Henry Franklin - The Skipper (1972)
Henry Franklin『The Skipper』
Henry Franklinの初リーダー作『The Skipper』は、1972年にUSのBlack Jazz Recordsから出た作品。ロサンゼルス生まれのベーシストで、父はトランペット奏者/バンドリーダーのSammy Franklin。高校時代からRoy AyersのLatin Jazz Quintetで演奏し、Don CherryやOrnette Colemanとも共演、1963年にはLou Rawlsのグループで録音している。その後はWillie Boboのもとでニューヨークでも活動し、Blue MitchellやArchie Sheppのバンド、カリフォルニアに戻るとHugh Masekelaのバンドに加わってアフリカのリズムを学び、1968年のヒット「Grazing in the Grass」でベースを弾いて広く知られるようになった。The Three Sounds『Soul Symphony』(Blue Note、1969)や、John CarterとBobby Bradfordのフリー・ジャズ・カルテットにも参加している。
制作背景と参加ミュージシャン
録音はBlack Jazzの主宰者でピアニストのGene Russellが手がけた。参加者はOscar Brashear(トランペット、フリューゲルホーン)、Charles Owens(テナー・サックス)、Masekelaのバンド仲間Bill Henderson(フェンダー・ローズ)、Michael Carvin(ドラム)、Kenny Climax(ギター)、Fred LidoとTip Jones(パーカッション)。Franklinはウッド・ベースとエレクトリック・ベースを弾き分けている。曲の多くはFranklin作で、「Theme for JoJo」はAl Hall Jr.、「The Skipper」はBill Hendersonの作。
タイトルの「The Skipper」は、アンサンブルの中でベーシストを“荒れた音楽の海で舵を取る存在”になぞらえたあだ名として語られている。続編『The Skipper at Home』は1974年に同レーベルから出ている。
Black Jazzの中での位置
Black Jazz Recordsは、Gene Russellと、パーカッショニストでシカゴのカントリー系レーベルOvationの創設者でもあるDick Schoryが、カリフォルニア州オークランドで設立したレーベル。若いアフリカ系アメリカ人ジャズ・ミュージシャンを紹介することを掲げ、Ovationが資金と流通を担った。1971年から1975年までに20作を出し、フリー・ジャズ、ファンク、ソウル・ジャズまで幅を持たせている。レーベルはDoug Carn、Walter Bishop Jr.、Calvin Keysらカリフォルニアの黒人ミュージシャンを記録し、JJA Jazz AwardsはFranklinのベースを同レーベルの「音楽的な背骨」と呼んでいる。
本作は着実に売れた一方で、Black Jazzの大きなヒット作にはならなかったとされる。
後世への広がり
Black Jazzの作品群はのちにヒップホップのアーティストにサンプリングされ、DJやレコード・コレクターの間でも知られるようになった。2020年からはReal Gone MusicがBlack Jazz全20作の再発を始め、『The Skipper』も2021年にCD化されている。
サウンド面では、Derek's Music BlogがBlack Jazz作品の中でも特に音の良い一枚として取り上げ、ファンク、フュージョン、ジャズ・ファンクが混ざった、聴きやすく時代を超えたカルト・クラシックと評している。曲ごとに見ると、「Outbreak」はFranklinのベースとCarvinのドラムが前に出るバップ調の曲で、Charles Owensのサックス・ソロが挙げられている。「Plastic Creek Stomp」はファンク寄りのグルーヴ、「Beauty and the Electric Tub」は12分を超える展開の中でゆっくりした流れから速いテンポへ移る構成、「The Skipper」はテレビ番組のテーマのような映画的な響きがあると紹介されている。再発盤の紹介文では、エレクトリック化する直前の60年代末のMiles Davisが比較対象として挙げられている。
その後もFranklinは自身のレーベルを主宰して活動を続け、1990年代のロサンゼルス、レイマート・パークのジャズ再興の父親的存在ともされている。2026年にはJJA(ジャズ・ジャーナリスト協会)の「Jazz Hero」に選ばれた。本人は自分たちの音楽について「月を狙っているんじゃない。心を狙っているんだ」と語っている。
トラックリスト
- A1 Outbreak 10:00
- A2 Plastic Creek Stomp 3:22
- A3 Theme For JoJo 7:34
- B1 Beauty And The Electric Tub 12:33
- B2 Little Miss Laurie 7:36
- B3 The Skipper 5:18