Evelyn King - Get Loose (1982)
Evelyn King 1982

Evelyn King - Get Loose (1982)

Funk / Soul Soul Contemporary R&B

Evelyn King『Get Loose』レビュー

1982年のEvelyn King『Get Loose』は、シャンペン・キングの名でも知られる彼女が、70年代のディスコ期から80年代初頭のソウル/R&Bへと軸足を移していく流れの中で残した重要作だ。前作までで築いたダンス・フロア向けの強さを保ちながら、より洗練されたシンセサウンドと、当時のニューヨークR&Bらしい機能的なアレンジが前面に出ている。RCA VictorからのUS盤で、インディアナポリス工場プレスを示す「I」スタンプ入り。カスタムの歌詞・クレジット内袋付きという点も、当時のオリジナル盤らしい作りになっている。

80年代R&Bへ滑り込む、Evelyn Kingの転換点

Evelyn Kingは、1977年の「Shame」で一気に注目を集めたシンガーで、ディスコの代表曲を持つ存在として語られることが多い。その後も「Love Come Down」「Betcha She Don't Love You」など、ダンス・ミュージックとR&Bの境目をまたぐヒットを重ねていくが、『Get Loose』はその中でも特に時代の変化がはっきり見えるアルバムだ。ディスコの残響を引きずりつつ、音像はもっとタイトで、ベースとドラムの推進力、シンセの配置、コーラスの運び方が80年代前半らしい輪郭を作っている。

制作面ではMighty M Productions名義で、録音とミックスはニューヨークのCelestial SoundsとThe Power Stationで行われている。クレジットにはKashifの名も見え、同時代のニューヨーク・ブギー/ポスト・ディスコの感触が強い。Kashifはこの時期のR&Bで重要なキーボード奏者、ソングライター、プロデューサーのひとりで、本作でもサウンドの芯を担っている。Alyson WilliamsやPhillip Ballouの参加もクレジットされており、スタジオ作品としての厚みがある。

代表曲「Love Come Down」の存在感

この作品を語るうえで外せないのが「Love Come Down」だ。シングルとして大きく成功し、Billboard Hot 100で17位、R&Bチャートとダンス・チャートで1位を記録した。アルバムの中でも最も知られた曲で、跳ねるベースラインと、声の抜けの良さがそのまま曲の推進力になっている。歌の作りはシンプルだが、リズムの置き方とフックの反復が強く、フロアで効く形にまとまっている。

続く「Betcha She Don't Love You」もR&Bで2位まで上がり、アルバム全体の勢いを支える。さらに「Back to Love」「Get Loose」へと進む流れで、ヒット曲だけでなくアルバム単位でダンス・ソウルの温度を保っているのがこの盤の特徴だ。シングルの並びを見るだけでも、当時のEvelyn Kingがヒットメーカーとしてかなり強い位置にいたことが分かる。

聴きどころは、音の整理のされ方

実際に耳を通すと、まず感じるのは音の整理の良さだ。ボーカルは前に出るが、楽器が邪魔をしない。ドラムは硬めで、ベースは丸みを持ちながらも前進する。上モノのシンセやギターは必要以上に主張せず、歌を中心に置いたままダンス感を保っている。録音とミックスがCelestial SoundsとThe Power Stationという、当時のニューヨークの中心的なスタジオで行われたことも、このまとまりに直結している印象がある。

また、B1はMedia Sound Studios、B4はSigma Sound Studiosでミックスされており、曲ごとに少しずつ質感を変えている点も面白い。特にSigma Soundはフィラデルフィア・ソウルの流れでも知られる場所で、Evelyn King自身の出自とも自然につながる。派手な演出より、リズムと歌の関係を丁寧に詰めたアルバムという印象が強い。

チャートと評価、そして位置づけ

『Get Loose』はBillboard 200で27位、R&Bアルバム・チャートで1位を記録し、RIAAのゴールド認定も受けている。商業的にも、Evelyn Kingのキャリアの中でしっかり結果を残した作品だ。1977年のデビュー以来の流れを踏まえると、このアルバムはディスコの成功をそのまま引きずるのではなく、80年代のR&Bへ移行するための実用的な答えを示した盤として見えてくる。

評価面では、後年の再評価も含めて高く見られてきた一方で、当時から受け止め方は一様ではなかった。とはいえ、シングルの強さ、ニューヨーク録音の質感、Kashif周辺の作家性が重なった結果、ポスト・ディスコ期の重要作として残ったことは確かだ。2010年のリマスター盤には12インチ・バージョンも追加されており、クラブ向けの文脈でも意味を持つアルバムとして扱われている。

まとめ

『Get Loose』は、Evelyn Kingが単なるディスコ歌手ではなく、80年代R&Bの文脈で確かな存在感を持っていたことを示すアルバムだ。ヒット曲「Love Come Down」を軸にしながら、アルバム全体が同じ温度で走り切る構成。華やかさよりも、歌・リズム・スタジオワークのバランスで聴かせる1枚として、1982年という年の空気がそのまま刻まれている。

トラックリスト

  1. A1 Love Come Down 6:08
  2. A2 I Can't Stand It 4:05
  3. A3 Betcha She Don't Love You 5:05
  4. A4 Get Loose 4:51
  5. B1 Back To Love 5:17
  6. B2 Stop That 6:37
  7. B3 Get Up Off Your Love 4:38
  8. B4 I'm Just Warmin' Up 4:36

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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