Mtume - Rebirth Cycle (1977)
Mtume『Rebirth Cycle』について
James Mtume(ジェームズ・エムトゥーメイ、出生名:James Forman)が「Mtume」名義で1977年に発表した『Rebirth Cycle』は、フィラデルフィアのインディペンデント・レーベルThird Street Records(規格番号:TSJ 100)から出た通算2作目のリーダー・アルバムで、録音は1974年2月にニューヨーク州ホワイト・プレインズのMinot Soundで行われた。全曲の作曲・編曲・プロデュースはMtume自身が担当し、フロント・カバーはStephen Speraが手がけている。3年ほど前に録られた音源が、1977年にようやく世に出た形になる。
制作背景と録音時の顔ぶれ
この時期のMtumeは、マイルス・デイヴィスのエレクトリック・バンドにパーカッショニストとして在籍していた(1971〜1975年:『On the Corner』『Get Up with It』『Agharta』『Pangaea』等に参加)。『Rebirth Cycle』には、そのマイルス・バンドの流れをくむReggie Lucas(ギター)、Pete Cosey(ギター)、Michael Henderson(ベース)、Al Foster(ドラムス)、Azar Lawrence(ソプラノ・サックス、リード)らに加え、実父であるサックス奏者のJimmy Heath(ソプラノ・サックス、フルート、リード)、Stanley Cowell(ピアノ)、Bayeté(エレクトリック・ピアノ)、Cecil McBee(ベース)、Buster Williams(ベース)、Billy Hart(ドラムス)、Andrei Strobert(ドラムス)、John Stubblefield(リード)、Leroy Jenkins(ヴァイオリン)、Diedre Johnson(チェロ)といった面々が参加している。さらにボーカル陣としてJean Carn、Dee Dee Bridgewater、のちにR&B/ファンク・バンドMtumeの看板リード・シンガーとなるTawatha Agee(本作では「Tawatha」とクレジット)、Muktar Mustapha(スポークン・ワード)、Shirley Jenkins、Onika、Carol Robinsonらの名前もクレジットされている。
ジャケットには、B3「Body Sounds」(3分42秒)について「Mtumeによる電子変調されたコンガ・ソロに、バンド・メンバーが手をこすり合わせたり胸を叩いたりといった身体そのものを打楽器として用いて伴奏をつけた楽曲」と説明が添えられている。演奏の内容がそのまま曲名の由来になっている点が、この作品の記録として残っている。
時代の文脈
Mtumeは1966年にパサデナ・シティ・カレッジへ進学した際、マウラナ・カレンガらが創設した黒人文化ナショナリズム組織「US Organization」に参加し、カレンガからスワヒリ語で「使者(メッセンジャー)」を意味する「Mtume」の名を授けられるとともに、1966年の第1回「クワンザ(Kwanzaa)」の創設メンバーのひとりとなった。1972年にはブルックリンの黒人文化コミュニティ・センター「The East」でのライブ録音による初リーダー作『Alkebu-lan: Land of the Blacks』(Strata-East)をMtume Umoja Ensemble名義で発表しており、『Rebirth Cycle』はその流れに続く作品として位置づけられる。曲名にも、スワヒリ語で「団結(Unity)」(クワンザの第1原則)を意味する「Umoja」や、ズールー語の肯定応答「Yebo」、録音前年の1973年1月に暗殺されたギニアビサウおよびカーボベルデの反植民地独立運動指導者アミルカル・カブラルへのオマージュである「Cabral」など、アフロセントリックな語彙が見える。1974年録音という時点では、彼はまだR&B/ファンクのソングライター、プロデューサーとして広く知られる前段階にあり、この後にReggie Lucasとの共作でロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイに提供した「The Closer I Get to You」(1977年)、さらにグラミー賞最優秀R&B楽曲賞を受賞したステファニー・ミルズへの提供曲「Never Knew Love Like This Before」(1980年)や、バンド最大のヒット曲「Juicy Fruit」(1983年)へとつながっていく。
作品の構成も特徴的で、A面は「Sais (Intro)」(2分22秒)と、20分39秒におよぶ「Sais」(Mtumeが1973年にロニー・リストン・スミスの初リーダー作『Astral Traveling』にも提供した楽曲)の2曲のみ。Leroy Jenkinsのヴァイオリン、Diedre Johnsonのチェロ、Stanley Cowellのピアノ、Jean CarnやDee Dee Bridgewaterのボーカルが入り、エレキ・ギターやポリリズム打楽器、ホーン陣の激しいフリー・インプロヴィゼーションを交えた長大な演奏へ進む。B面は「Yebo」(6分07秒)、「Cabral」(4分29秒)、「Body Sounds」(3分42秒)、「Umoja」(6分41秒)の4曲で、高揚感あるコーラス・ボーカル、ホーン、スポークン・ワード、打楽器が並ぶ組み立てになっている。
後世への扱われ方
このアルバムは小規模なレーベルからの発売で、長く公式なデジタル配信やメジャー再発が行われなかったため、オリジナルLPはスピリチュアル・ジャズやレア・グルーヴのコレクターのあいだで入手困難な盤として扱われてきた。1978年には日本のトリオ/Nadjaレーベルから『Rebirth Cycle』(規格番号:PA-7191)としてLP化され、その際「Body Sounds」は「Soundwave」に改題されている。
2022年のJames Mtume死去の際には、英『The Guardian』紙が本作を取り上げ、R&Bのソングライター/プロデューサーとしてのキャリアが本格化する直前に残された、スピリチュアルでアフロセントリックなジャズの「最後の爆発」として紹介した。A面の「Sais」や、Jean CarnらのボーカルをフィーチャーしたB面の「Umoja」などが、その文脈で語られている。
トラックリスト
- A1 Sais (Intro) 2:22
- A2 Sais 20:39
- B1 Yebo 6:07
- B2 Cabral 4:29
- B3 Body Sounds 3:42
- B4 Umoja 6:41