Wah Wah Watson - Elementary (1976)
Wah Wah Watson『Elementary』
ワー・ワー・ワトソンが1976年にColumbiaから発表した唯一のソロ名義作。モータウンのセッション・ギタリストとして知られ、テンプテーションズの「Papa Was a Rollin' Stone」やマーヴィン・ゲイの諸作、さらにハービー・ハンコックの『Man-Child』(1975年)や『Secrets』(1976年)でも重要な役回りを担っていた人物による一枚である。タイトルはシャーロック・ホームズの有名な言い回し「Elementary, my dear Watson」を踏まえた言葉遊びで、ジャケットでも鹿撃ち帽をかぶりパイプをくわえた探偵風の装いを見せている。
制作背景・エピソード
本作は、デイヴィッド・ルビンソンとワトソン自身の共同プロデュースで制作された。録音はロサンゼルスのThe Village Recorder、サンフランシスコのWally Heider Recordingなどで行われており、「My Love For You」はQuad Techで、「Sunset Boulevard」はWally Heider Recording, L.A.で、「Goo Goo Wah Wah」はFunky Features, S.F.で録音された。ミックスはWally Heider Recording, S.F.でまとめられている。
参加ミュージシャンの顔ぶれも豪華で、ベースにはジェームス・ジェマーソン、ルイス・ジョンソン、ウィルトン・フェルダー、ウィリー・ウィークス、ヘンリー・デイヴィスらが曲ごとに起用された。鍵盤陣にはハービー・ハンコック、ジョー・サンプル、クラレンス・マクドナルド、ジョン・バーンズらが名を連ね、ドラムはオリー・ブラウンらが支えている。ハービー・ハンコックとは「Bubbles」を共作し、同曲ではハンコック自身がエレクトリック・ピアノを演奏している。
時代の文脈
1976年当時、ワトソンはハンコックの作品群に深く関わっていた時期にあり、その流れの中でソロ契約がまとまった。本作は、ギターを前面に押し出した演奏だけに寄らず、ボーカル、作曲、アレンジ、アンサンブル全体の組み立てを重視した作品として作られている。「Love My Blues Away」や「Together (Whatever)」ではワトソン自身のボーカルを聴かせ、「My Love For You Comes And Goes」ではデイル・ウォーレンらのストリングス・アレンジも加わっている。
一方で、ワウ・ペダルやトーキング・モジュレーターを使った「Goo Goo Wah Wah」のようなファンク・ナンバーも収められており、オープニングから強い個性を持つ構成になっている。ワトソンのソロ作としてはこれ一枚に限られるが、当時のセッション・ワークで培った人脈と制作環境が、そのままアルバムの骨格になっている。
後世への影響
発売後しばらくしてから、UKを中心とするレア・グルーヴの流れや、日本でのフリー・ソウル/メロウ・ソウルの文脈で再評価が進んだ。「Goo Goo Wah Wah」はエリック・サーモン率いるDef Squadの「Say Word!」(1998年)でサンプリングされ、「Bubbles」はRedmanの「Psycho Dub」(1992年)で使われている。こうした引用の記録もあって、レコード愛好家のあいだで探され続ける作品になっている。
なお、発売当時は全米チャートで目立ったヒットにはつながらなかったものの、豪華な参加者の顔ぶれと楽曲ごとの緻密な作り込みが際立つ一枚として記憶されている。
トラックリスト
- A1 Goo Goo Wah Wah 5:36
- A2 Love My Blues Away 5:30
- A3 Cry Baby 4:02
- A4 My Love For You Comes And Goes 4:37
- A5 Together (Whatever) 4:53
- B1 Sunset Boulevard 4:09
- B2 Love Ain't Somethin' (That You Get For Free) 4:19
- B3 I'll Get By Without You 6:01
- B4 Bubbles 3:18
- B5 Good Friends 6:12
動画プレイリスト
このアーティストについて
Melvin "Wah Wah" Watson(メルヴィン・“ワー・ワー”・ワトソン、本名:Melvin M. Ragin[メルヴィン・M・レイギン])は、1960年代末から2010年代ま...
Melvin "Wah Wah" Watson のプロフィール・作品一覧