Luiz Bonfá - Jacaranda (1973)
Luiz Bonfá『Jacaranda』
ルイス・ボンファが1973年にUSのRanwoodから発表した『Jacaranda』は、ボサノヴァの代表曲「カーニバルの朝」で知られるギタリスト/作曲家が、ジャズ・ファンクやフュージョンの領域へ大きく踏み込んだ作品として語られる一枚。アコースティック・ギターを軸にしながら、当時の米国ジャズ・シーンに近い編成と音作りを取り入れたアルバムで、編曲と指揮はEumir Deodatoが担当している。録音はニューヨークとロサンゼルスで行われ、総勢50名近いオーケストラとスタジオ・ミュージシャンが集まったとされる。
制作背景・エピソード
本作の大きなポイントは、Deodatoの関与にある。彼は当時CTIで「ツァラトゥストラはかく語りき」を大きなヒットへ導いていた時期で、ここでも編曲・指揮を担当。さらに参加者として、Stanley Clarke(ベース)、Idris Muhammad(ドラム)、Ray Barretto(コンガ)、Airto Moreira(パーカッション)、John Tropea(ギター)らの名前が挙がっている。こうした布陣から、ボンファの楽曲が大編成のジャズ・ファンク/フュージョンの中で再構成されたことがわかる。
収録曲では、「Apache Talk」が冒頭を飾り、ストリングスとファンク・ビートが交錯する構成。「Jacaranda」はタイトル曲として収められ、「Gentle Rain(優しい雨)」はボンファ自身の知られた曲をオーケストレーションで再演したものとして触れられている。レーベル情報のノートでは、B3とB5のクレジットが内袋表記とラベル表記で逆になっている可能性にも言及がある。
時代の文脈
1970年代前半は、Miles DavisやCTIレーベルを中心に、エレクトリック化したジャズやクロスオーバー、フュージョンが強い存在感を持っていた時期。そこにブラジル出身の音楽家たち、たとえばDeodato、Airto Moreira、Hermeto Pascoalらが米国のジャズ/ソウル・シーンで動いていた、という整理がされている。『Jacaranda』はその流れの中で、ボンファのブラジリアン・メロディとファンク・グルーヴが結びついた作品として位置づけられている。
ボンファ自身は映画『黒いオルフェ』の主題曲でも知られ、作曲家としても多くの映画音楽を手がけてきた人物。このアルバムは、そうしたキャリアの中で、従来のボサノヴァ像をそのままなぞるのではなく、1970年代初頭の米国的なアンサンブルへ接続した作品として記録されている。
後世への影響
1990年代以降は、アシッド・ジャズやレアグルーヴ、ヒップホップのサンプリング文化の中で再評価が進み、DJやプロデューサー、クレート・ディガーから注目されたとされる。ボンファのガット・ギター、Stanley Clarkeのエレクトリック・ベース、パーカッション群が生むビート感は、クラブ・クラシックやサンプリング・ソースとして扱われてきた、という説明が添えられている。
評価面では、AllMusicなどで「フュージョン・エキゾチカの至福の傑作」といった表現で紹介されることがあり、オリジナルLPは中古市場でも高値で取引されるコレクターズ・アイテムとして知られている。1973年のRanwood盤として、ボンファのディスコグラフィの中でも特に語られやすいタイトル。
トラックリスト
- A1 Apache Talk 6:40
- A2 Jacaranda 3:59
- A3 Gentle Rain 5:45
- A4 You Or Not To Be 2:30
- A5 Strange Message 3:26
- B1 Don Quixote 3:28
- B2 Song Thoughts 3:23
- B3 Danse V 5:43
- B4 Empty Room 6:52
- B5 Sun Flower 5:20