Marlena Shaw - Who Is This Bitch, Anyway? (1975)
Marlena Shaw 1975

Marlena Shaw - Who Is This Bitch, Anyway? (1975)

Funk / Soul Funk Soul

Marlena Shaw『Who Is This Bitch, Anyway?』(1975)

Marlena Shawが1975年にBlue Noteから発表した『Who Is This Bitch, Anyway?』は、彼女のキャリアの中でも重要な位置を占めるアルバムだ。ニューヨーク州ニューロシェル出身のShawは、1960年代にCadetで録音を重ねたのち、Count Basie Orchestraの専属歌手として活動し、その後Blue Noteへ移った。本作は、そのBlue Note在籍期を代表する一枚として語られることが多い。

この時期のBlue Noteは、伝統的なジャズの名門という顔に加えて、よりソウル寄り、ファンク寄りの作品も積極的に出していた。本作もその流れの中にあるが、単なる流行追随ではなく、Shawの歌唱と語り口を軸に、ジャズ、ソウル、ファンク、ブルースの要素を整理して置いたアルバムになっている。録音は1974年6月12日と12月3日から6日にかけて、ロサンゼルスのThe Record Plantで行われた。

制作陣と演奏の輪郭

プロデュースはBenard Ighner。彼はピアノとフリューゲルホルンも担当しており、制作面だけでなく演奏面でもアルバムに関わっている。アレンジはDale OehlerとByron Olson。演奏陣には西海岸のセッション・ミュージシャンが並び、ギターにDavid T. Walker、Larry Carlton、Dennis Budimir、ベースにChuck RaineyとChuck Domanico、ドラムにHarvey MasonとJim Gordon、エレクトリック・ピアノとシンセサイザーにLarry Nashという布陣。70年代中盤のウェストコースト・ソウルやジャズ・ファンクの空気が、そのまま詰まった顔ぶれだ。

音の作りは、過剰に厚塗りせず、歌の輪郭が前に出る設計。Shawの声は低めの温度感と、言葉を押し出す強さが同居していて、伴奏が滑らかに流れていても、歌だけは常に場面を支配している。実際に聴くと、リズムの切り方や語尾の置き方がかなり細かく、歌詞の内容をそのままなぞるのではなく、会話の間合いで見せるタイプの表現が目立つ。

冒頭の寸劇とアルバムの性格

冒頭の「Dialogue: You, Me And Ethel」は、単なるイントロではなく、アルバムの性格をそのまま示す短い寸劇になっている。シングルズ・バーで既婚男性がShawに言い寄り、彼女が機知に富んだ返しでかわしていく構成で、そのまま「Street Walkin' Woman」へつながる流れが印象的だ。ここでは当時の男女関係や振る舞いのズレを、説教臭くなく、会話の切り返しで見せている。挑発的なアルバム・タイトルも含めて、率直で物怖じしない女性像が前面に出ている。

この導入部があることで、本作は単なる歌唱アルバムではなく、Shawのキャラクターを中心に据えた作品として立ち上がる。「歌う」というより、「語り、突き放し、笑い、踏み込む」という感触が強い。こうした作りは、同時代のソウル作品の中でも少し異なる手触りで、ジャズ由来の言葉運びと、70年代ソウルの現場感が重なっている。

収録曲と聴きどころ

収録曲の中では、Roberta Flackの「Feel Like Makin' Love」カヴァーがよく知られている。原曲の持つ柔らかさに対して、Shawの歌唱はもう少し前へ出る。声量で押すというより、フレーズの置き方で熱を上げていくタイプで、伴奏の滑らかさと対比が生まれている。ここでも歌の温度が中心にあり、演奏はその温度を受け止める役回りだ。

他にも、タイトル曲の持つ挑発性、ストリート感のある楽曲の並び、バラード寄りの曲での語り口など、アルバム全体に一本の芯が通っている。派手な技巧を前に出すより、言葉の含みや間を使って聴かせる内容で、Shawの強い声が曲ごとの性格をはっきり分けている。

評価とその後

本作は当時のBlue Note作品の中でも売れた一枚で、Marlena Shawの代表作として扱われることが多い。AllMusicのJason Ankenyは高い評価を与え、率直さと創造性の強さを指摘している。のちにはレアグルーヴの文脈で再評価され、ヒップホップやハウスのプロデューサー、DJにとっても参照点になった。特に、リズムの組み方や声の切り取り方は、サンプリング素材として見ても扱いやすい要素が多い。

日本では1978年にキングレコードから国内盤が出ており、国内でも長く聴かれてきた作品の一つだ。Blue Noteというと硬派なジャズの印象が強いが、この時期のレーベルはこうしたソウル/ファンク寄りの作品も抱えていて、その幅の広さがよく分かる。

このUSオリジナル盤について

この盤は1975年のUSオリジナル、Blue Note BN-LA397-Gのテレホート工場プレス。ランアウトに「T1」の刻印がある点で識別できる。レーベル面の曲順表記がジャケット裏面と異なり、A面では「Dialogue: You, Me And Ethel」が1曲目として番号付きで印刷され、その下に「Street Walkin' Woman」が番号なしで記載されている。こうした表記の違いも、初期プレスならではの個体差として面白い部分だ。

『Who Is This Bitch, Anyway?』は、Marlena Shawの強い声、70年代Blue Noteの方向転換、西海岸セッションの洗練が一つにまとまった作品だ。会話劇から始まり、歌と演奏がそのまま現実感のある場面を作っていく流れに、このアルバムの個性がよく出ている。

トラックリスト

  1. A1.a Dialogue: You, Me And Ethel 3:17
  2. A1.b Street Walkin' Woman 3:03
  3. A2 You Taught Me How To Speak In Love 3:52
  4. A3 Davy 5:26
  5. A4 Feel Like Makin' Love 5:00
  6. A5 The Lord Giveth And The Lord Taketh Away 1:05
  7. B1 You Been Away Too Long 3:07
  8. B2 You 3:45
  9. B3 Loving You Was Like A Party 4:17
  10. B4 A Prelude For Rose Marie 1:56
  11. B5 Rose Marie (Mon Cherie) 4:19

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Marlena Shaw

Marlena Shaw

Marlena Shaw(本名 Marlina Burgess、1939年9月22日生まれ、2024年1月19日没)は、アメリカ・ニューヨーク州ニューロシェル出身のシンガーだ。ジャズ...

Marlena Shaw のプロフィール・作品一覧
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