Quincy Jones - Body Heat (1974)
Quincy Jones『Body Heat』(1974)
クインシー・ジョーンズが1974年にA&M Recordsから発表した『Body Heat』は、ジャズを土台にしながらソウルやR&Bの要素を大きく取り込んだアルバムだ。プロデューサー、アレンジャー、作曲家としてすでに幅広い仕事をしていたクインシーが、自身のアルバムでジャズ・ファンク/ソウル路線をさらに押し進めた作品として位置づけられている。Billboard 200で最高6位、R&Bアルバム・チャートとジャズ・アルバム・チャートでは1位を記録し、RIAAゴールド認定も受けた。商業的にも、彼の作品群の中でかなり大きな存在感を持つ一枚だ。
ジャズとソウルの接点を強く押し出した内容
収録曲は、インストゥルメンタルの推進力と、ボーカル曲の比重がはっきり共存している。参加ミュージシャンも豪華で、キーボードにHerbie Hancock、Billy Preston、Dave Grusin、ドラムスにBernard Purdie、ベースにChuck Raineyといった名前が並ぶ。演奏陣の顔ぶれだけでも、この時期のアメリカ黒人音楽の中心にある人脈が見えてくる。
耳に残るのは、緻密なアレンジの中にあるリズムの前進だ。ジャズの和声感を保ちながら、ベースとドラムが前に出る場面が多く、ソウル寄りの歌ものでも輪郭がはっきりしている。クインシーのアルバムらしく、音の配置が整理されていて、各パートの役割が明瞭だ。派手さだけで押すのではなく、グルーヴの積み重ねで曲を動かしていく作り。
代表曲と収録曲の見どころ
このアルバムで特に知られるのが「Everything Must Change」だ。Benard Ighnerが自作曲を自ら歌う形で収録されていて、のちに多くの歌手に取り上げられた。メロディと歌詞の運びが素直で、アルバム全体の中でも印象が残りやすい1曲だ。
「If I Ever Lose This Heaven」はLeon WareとPam Sawyerの共作で、Leon WareとMinnie Ripertonがボーカルを務める。柔らかな歌声と、リズムの細かな跳ね方が重なる曲で、当時のソウルとジャズの接点をそのまま切り取ったような内容になっている。「One Track Mind」はJonesとLeon Wareの共作で、こちらもこの作品の路線をよく示している。
ジャズ・スタンダードの「Along Came Betty」を入れている点も面白い。Benny Golsonの曲をこうした文脈に置くことで、クインシーがジャズの出自を保ちながら、当時のソウル/ファンクの空気へ橋をかけていることが伝わる。
シングルとアルバムの広がり
シングルとしては「Boogie Joe The Grinder」「If I Ever Lose This Heaven」「Body Heat」が出ている。「Body Heat」は後年、2Pacの「How Do U Want It」などでサンプリングされ、ヒップホップ側からも参照された。70年代のソウル/ジャズ・ファンク作品が、のちのラップの現場で素材として使われていく流れの中に、この曲も入っている。
タイトル曲は、アルバムの中でも特にリズムの質感が際立つ。熱量を前面に出しつつも、音数を詰め込みすぎず、低音と打楽器の動きで引っ張る構成。クインシーの作品に共通する、整った編曲と黒いグルーヴの両立がよく出ている。
A&M期のクインシー・ジョーンズという位置
『Body Heat』は、クインシーが大衆的な成功と音楽的な組み立ての両方を強く意識していた時期の作品として見やすい。A&Mというレーベルの中で、ジャズの文脈を持ちながらソウルやR&Bの市場にも届く形にまとめられている。翌年以降の彼の大きな成功を考えると、このアルバムは、ジャンル横断的な制作手腕がより広く認識されていく前段階の重要作として置ける。
なお、このUS盤は1974年のオリジナルリリースで、カスタム印刷の内袋が付く仕様。A&Mの同時代盤らしく、パッケージ面でも当時のレーベルの作り込みが見える。クインシーのディスコグラフィーの中では、ジャズ・ファンクとソウルの結節点をかなり分かりやすく示す一枚として残っている。
トラックリスト
- A1 Body Heat 4:18
- A2 Soul Saga (Song Of The Buffalo Soldier) 4:54
- A3 Everything Must Change 5:57
- A4 Boogie Joe The Grinder 3:06
- A5 Reprise: Everything Must Change 0:59
- B1 One Track Mind 6:10
- B2 Just A Man 3:30
- B3 Along Came Betty 4:45
- B4 If I Ever Lose This Heaven 4:50