Neu! - Neu! (1972)
Neu!『Neu!』(1972) レビュー
Neu!のデビュー作『Neu!』は、1972年にドイツで発表されたアルバムで、クラウトロックを語るうえで外せない一枚だ。クラフトワークを離れたクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターが1971年に結成したデュオによる最初の作品で、録音は1971年12月、ハンブルクのWindrose Studiosで行われている。プロデュースはコニー・プランク。単なるエンジニアではなく、二人の間をつなぐ存在として機能したとされる人物で、作品全体の輪郭にも強く関わっている。
レーベルはBrain、カタログ番号はbrain 1004。ゲートフォールド仕様で、初回盤のラベルには「Metronome」の表記が入る。センターラベルのリング径にも初回盤とやや後発盤の違いがあり、オリジナルのドイツ盤をめぐっては細かな識別点が多い。ここでは1972年のオリジナル盤として扱うのが自然だ。
モトーリック・ビートの原型
このアルバムでまず触れておきたいのは、やはりA面1曲目の「Hallogallo」だ。一定の速度で進むドラムと、その上を漂うように重なるギター。この組み合わせが、後にNeu!の代名詞となるモトーリック・ビートの基本形として知られている。リズムが前へ前へと進むのに、演奏全体は急がない。拍の強弱を過剰に目立たせず、直線的な推進力だけを残した作りで、当時のロックの感覚とはかなり違う。
実際に聴くと、派手な展開や大きな盛り上がりで引っ張る曲ではないのに、同じフレーズを続けるうちに音の重なり方が少しずつ変わっていくのがわかる。ドラム、ギター、ベースの関係が固定されているようで、細部はかなり動いている。反復の中に変化を置く構成が、この作品の核にある。
アルバム全体の印象
『Neu!』は「Hallogallo」だけの作品ではない。アルバム全体を通して、楽曲は比較的短くまとまりつつ、演奏の感触は一貫している。ロックの骨格は残しながら、メロディを前面に出しすぎず、音の配置そのものを聴かせる作りだ。ギターは前に出て歌うというより、空間を作る役割が強い。ディンガーのドラムは機械的な精度とは少し違い、人力ならではの揺れを保ちながら、一定の推進力を維持している。
このバランス感覚が、後年のポストパンクやオルタナティブ、電子音楽にまで影響を広げた要因になっている。デヴィッド・ボウイ、ブライアン・イーノ、イギー・ポップ、レディオヘッドのトム・ヨークらが支持を公言したことでも知られ、発表当時の評価と後年の再評価の差が大きい作品でもある。
収録曲と細かな特徴
収録曲の中では、やはり「Hallogallo」が代表曲として扱われることが多い。アルバム冒頭に置かれたことで、この作品の方向性を最初に示す役割も担っている。A面の流れで聴くと、バンドの基調がかなり早い段階で明確になる。B面の「Negativland」は、荒さと反復の感覚が前面に出る曲で、題名の由来として後年のバンド名にも影響を与えたことで知られる。
また、B面ラストの「Super」は、ロック的な高揚をそのまま大きくするのではなく、少しずつ熱量を上げていくタイプの曲だ。さらに、この盤ではB3がロックト・グルーヴで終わる仕様になっており、レコードとしての聴取体験にも独特の余韻が残る。曲が終わったあとも、同じ回転の中で音が止まらない感覚がある。
1972年という位置づけ
1972年という年を考えると、このアルバムの位置はかなりはっきりしている。イギリスやアメリカのロックが大型化していく一方で、西ドイツでは別の文脈からロックを組み替える動きが進んでいた。Neu!はその中心に近い存在で、Kraftwerkの初期作とも近い距離にありながら、よりギター中心で、より即物的な反復を押し出している。のちのクラウトロック像を形作るうえで、かなり重要な座標に置かれる作品だ。
発表当時は国際的な大ヒット作ではなかったが、西ドイツ国内では着実に売り上げを伸ばしたとされる。再発盤も多い作品だが、初回盤はMetronome表記のあるBrainラベルや、プレス工場由来のセンターラベルの違いで見分けられる。オリジナル盤には、当時のドイツ・ロックの現場感がそのまま残っている。
まとめ
『Neu!』は、派手さよりも構造、メロディよりも推進力、完成度よりも反復の手触りが先に立つアルバムだ。クラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターの緊張感ある組み合わせに、コニー・プランクの制作が加わって、独特の均衡を保っている。クラウトロックの歴史の中でも、後続への影響が特に大きい一枚として扱われるのは自然だろう。特に「Hallogallo」の存在感は大きく、ここから後の多くのロックや電子音楽の感覚が接続されていく。
トラックリスト
- A1 Hallogallo 10:07
- A2 Sonderangebot 4:50
- A3 Weissensee 6:42
- Jahresüberblick
- B1 Im Glück 6:52
- B2 Negativland 9:46
- B3 Lieber Honig 7:15