Il Rovescio Della Medaglia - Contamination (1973)
Il Rovescio Della Medaglia『Contamination』
イタリアのプログレッシブ・ロック・バンド、Il Rovescio Della Medagliaが1973年に発表した『Contaminazione』は、彼らの作品の中でも特に知られた一枚だ。バンド名は「メダルの裏側」を意味し、ローマ周辺で活動を始めた彼らが、ハードロック寄りの初期作から一歩進んで、より構築的なサウンドへ踏み込んだ時期の記録になっている。重いギターを土台にしながら、鍵盤とクラシカルな要素が前面に出る作りで、イタリアン・プログレの文脈でも重要な位置を占める作品として扱われてきた。
作品の輪郭
このアルバムの中心にあるのは、J.S.バッハ由来のモチーフを取り込んだ組曲的な展開だ。単にクラシックの引用に終わらず、バンドの演奏とオーケストラ的な構成がぶつかり合うように組み立てられている。演奏面では、ギターの硬質な押し出し、オルガンやキーボードの厚み、そして曲ごとの切り替えの多さが印象に残る。曲を追うごとに場面が変わるタイプの作品で、ロックのバンド演奏と大きな構成を同時に聴かせる作りになっている。
制作面では、ルイス・エンリケス・バカロフが深く関わっている点も重要だ。映画音楽でも知られる彼の参加によって、単なるロック作品よりも、明確な設計図を持った組曲としての性格が強まっている。イタリアの同時代作品で言えば、New Trollsのようにクラシックとロックを接続する試みが進んでいた時期で、その流れの中にこの作品も置ける。とはいえ、Il Rovescio Della Medagliaの持ち味は、整った上品さよりも、演奏の圧と音の密度にある。
アルバムの位置づけ
バンドは1971年の『La Bibbia』、1972年の『Io come io』で、すでにハードロックを基盤にした独自の方向を見せていた。そこから『Contaminazione』では、鍵盤奏者フランコ・ディ・サバティーノが加わったこともあり、音楽の重心が明らかに変わっている。初期の勢いを残しつつ、よりシンフォニックな構成へ進んだ作品として見ると流れがつかみやすい。バンドにとっては、単なる3作目ではなく、作風の転換点にあたる一枚だ。
当時のイタリアン・プログレは、Banco del Mutuo Soccorso、PFM、Le Ormeなどがそれぞれの個性を築いていた時期で、この作品もその大きな流れの中にある。ただし、ここでは優雅な旋律の流れより、リフの重さと構成の切り替えが前に出る。聴感としては、硬いロックの手触りを残したまま、より大きなスケールへ踏み出した印象が強い。
再発盤について
2015年盤は180グラム・ヴィニールとしてリリースされた再発で、オリジナル盤からかなり時間を置いている。録音そのものは1973年の作品だが、この盤ではデジタル・リマスターが施されているため、音の輪郭がやや整理された聴こえ方になる。オリジナル盤は当時のイタリア・プログレらしい質感をそのまま抱えていたはずだが、この再発盤では、ギターやキーボードの分離が追いやすい印象がある。アナログ盤としての手触りを保ちながら、現代の再発らしい見通しの良さを持つ形だ。
聴きどころ
この作品でまず目を引くのは、バンド演奏の重さと、クラシック由来の素材が同じ曲の中で並走する点だ。単純なロック・アルバムの枠には収まらず、曲間のつながりやテーマの反復に耳が向く。代表曲として特定の1曲だけが独立して語られるタイプではなく、アルバム全体で聴くことで構造が見えてくる作りになっている。だからこそ、イタリアン・プログレの中でも組曲志向の作品として記憶されている。
また、この作品は海外向けに英語版も用意されたことで知られている。バンドの活動がイタリア国内にとどまらず、外へ広がることを意識していたことがうかがえる。結果として、のちの再評価でもこのアルバムが最重要作として扱われることが多い。ハードロックの勢い、クラシックを取り込む構成、そして当時のイタリアらしい劇的な展開。その3つがまとまった作品として、1973年のイタリアン・プログレを語るうえで外せない一枚になっている。
まとめ
『Contamination』は、Il Rovescio Della Medagliaが初期のハードロック路線から踏み出し、シンフォニックな構成に本格的に挑んだ作品だ。バカロフの関与、バッハ素材の使用、鍵盤を加えた編成など、要素だけ見ても当時の野心がはっきりしている。2015年の再発盤では、その重要作が180グラム盤として改めて手に取れる形になった。1973年のイタリア・プログレを、バンドの演奏力と構成意識の両方から捉えるうえで、よく参照される一枚である。
トラックリスト
- A1 Absent Minded
- A2 Orphan Me
- A3 Johann's Rock
- A4 Another Name Am I
- A5 Crazy Baby
- A6 Lost Myself Today
- B1 Johann
- B2 Scotched
- B3 I Can Fly
- B4 Contamination
- B5 Isolation Ward
- B6 For The Love Of Anna
- B7 Bach Lives