The Temptations - Wings Of Love (1976)
The Temptations 1976

The Temptations - Wings Of Love (1976)

Funk / Soul Soul Rhythm & Blues

The Temptations『Wings Of Love』(1976年)

The Temptationsの1976年作『Wings Of Love』は、モータウン系ソウルの大きな流れの中で、70年代半ばのファンク/ソウルの空気をはっきり映したアルバムだ。USのGordyから出た本作は、1970年代のTemptationsがどこへ向かっていたかを、かなり端的に示している一枚でもある。60年代の洗練されたコーラス・グループ像よりも、ここではリズムの重さや曲ごとの推進力が前に出る。グループの歴史を追ってきた人ほど、当時の編成と役割の変化も含めて耳が止まる作品だろう。

70年代後半へつながるモータウン・ソウルの一枚

録音、ミックス、マスタリングはハリウッドのMotown Recording Studioで行われ、プロデュースはJeffrey BowenとBerry Gordy。盤面には「PRINTED IN U.S.A.」の表記があり、US盤らしい仕上がりになっている。発売当時のTemptationsは、すでに長いキャリアの途中にあり、メンバーの入れ替わりを経ながらも、グループ名の持つ存在感を保っていた時期だ。本作はその中でも、Dennis Edwardsを前面に出した構成が大きな特徴になっている。

全7曲のうち、Richard Streetがリードを取る「China Doll」以外は、ほぼDennis Edwardsが主役として歌う。コーラスは控えめで、アンサンブル・グループというより、リード・シンガー中心の設計がかなり強い。Temptationsの持ち味である複数ボーカルの絡みを期待すると、少し肩透かしに感じるかもしれないが、そのぶんEdwardsの声の押し出しや、曲ごとのグルーヴの立ち上がりがよく見える作りでもある。

「Up The Creek (Without A Paddle)」を中心にした前半

唯一のシングル「Up The Creek (Without A Paddle)」は、Sly Stoneの共作。ここは本作を語るうえで外せない曲だ。前半にはSly & The Family Stoneのメンバーがバッキングで参加しており、ファンク寄りの粘りや、跳ねるようなリズム感が強く出る。The Temptationsの作品の中でも、モータウンの整ったソウル感に、Sly系のざらついたファンクが差し込まれる場面として記憶されやすい。

実際に耳を追うと、冒頭からリズム隊の押し出しが強く、ボーカルはその上を走るように配置されている。コーラスの厚みで引っ張るというより、ビートのうねりで曲を進める感触がはっきりしていて、1970年代前半のファンク・ソウルの文脈にきれいに接続している。シングルはR&Bチャートで21位まで上昇しており、アルバムの中でも外向きの推進力を持つ曲として機能している。

後半に見える別の方向性

一方でアルバム後半には、Norman Whitfield期のプログレッシブ・ソウルを思わせる方向も見える。曲の流れや構成に少しドラマ性を持たせた作りで、前半のファンク寄りの手触りとは温度差がある。ここはアルバム全体を通して聴くと、統一感よりも試行錯誤の印象が残る部分でもある。Temptationsが70年代にたどった道筋の中で、サウンドの選択肢をいくつか並べたような内容だ。

当時の評価は必ずしも高くなく、商業的にも大きく伸びた作品ではない。Billboard 200では29位を記録し、フィンランド16位、スウェーデン32位という成績を残しているが、グループの代表作として語られる機会は多くない。ただ、そのぶん既存の名作群とは少し違う角度からTemptationsを見られるアルバムでもある。特にDennis Edwardsの歌を軸にした構成は、グループの中で彼が担っていた役割をかなり明確に示している。

Temptationsの中での位置づけ

The Temptationsは、60年代から70年代にかけてMotownを代表するボーカル・グループとして数々のヒットを持ち、洗練されたハーモニーと振付、装いまで含めてR&B/ソウルのイメージを形づくってきた。本作『Wings Of Love』は、その歴史の中でも、グループ性よりも個々のリードとファンクの質感を前面に出した時期の記録として置ける。1976年という年を考えると、ソウルはディスコへ向かい、ファンクはより硬質になり、モータウン勢も新しい音像を探していた。その中でこの作品は、Temptationsが70年代中盤にどんな音を選んだかを示す一枚としてまとまっている。

華やかな代表作とは別の場所にあるアルバムだが、曲ごとの役割分担、Sly Stoneとの接点、Dennis Edwards中心の設計など、細部を見ると当時の空気がかなり濃く残る。Temptationsのディスコグラフィーを追ううえで、70年代後半へ向かう途中の断面として押さえておきたい作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Sweet Gypsy Jane 4:28
  2. A2 Sweetness In The Dark 3:06
  3. A3 Up The Creek (Without A Paddle) 3:28
  4. A4 China Doll 3:26
  5. B1 Mary Ann 7:41
  6. B2 Dream World (Wings Of Love) 5:38
  7. B3 Paradise 3:26

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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