The 3 Pieces - Vibes Of Truth (1975)
The 3 Pieces『Vibes Of Truth』(1975) 作品紹介
1970年代半ばのUSジャズ・ファンクを語るうえで、The 3 Piecesの唯一作『Vibes Of Truth』は外せない1枚だ。ワシントンD.C.のハワード大学に通っていた3人組で、ドナルド・バードに見いだされたという来歴を持つ。ベースとボーカルのジェリー・ワイルダー、キーボードとトロンボーンのリンカーン・ロス、コンガとパーカッションのアンドレ・リチャードソンという編成で、1975年にFantasyからアルバムを残した。
この作品は、当時のジャズ・ファンクやソウルの流れの中でも、大学ジャズの素地とクラブ向けのグルーヴ感が近い距離で同居しているのが特徴だ。プロデュースはドナルド・バード。録音もFantasy Studiosで行われ、ブラックバーズ周辺の空気を共有しながら、よりストリート寄りの感触を持った内容にまとまっている。ブラックスプロイテーション期のソウル、ジャズ、ファンクが交差する時代の記録として見てよい盤だ。
大学から育った3人組、ドナルド・バードの接点
The 3 Piecesは、ハワード大学の授業に出ていた3人をバードが見出したことで始まったグループだ。リンカーン・ロスは、バードが手がけたブラックバーズの「Gut Level」を書いた人物としても知られ、バードとの関係が深い。こうした背景があるため、単なる学生バンドではなく、当時のD.C.の音楽環境と、ジャズ・ファンクの現場が接続したユニットとして捉えやすい。
メンバーの役割分担もはっきりしている。ワイルダーのベースとリード・ボーカルが土台を支え、ロスの鍵盤とトロンボーンが和声と音色を作り、リチャードソンのコンガとパーカッションがリズムの隙間を埋める。ドラムやホーンの推進力に頼り切らず、3人の持ち場がそれぞれ前に出る作りで、アンサンブルの輪郭が見えやすい。
『Vibes Of Truth』の内容と聴きどころ
アルバム全体では、オープンなドラム・ブレイク、ジャズ寄りのソロ、ソウルフルな歌、ファンキーなホーン・アレンジがまとまっている。曲単位では「Backed Up Against the Wall」「Concrete Jungle」「I Need You Girl」あたりが知られ、後年はレア・グルーヴの文脈で特に注目された。クラブDJやコレクターが探す盤として評価が固まったのも、このあたりの曲の使いやすさと、演奏の生々しさが理由になっている。
タイトル曲「Vibes Of Truth」は、作品の方向性をそのまま示すような位置にあり、ジャズの語法を保ちながらファンクの粘りを前に出す。いっぽうで「I Need You Girl」はシングルとしても出ており、B面違いの盤が2種類存在する。アルバムの中でも比較的耳に残りやすい曲として扱われてきた。ヒットチャート級の成功は確認しづらいが、のちの再評価の中心にあるのはこの曲を含む数曲だ。
時代背景と、同時代の作品との距離
1975年のFantasyは、ジャズやソウルの再発・発掘でも知られるレーベルだが、この時期はまだ新録のジャズ・ファンク作品も抱えていた。The 3 Piecesの1作目がここから出たのは自然な流れで、同じくFantasy周辺で活動していたブラックバーズとの近さも見えてくる。バードがブラックバーズに力を入れていたこともあり、The 3 Piecesには継続的なアルバム展開がなかった、という見方もされている。
音の質感としては、同時代のクロスオーバー・ジャズやソウル・ジャズに近いが、より短い編成で、リズムの芯を強く出している点が印象に残る。ホーン・アンサンブルで押し切るタイプではなく、ベース、鍵盤、パーカッションの噛み合わせで曲を進める作り。ブラックバーズ、初期のジャズ・ファンク、そしてレア・グルーヴとして掘られる70年代中盤のUSソウル作品群と並べて聴かれることが多い。
オリジナル盤と再発盤の違い
オリジナルの1975年US盤は、ジャケット裏面右上に小さなカタログ番号「F-9476」が入り、中央の写真の少し上に「℗ 1975, Fantasy Records / Tenth and Parker / Berkeley, CA. 94710」と印字されている。再発盤やブートレグではこの表記がないとされるため、盤を見分ける際の目印になる。2017年にはFantasyからアナログ再発も出ているが、オリジナル盤はこうした細部で判別される。
その後の位置づけ
The 3 Piecesはこの1枚だけで終わったが、後年の評価はむしろ上がった。1995年には英BGPからCD化され、コレクターの間で流通が広がった。解散後、ワイルダーはチャック・ブラウン&ザ・ソウル・サーチャーズに参加し、ロスは1982年に「The 3 Pieces」名義を復活させてゴーゴーの12インチを出している。グループとしての活動は長くないものの、D.C.出身の若い演奏者が70年代ジャズ・ファンクの現場に入っていった事例として、このアルバムは今も参照され続けている。
トラックリスト
- A1 I Need You Girl 4:10
- A2 Backed Up Against The Wall 4:26
- A3 Vibes Of Truth 4:30
- A4 Shortnin' Bread 4:31
- B1 Self Dealin' 3:54
- B2 Concrete Jungle 5:20
- B3 If Only I Could Prove To You 3:56
- B4 Cool It 3:29
- B5 Virtue 3:30