Vanity 6 - Vanity 6 (1982)
Vanity 6 / Vanity 6(1982, US)
Vanity 6は、プリンスが1981年から1982年にかけて手がけた女性3人組のプロジェクトで、同名アルバムは1982年の作品だ。アーティスト名はヴァニティ、ブレンダ・ベネット、スーザン・ムーンジーの3人。ファンク、ソウル、シンセ・ポップの要素を前面に出しつつ、当時のプリンス周辺の作品群と地続きの感触を持つ1枚である。
作品の背景
このグループは、プリンスが構想した「The Hookers」案を起点にしている。ランジェリー姿で性的な歌詞を歌う、かなり明確なコンセプトを持った企画として始まり、途中で形を変えながらVanity 6として完成した。制作面ではプリンスが「The Starr★Company」という名義を使い、プロデューサーとしての関与を表に出しすぎない形で参加している。実際にはシンセサイザー、ピアノ、ギター、ベース、ドラムなど、ほぼ全ての楽器をひとりで演奏したとされる点が、このアルバムの性格を強く決めている。
プリンスの周辺作品と並べると、女性ボーカル・グループを使いながらも、実際の骨格はかなりプリンス作品寄りだ。派手な装飾よりも、リズムの置き方、音の隙間、声の抜き差しで押していく作りで、80年代初頭のミネアポリス周辺の空気をそのまま閉じ込めたような内容になっている。
収録曲と代表曲
このアルバムで中心になるのは「Nasty Girl」だ。ヴァニティ名義のクレジットになっているが、実際にはプリンスの作品として知られている。過激な歌詞のためにBillboard Hot 100入りは逃したものの、ダンス/ディスコ系チャートでは強い反応を得て、4週連続1位を記録した。後年には1984年の映画『ビバリーヒルズ・コップ』でも使われ、作品の知名度を押し上げた曲でもある。
アルバム全体を通しても、収録曲は歌そのものの甘さより、ビートと反復の感触が前に出る。シンセの音色、簡潔なドラム、コーラスの掛け合いが積み重なり、当時のプリンス関連作に共通する、少し乾いた質感のファンクが続く。ボーカルグループ作品ではあるが、いわゆる洗練されたコーラス主体のR&Bとは少し違い、曲の推進力はかなりリズム中心だ。
チャート上の位置づけ
Vanity 6は、アルバムとしても一定の成果を残している。Billboard 200では45位、R&Bアルバムチャートでは6位を記録し、1985年にはゴールド認定を受けた。単発の話題作ではなく、1982年のプリンス・ワークスの一角として広く流通した作品だったことがわかる。
Vanity 6にとっては唯一のアルバムであり、この1枚がグループの実質的な全記録になっている。のちにヴァニティ自身は別の形で知られるようになるが、この時点ではプリンスの世界観を女性3人のユニットに落とし込んだ企画盤的な性格がはっきりしている。
同時代の文脈
1982年のアメリカン・ファンク/R&B周辺では、シンセサイザーを前面に出したサウンドが広がっていた。Vanity 6はその流れの中でも、プリンスの作家性が強く出た側の作品で、同時代のダンス・ミュージックやガールズ・グループ作品とは少し違う位置にある。歌詞の露出度、音の間合い、ミニマルな構成がまとまっていて、後のプリンス周辺の女性ユニット作品や、80年代のセクシュアルなポップ/R&Bの先触れとして見られることも多い。
聴感上は、派手な展開で引っ張るタイプではなく、一定のテンポと質感を保ったまま進む作り。そこにヴァニティの声が乗ることで、曲ごとの表情が少しずつ変わる。グループ名義の作品でありながら、作家としてのプリンスの輪郭がかなり明確に出ているのが、このアルバムの特徴だ。
USオリジナル盤の見どころ
今回のUS盤は1982年リリースのオリジナル期のもの。レーベルはWarner Bros. Records、カタログ番号は9 23716-1。Warner Bros.の1980年代前半らしいタン系のラベル期にあたる。US盤はプレス工場の違いで細部が分かれ、レーベル文字の位置やランアウトの刻印で識別される。この盤はワーナー系のオリジナル期プレスとして見られる一枚で、ジャケット表記も「Side 1」「Side 6」、ラベル表記は「1」「6」と分かれている点が特徴的だ。
オリジナル盤と後年の再発盤では、レーベル意匠やプレス先の違いが出ることがあるが、この作品についてはまず1982年の初出時点の空気をそのまま持っているかどうかが大きい。アルバムの内容自体が、まさに1982年という年の音と感覚に結びついている。
まとめ
Vanity 6の『Vanity 6』は、プリンスの企画力、80年代初頭のファンク/シンセ・ポップの動き、そしてヴァニティら3人のボーカルをひとつにまとめたアルバムだ。代表曲「Nasty Girl」を軸に、短い活動期間の中で強い印象を残した作品であり、同時代のプリンス関連作を追ううえでも外しにくい1枚になっている。
トラックリスト
- A1 Nasty Girl 5:10
- A2 Wet Dream 4:12
- A3 Drive Me Wild 2:31
- A4 He's So Dull 2:32
- B1 If A Girl Answers (Don't Hang Up) 5:34
- B2 Make-Up 2:40
- B3 Bite The Beat 3:12
- B4 3 x 2 = 6 5:24