Zapp - Zapp II (1982)
Zapp『Zapp II』(1982) レビュー
Zappの2作目『Zapp II』は、1982年にUSのWarner Bros. Recordsから出たアルバムで、グループの看板であるRoger Troutmanのトーク・ボックスを軸にしたファンクを、前作よりもさらに整理して前へ押し出した作品だ。Zappは、P-Funk周辺から登場したバンドとして語られることが多く、George Clintonの周辺で育った感覚と、Rogerの機材を使った声の処理がそのままグループの個性になっている。このアルバムでも、その輪郭はかなりはっきりしている。
前作の勢いを、より長く、より深く展開した2作目
録音とミックスはシンシナティの5th Floor Recording StudiosとデトロイトのSound Room Eastで行われ、マスタリングはノース・ハリウッドのWarner Bros. Recording Studios。制作の中心はRogerとLarry Troutmanで、収録曲6曲はいずれもこの兄弟による共作になっている。演奏の芯は太く、ベースとドラムの反復が前面に出る一方、Rogerのトーク・ボックスがメロディとリズムの両方を引っ張る構成。耳に残るのは、音数の多さではなく、同じフレーズが何度も回ることで生まれる粘りのほうだ。
実際に聴くと、音の配置がかなり明快で、低域のうねりと電子的な声の処理がぶつかり合うというより、きれいに噛み合っている印象が強い。ファンクの土台は硬いのに、上に乗るフレーズはどこか軽く跳ねる。そのバランスがこの時期のZappらしさで、後のG-Funkに通じる感触もここで見えている。
代表曲「Dance Floor」と「Doo Wa Ditty」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Dance Floor」だ。アルバム本編では11分を超える長尺で、シングルではR&Bチャートで2週連続1位を記録した。Zapp名義の楽曲として唯一のR&B1位でもあり、グループの代表曲として扱われることが多い。長い曲なのに間延びした印象が少なく、同じグルーヴを保ったまま、細かなリフとボーカル処理で引っ張っていく作りになっている。
もう一つの重要曲が「Doo Wa Ditty (Blow That Thing)」。こちらはR&Bチャートで10位まで上がり、後年のサンプリングでもよく参照された。Beastie Boysの「Hey Ladies」やPaperboyの「Ditty」などで使われたことで、Zappの音が90年代以降のヒップホップにも入り込んでいく流れが見える。トーク・ボックスのフレーズや間の取り方は、単なる懐古ではなく、サンプル素材としても強く機能している。
アルバムの位置づけと当時の反応
『Zapp II』は、バンドがデビュー作で得た評価を、そのまま拡張した位置にある。前作の「More Bounce to the Ounce」で示した方向性を、よりタイトに、よりダンス向けにまとめた印象がある。Billboard 200では25位、R&Bアルバム・チャートでは2位を記録し、1982年9月にはRIAAのゴールド認定も受けた。商業的にも、Zappが単発の話題作ではなく、継続して強い存在感を持つグループだったことを示す結果だ。
批評面では評価が割れた部分もあるが、Robert ChristgauはB+を付け、「本物のダンス・レコード」と受け止めた。Ken TuckerはRogerのスタイルを強く評価し、パーティー・ミュージックとしての推進力を高く見ている。こうした反応を見ると、当時からこの作品が“歌もののアルバム”というより、“グルーヴを持続させる装置”として聴かれていたことが分かる。
同時代の文脈と、その後への影響
Zappの音は、P-Funkの延長線上にありながら、より機械的で、より都市的な感触を持っている。George ClintonやBootsy Collins周辺の流れを引きつつ、Roger Troutmanのトーク・ボックスが前面に出ることで、Zappは独自の形を作った。のちにDr. Dreや2Pacに代表される西海岸のG-Funkがこの系譜を参照したこともよく知られていて、『Zapp II』はその土台の一つとして見られることが多い。
収録曲では「Playin' Kinda Ruff」や「Do You Really Want An Answer?」もシングル化され、アルバム全体としては、派手な展開よりも反復の強さで押す構成。Warner Bros.期のZappの中でも、バンドの輪郭がかなり明確に出た1枚として置いておける。トーク・ボックス、反復するベースライン、抑制されたコードワーク、その3つがほぼ同じ強さで並ぶアルバムだ。
US盤について
今回のUS盤はWarner Bros. Recordsの1982年オリジナル期のもので、Capitol Records Pressing Plant, Los Angeles製のバリエーションにあたる。ラベルの書体やランアウトの「LW」刻印、星形スタンプで判別されるタイプで、同年のUS初出盤の中でも製造工場の違いが見える一枚。1982年という時点でのZappの勢いを、そのまま当時のワーナー盤として持っているのがこの盤のポイントだ。
『Zapp II』は、Zappの初期キャリアの中核にある作品であり、同時に後年のヒップホップやG-Funkへつながる要素をかなり早い段階で見せたアルバムでもある。派手さよりも、同じフレーズをどう鳴らし続けるかに重心があるところが、この作品の面白さだ。
トラックリスト
- A1 Dance Floor 11:09
- A2 Playin' Kinda Ruff 6:48
- A3 Doo Wa Ditty (Blow That Thing) 4:58
- B1 Do You Really Want An Answer? 6:36
- B2 Come On 5:11
- B3 A Touch Of Jazz (Playin' Kinda Ruff Part II) 6:10