The Temptations - Psychedelic Shack (1970)
The Temptations『Psychedelic Shack』(1970)
The Temptationsの『Psychedelic Shack』は、1970年にGordyから出たアルバムで、グループの転換点をはっきり示す一枚。モータウンの中でも洗練されたコーラス・グループとして知られていた彼らが、ここでは従来の整ったソウル・グループ像から大きく踏み出し、サイケデリック・ソウルの側へ深く寄っている。タイトル曲のヒットだけでなく、アルバム全体がその方向性を強く共有しているのが特徴だ。
モータウンの定型から離れた時期の作品
本作は、全曲をノーマン・ホイットフィールドとバレット・ストロングが手がけ、プロデュースもホイットフィールドが担当している。The Temptationsにとってホイットフィールド期は、グループの音楽的な輪郭が大きく変わった時期で、このアルバムもその流れの中にある。60年代前半から中盤の、きっちりとしたメロディとコーラスを軸にしたモータウン・サウンドとは距離があり、リズム、音の厚み、曲の展開に、より時代の空気が入り込んでいる。
1970年の時点で、黒人音楽の中では社会性の強い歌詞や、ファンク寄りのリズムを取り入れる動きが広がっていた。その文脈の中で、『Psychedelic Shack』はThe Temptationsが単なるヒット・グループではなく、サウンドの更新を続ける存在だったことを示す作品として置かれている。スモーキー・ロビンソン的な流麗さと、スライ・ストーン的な粗さや推進力が同居する、という評価があるのも納得しやすい内容だ。
タイトル曲とアルバムの中心性
表題曲「Psychedelic Shack」は、1969年12月28日に先行シングルとして発表され、全米Billboard Hot 100で7位、R&Bチャートで2位を記録した。アルバムのタイトルをそのまま背負う曲としても強く、サイケデリックという言葉を単なる装飾ではなく、当時の音作りや感覚の変化として前面に出している。The Temptationsの代表曲のひとつであり、この時期の方向性を端的に示す曲でもある。
実際に聴くと、コーラスがきれいにまとまる場面と、リズム隊やホーンが前へ出る場面の切り替わりがはっきりしている。声の重なりはThe Temptationsらしいが、全体の印象は以前よりも硬質で、音の隙間が少ない。耳に残るのは、歌の美しさだけでなく、曲の中で起こる細かい変化のほう。整ったソウル・グループのアルバムというより、スタジオそのものを使って感覚を組み立てた作品に近い。
「War」をめぐるエピソード
収録曲「War」も重要な一曲だ。ポール・ウィリアムズとデニス・エドワーズがリードを取るThe Temptations版は、のちにエドウィン・スターが歌って大ヒットするヴァージョンに比べると、やや抑えた仕上がりになっている。もともとこの曲がリスナーの間で評判になり、シングル化を望む声が出たものの、モータウン側は保守的な受け止め方を警戒し、The Temptations名義での強い社会的メッセージ曲として出す道を選ばなかった。その結果、ホイットフィールドがエドウィン・スターを起用して再録音し、そちらが1970年にBillboard Hot 100で1位を獲得した。
この経緯を見ると、『Psychedelic Shack』は単なるアルバム単位の作品ではなく、モータウン内部で何が求められ、何が避けられ、どこに新しい可能性があったのかを示す記録でもある。「War」のような曲がアルバムに入っていることで、作品全体の輪郭がさらに明確になる。
The Temptationsの中での位置づけ
The Temptationsは、1960年にデトロイトで結成され、1962年にMotownに加入した。4曲のBillboard Hot 100首位曲と14曲のR&B首位曲を持ち、1989年にはロックの殿堂入りも果たしている。そうした長いキャリアの中で、『Psychedelic Shack』は、初期のコーラス・グループ像から、より実験的で時代性の強い表現へ向かった時期の代表作として見やすい。
エディ・ケンドリックス、デニス・エドワーズ、ポール・ウィリアムズ、オーティス・ウィリアムズ、メルヴィン・フランクリンらの名前が並ぶ時期で、グループの声の個性がそのまま音の色合いになっている。The Temptationsが後年まで語られる理由のひとつは、単にヒットを重ねたことではなく、時代ごとに役割を変えながらも、グループとしての軸を保っていた点にある。このアルバムは、その変化の途中をかなりはっきり捉えた一枚として残っている。
まとめ
『Psychedelic Shack』は、1970年のThe Temptationsがどこへ向かっていたのかを示す作品だ。タイトル曲のヒット、ホイットフィールド主導の制作、「War」をめぐるエピソード、そしてソウルとサイケデリアの接点。どれもこの時代のモータウンを読むうえで外しにくい要素になっている。きれいに整ったハーモニーのグループという顔つきに加えて、音の作り方そのものを変えていく姿が記録されたアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Psychedelic Shack 3:53
- A2 You Make Your Own Heaven And Hell Right Here On Earth 2:46
- A3 Hum Along And Dance 3:53
- A4 Take A Stroll Thru Your Mind 8:32
- B1 It's Summer 2:35
- B2 War 4:13
- B3 You Need Love Like I Do (Don't You) 4:02
- B4 Friendship Train 7:53
動画プレイリスト
-
The Temptations - 01 - Psychedelic Shack (by EarpJohn)
-
The Temptations - 02 - You Make Your Own Heaven And Hell Right Here On Earth (by EarpJohn)
-
The Temptations - 03 - Hum Along And Dance (by EarpJohn)
-
The Temptations - 04 - Take A Stroll Through Your Mind (by EarpJohn)
-
The Temptations - 05 - It's Summer (by EarpJohn)
-
The Temptations - 06 - War (by EarpJohn)
-
The Temptations - 07 - You Need Love Like I Do | Don't You (by EarpJohn)
-
The Temptations - 08 - Friendship Train (by EarpJohn)