Blur - Blur (1997)
Blur『Blur』(1997)レビュー
Blurの5作目のスタジオ・アルバム『Blur』は、1997年2月10日にUKで発売された作品だ。前作『The Great Escape』まででいわゆるBritpopの中心に立っていたバンドが、その看板をいったん外し、よりざらついたギター・ロックと実験性を前面に出したアルバムとして知られている。ロンドンとアイスランドで録音され、Foodからリリースされた本作は、同じBlurでも1990年代前半の洗練された英国的ポップ感とは少し違う、もっと切迫した手触りを持っている。
Britpopの中心から、別の場所へ
Blurはもともと、Damon Albarn、Graham Coxon、Alex James、Dave Rowntreeの4人によるロンドン発のバンドで、初期はMadchester以降のダンス感覚やノイズポップの影響を含むオルタナティブ・ロックとして出発した。その後『Modern Life Is Rubbish』『Parklife』『The Great Escape』で英国的な日常や風景を切り取る手つきが前面に出て、Britpopの代表格として見られるようになる。ただし『Blur』では、その路線をそのまま延長するのではなく、初期にあった尖りや不穏さを戻しつつ、アメリカのインディー・ロック、とくにPavementのような感触も取り込んでいる。
制作は1996年6月から11月にかけて行われ、ロンドンのMayfair Studiosからアイスランドのレイキャヴィークへ移って進められた。Damon Albarnが、アイスランドの光の質が作業に合っていたと振り返っている点も興味深い。Graham Coxonが「人々を怖がらせるような音楽を作ろう」とバンドに手紙を書いたことが、方向転換のきっかけになったという話も残っている。Dave Rowntreeは、このアルバムで初めてメンバー全員でのジャムから曲作りを始めたと語っていて、制作の現場感がそのまま音に出ている印象がある。
代表曲「Song 2」の存在感
このアルバムを語るうえで外せないのが「Song 2」だ。もともとはレコード会社向けの冗談めいたボサノバ風デモだったものを、Coxonの発案でテンポを上げ、轟音のギター・チューンに仕上げたという逸話がある。実際に聴くと、短い尺の中でイントロ、Aメロ、爆発的なサビがきっちり収まり、アルバムの中でも特に直線的な推進力を持つ。1990年代のUKロックの中でも、あの「Woo-hoo!」のフックだけで空気を変える曲として定着した感がある。
先行シングルの「Beetlebum」も重要だ。1997年1月にUKシングルチャート1位を記録し、アルバム本体も全英1位、プラチナ認定を獲得した。発売当時は、突然の音楽性の変化に戸惑うUK側の反応もあった一方、米国ではむしろ好意的に受け止められ、「Song 2」のヒットも追い風になってBillboard 200で自己最高の61位を記録している。
曲ごとの質感とアルバムの流れ
『Blur』は、派手なヒット曲だけで押し切るアルバムではない。むしろ、曲順を通して聴くと、音の密度やテンションの上下が細かく設計されているのがわかる。ギターは前に出るが、ただ荒いだけではなく、音の隙間やリズムの崩し方に工夫がある。アルバム全体には、Britpopの時代に見られた分かりやすい英国性よりも、内側へ向いた視線と、少し不安定な感触が残る。
この変化は、同時代のUKロックの中でもかなりはっきりしている。SuedeやOasisがそれぞれ異なる形でBritpopの輪郭を保っていた時期に、Blurはそこから距離を取り、よりアメリカのインディーやオルタナティブ・ロックに接近した。とはいえ単純な模倣ではなく、Blurらしいメロディの運びや、Albarnの声の置き方が曲の芯として残っている。
オリジナル盤ならではの仕様
1997年のオリジナルUK盤は、テクスチャー加工の見開きジャケット仕様で、内袋もエンボス/デボスの入った造りになっている。盤面のクレジットや、UKプレスらしい質感まで含めて、90年代後半のオルタナティブ・ロック作品としての存在感が強い。収録順もサイドをまたいで通し番号で振られており、LPとしてまとまった流れを意識した作りになっている。
後年の2枚組CD再発では、シングルB面や別バージョン、別セッション由来の曲が追加されているが、オリジナルLPはあくまで本編のまとまりが中心だ。そうした点でも、この1997年盤は、BlurがBritpopの中心から次の段階へ移る瞬間をそのまま封じ込めた1枚として見ておきたい。
まとめ
『Blur』は、Britpopの代表バンドが、自分たちの看板をいったん脇に置いて作った作品だ。荒さ、即興性、実験性が前に出ながらも、楽曲の輪郭はしっかりしていて、特に「Beetlebum」と「Song 2」はアルバムの印象を強く決めている。1997年という時点でこの変化を提示したことが、その後のBlurの歩みを考えるうえでも大きい。英国ロックの流れの中で、ひとつの時代区切りになったアルバムとして見ておきたい。
トラックリスト
- A1 Beetlebum
- A2 Song 2
- A3 Country Sad Ballad Man
- A4 M.O.R.
- A5 On Your Own
- A6 Theme From Retro
- A7 You're So Great
- B8 Death Of A Party
- B9 Chinese Bombs
- B10 I'm Just A Killer For Your Love
- B11 Look Inside America
- B12 Strange News From Another Star
- B13 Movin' On
- B14 Essex Dogs
動画プレイリスト
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Beetlebum (2012 Remaster)
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Song 2 (2012 Remaster)
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Country Sad Ballad Man (2012 Remaster)
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M.O.R. (2012 Remaster)
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On Your Own (2012 Remaster)
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Theme from Retro (2012 Remaster)
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You're so Great (2012 Remaster)
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Death of a Party (2012 Remaster)
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Chinese Bombs (2012 Remaster)
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I'm Just a Killer for Your Love (2012 Remaster)
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Look Inside America (2012 Remaster)
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Strange News from Another Star (2012 Remaster)
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Movin' On (2012 Remaster)
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Essex Dogs (2012 Remaster)