James Brown - Reality (1974)
James Brown『Reality』――1974年のジェームス・ブラウンを刻んだ一枚
『Reality』は、James Brownが1974年にPolydorから発表したアルバムである。ソウルとファンクを軸にしながら、70年代半ばのジェームス・ブラウンらしい政治性、バンドの推進力、そしてシングル志向の強さが同居した作品になっている。前年からこの時期にかけてのブラウンは、すでに「ファンクの神様」としての立場を確立しており、同時にサウンドの更新を続けていた時期でもある。本作は、その流れの中で出てきた一作として位置づけられる。
録音はニューヨークのSound Ideas “Studio A”を中心に行われ、A&R Studiosでも追加録音が行われた。クレジット上はJames Brown自身のプロデュースで、1972年11月から1974年12月にかけて録音された音源で構成されている。つまり、発売年の空気だけでなく、数年分の制作の蓄積が詰まったアルバムでもある。
先行シングル「Funky President」
このアルバムでまず触れておきたいのが「Funky President (People It's Bad)」である。1974年10月に先行シングルとして出され、Hot 100で44位、R&Bシングル・チャートで4位を記録した。タイトルの“President”は、リチャード・ニクソン辞任後に就任したジェラルド・フォードを指すとされ、当時の空気をそのまま反映した曲として知られる。
演奏面では、デヴィッド・サンボーン、ジョー・ファレル、ピー・ウィー・エリス、ゴードン・エドワーズら、ニューヨークのセッション・ミュージシャンが参加している。ファンクの骨格にホーン隊の切れ味が乗る構成で、後年のヒップホップで繰り返し引用されたのも納得できる。Eric B. & Rakim、N.W.A、Public Enemy、Kanye Westらがサンプリングに使ったことでも、この曲の存在感は大きい。
タイトル曲とアルバム全体の流れ
タイトル曲「Reality」も1975年2月にシングル化され、R&Bチャート19位、Hot 100で80位を記録した。アルバムの中では、シングル向きの明快さを持ちながら、全体としてはブラウンの当時のバンド・サウンドの延長線上に置かれている。続く「All for One」では「Say It Loud – I'm Black and I'm Proud」の引用があり、70年代前半のブラウンが持っていた社会的メッセージの持続も見える。
収録曲には「Further On Up the Road」「Don't Fence Me In」「The Twist」「Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me)」といったカバーも含まれる。自作曲と既成曲を混ぜながら、ブラウン流のリズム感でまとめていく構成で、アルバム単位でも彼の仕事の進め方がはっきり出ている。
『The Payback』期との近さ
『Reality』は、ジェームス・ブラウンの70年代作品の中でも『The Payback』と同じ1974年の流れにある。『The Payback』は彼のキャリアで唯一のゴールド認定アルバムであり、同時期のブラウンが大きな注目を集めていたことがわかる。そうした中で出た『Reality』は、派手な看板曲だけで押し切る作品ではないが、当時のブラウンがどの方向へ進んでいたのかを確認できる一枚になっている。
評価は分かれた。『Reality』はBillboard 200で10週チャートインし、最高56位を記録している。後年の評価では、作品全体よりも「Funky President」の強さが語られることが多い。実際、この曲の存在がアルバムの印象を大きく決めている。70年代のファンクが、単なるダンス音楽ではなく、都市の空気や政治の気配まで取り込んでいたことを示す例としても重要だ。
70年代ファンクの中での位置
James Brownは、1960年代に「Papa's Got a Brand New Bag」や「I Got You (I Feel Good)」でソウルの言語を更新し、70年代にはそのリズムの骨格をさらに前面化させた。本作『Reality』も、その流れの中にある。Sly & the Family StoneやParliament-Funkadelicのような同時代のファンクと並べると、ブラウンのサウンドはよりストイックで、リフとブレイクの反復が際立つ。
その意味で『Reality』は、華やかな代表作というより、ブラウンが70年代半ばにどんなテンションで現場を動かしていたかを伝える記録に近い。タイトル曲、そして「Funky President」の2曲だけでも、この時期のブラウンが持っていた推進力は十分に伝わる。ファンクの歴史を追ううえで、外せないアルバムのひとつである。
トラックリスト
- A1 Reality 4:14
- A2 Funky President (People It's Bad) 4:01
- A3 Further On Up The Road 3:47
- A4 Check Your Body 4:04
- A5 Don't Fence Me In 3:26
- B1 All For One 6:09
- B2 I'm Broken Hearted 4:09
- B3 The Twist 3:53
- B4 Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me) 4:02