Can - Future Days (1973)
Can 1973

Can - Future Days (1973)

Rock Krautrock

Can『Future Days』(1973)について

Canの『Future Days』は、1973年にリリースされた4作目のスタジオ・アルバムで、Damo Suzuki在籍期の最後を飾る作品としても知られている。ドイツの実験ロック、いわゆるクラウトロックを代表するバンドの中でも、この作品は特に音の流れがほどけたような感触を持つ一枚で、同時代のロック作品と比べてもかなり独特な位置にある。前作『Ege Bamyası』までで見せていたファンク寄りの推進力を残しつつ、このアルバムではリズムと和音の重なりがよりゆるやかに展開し、時間の感覚そのものが変わるような作りになっている。

Canというバンドの文脈

Canは、1960年代後半にケルンで結成されたドイツのバンドで、Irmin Schmidt、Holger Czukay、Jaki Liebezeit、Michael Karoliを中心に活動した。アメリカ出身のMalcolm Mooneyを迎えた初期を経て、日本人ボーカリストのDamo Suzukiが加入すると、即興、反復、ノイズ、マントラ的なフレーズ、ファンク的リズムが混ざり合うCan独自の様式が固まっていく。『Future Days』は、その流れの中で、音の密度を保ちながらも、さらに余白を広げた作品として位置づけられる。

Canはのちのポストパンク、アンビエント、電子音楽の文脈でも参照されることが多いが、このアルバムはその評価を裏づける一枚として語られてきた。ロックのバンド編成でありながら、演奏の中心が「曲を押し進めること」ではなく、「音がどう漂うか」に移っている点が大きい。

音の作りと聴こえ方

この作品を聴くと、まず印象に残るのはJaki Liebezeitの演奏だ。派手に崩さず、一定の粒を保ちながら進むドラムが、全体の土台になっている。その上でHolger Czukayのベースやテープ処理、Irmin Schmidtの鍵盤が層を作り、Michael Karoliのギターがその間を縫うように入ってくる。Damo Suzukiの歌は、言葉を強く押し出すというより、音の一部として置かれている感触がある。

収録曲の中心は、長尺の「Bel Air」である。20分を超えるこの曲は、アルバム全体の方向を示す重要なトラックで、展開の多さよりも、同じモチーフが少しずつ形を変えていく過程が聴きどころになっている。レーベル表記では「Spare A Light」とされることもあるが、バックカバーでは「Bel Air」と記されている。タイトル曲「Future Days」や「Spray」も含め、どの曲も強いリフで引っ張るタイプではなく、音の流れを保ちながら進む構成になっている。

制作背景とアルバムの立ち位置

録音は1973年夏から初秋にかけて、ヴァイラースヴィストのInner Space Studioで行われた。前作ツアー後にメンバーが休暇を取り、それぞれが旅をしたことが、作品全体の落ち着いた空気につながったとされる。Canの作品の中では、もっとも開放的な方向に振れたアルバムのひとつであり、同時に制作面ではかなり複雑だったとも言われる。こうした背景を踏まえると、『Future Days』の静かな流れは、単なる気分の変化ではなく、バンドの方法論が一段進んだ結果として聴こえてくる。

オリジナルのUK盤はUnited Artists Recordsからのリリースで、カタログ番号はUAS 29505。今回の盤は1973年仕様で、裏ジャケット左下にDA/DA/73のデートコードが入り、印刷所クレジットがない初回仕様となっている。後年の再発ではST/ST/74表記とRobert Staceのクレジットが付く版があるため、UK初期盤はその違いでも見分けられる。こうした細部からも、当時のプレスごとの変化が確認できる。

同時代の中での意味

1970年代前半のロックは、プログレッシブ・ロックやハードロックが大きな流れを作っていたが、Canはそこに直接乗るのではなく、反復と編集感覚で別の道を開いていた。『Future Days』は、その中でも特にロック的な輪郭を薄め、空間と時間の感覚を前に出した作品として見られている。のちにアンビエントやポストロック的な聴かれ方をするのも、このアルバムの構造を考えると自然だ。

Canの作品群の中では、Damo Suzuki参加期の締めくくりであり、同時にバンドの別の可能性を示した到達点のひとつ。派手な代表曲を前面に出すタイプではないが、20分の「Bel Air」を中心に、アルバム全体でひとつの流れを作る構成が強い印象を残す。クラウトロックの文脈で語られ続ける理由が、そのまま詰まった一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Future Days 9:34
  2. A2 Spray 8:28
  3. A3 Moonshake 3:02
  4. B1 Bel Air 20:00

動画プレイリスト

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