として扱われる作品だ。録音は1972年9月から1973年1月にかけて、デトロイトのHitsville USAで行われている。プロデュースはNorman Whitfield、アレンジはPaul Riser。Motown周辺のサウンドを支えてきた制作陣が、ソウル、ファンク、サイケデリック・ソウルの要素をひとつの流れにまとめた内容になっている。
70年代Temptationsの中心にある作品
この時期のThe Temptationsは、60年代のコーラス・グループとしての印象に加えて、より長尺で構成を重視した楽曲を取り込んでいた。『Masterpiece』もその流れの中にある。録音時のメンバーはDennis Edwards、Damon Harris、Richard Street、Melvin Franklin、Otis Williamsの5人。リードの分担も曲ごとに変化があり、Richard Street、Damon Harris、Melvin Franklinがそれぞれ存在感を出している。
グループのキャリア全体で見ると、『Masterpiece』はNorman Whitfieldとの関係が強く出た時期の到達点のひとつだ。WhitfieldはThe Temptationsに、従来のモータウン的な整ったポップ感だけでなく、重いリズム、反復するフレーズ、長い展開を持ち込んだ。その結果として、同時代のソウルやファンク、さらにPsychedelic Soulの文脈でも語られる作品になっている。
表題曲「Masterpiece」の存在感
アルバムの中心は、やはり表題曲「Masterpiece」だ。約14分に及ぶ長尺曲で、グループのヴォーカルが前面に出る部分はその中の一部にとどまる。ストリングス、ホーン、リズム隊、ヴォーカル、スタジオ内の仕掛けが密に組み合わされた構成で、Whitfieldがそのまとまりを見てこの題名を付けたという話が残っている。
この曲は1973年2月にシングルとしても発売され、Billboard Hot 100で7位、R&Bシングル・チャートで1位を記録した。長尺のアルバム曲でありながら、シングルとしても広く届いた点が、この時代のThe Temptationsの強さを示している。実際に聴くと、曲の中心にあるのは派手な独唱ではなく、展開の切り替わりと、細かく積み上がる演奏の層だ。ヴォーカル・グループのアルバムというより、ひとつの組曲に近い印象が残る。
収録曲とヒットの流れ
アルバムからは「Masterpiece」以外にもシングルが出ている。「Plastic Man」は1973年5月にシングル化され、Billboard Hot 100で40位、R&Bで8位。「Hey Girl (I Like Your Style)」は同年7月に発売され、ポップで35位、R&Bで2位を記録した。さらに「Law of the Land」は英国のみでシングルになり、41位を記録している。アルバム全体として、1曲だけで押し切るのではなく、複数の楽曲で当時のグループの方向性を示している構成だ。
チャート面でも強い。『Masterpiece』はBillboard 200で7位、R&Bアルバム・チャートで1位を記録した。アメリカでは50万枚、フランスでは10万枚のゴールド認定も受けている。The Temptationsにとって、70年代のアルバム路線が商業的にも機能していたことが分かる数字だ。
オリジナル盤の特徴
今回のUSオリジナル盤は、GordyのG965L。ラベルは“Stereo”表記がないバリエーションで、レイアウトやフォントも別バージョンと少し異なる。ジャケットはエンボス加工のカバーで、1973年当時の初回仕様として扱われる。モータウン系のレーベルらしい整ったデザインの中に、作品の重さと存在感が乗っている。
同時代の文脈
この時期のThe Temptationsは、同じMotownの中でもMarvin GayeやStevie Wonderとは別の角度から、ブラック・ミュージックの更新に関わっていた。Whitfield制作の長尺曲や重いグルーヴは、のちのファンクやソウル・アルバムの作り方にも通じる部分がある。The Temptationsのハーモニーを軸にしながら、楽曲の構造そのものを押し広げていく流れだ。
1970年代前半のThe Temptationsを追ううえで、『Masterpiece』は外せない一枚だ。グループのコーラスの美しさだけでなく、Whitfieldが作る大きな音の流れ、シングルとしての強さ、アルバム全体の統一感が同居している。60年代のヒット曲群とは違う顔を見せながら、なおThe Temptationsらしさが残る作品である。
トラックリスト
- A1 Hey Girl (I Like Your Style) 4:39
- A2 Masterpiece 13:54
- B1 Ma 4:46
- B2 Law Of The Land 5:08
- B3 Plastic Man 6:06
- B4 Hurry Tomorrow 8:08