Peter Gabriel - Peter Gabriel (1978)
Peter Gabriel『Peter Gabriel』(1978)
ピーター・ガブリエルのソロ通算2作目として1978年にCharismaから発表されたスタジオ・アルバム。ヒプノシス(Hipgnosis)が手がけた、自らの爪でジャケットの紙面を引き裂くようなアートワークから、通称『Scratch』『Peter Gabriel 2』の名で親しまれている。華麗でシンフォニックだった1977年のデビュー作『Car』から一転、パンク/ニュー・ウェイヴの嵐が吹き荒れる時代の中で、過剰な装飾を削ぎ落としたソリッドでストイックなサウンドへと大きく舵を切った意欲作である。
ロバート・フリップのプロデュースと「MOR三部作」の連動
プロデューサーに抜擢されたのは、キング・クリムゾンの主宰者ロバート・フリップ(Robert Fripp)。録音はオランダの古城近くに位置するリライト・スタジオ(Relight Studios)を中心に進められ、フリップの意向のもと、虚飾を排したタイトで生々しいアンサンブルが追求された。
演奏陣には、トニー・レヴィン(ベース、チャップマン・スティック)、ジェリー・マロッタ(ドラム)、ラリー・ファスト(シンセサイザー)という、後のガブリエルの黄金期バンドの中核が勢揃いしたほか、ギタリストのシド・マクギニス(Sid McGinnis)や、ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドで知られる名ピアニストのロイ・ビタン(Roy Bittan)が参加している。本作は、フリップが同時期に手がけたダリル・ホールの『Sacred Songs』、フリップ自身のソロ作『Exposure』(1979年)とともに、三者が交差する「MOR三部作」の一角を成す重要作としても知られる。
収録曲と多彩な音響アプローチ
オープニングの「On The Air」は、焦燥感に満ちたビートとシンセサイザーがドライブするニュー・ウェイヴ・ロック。ガブリエルが構想していた架空のキャラクター「Mozo」をめぐるストーリーの導入部でもある。続く「D.I.Y.」は、パンクのインディペンデント精神に共鳴したかのようなキャッチーで骨太なシングル曲だ。
一方、当時の妻ジル・ガブリエルとの共作「Mother Of Violence」は、ロイ・ビタンの繊細なピアノが寄り添うアコースティックな名バラード。さらに、雄大でダークなスケール感を持つ「White Shadow」(アナログ盤のA面最終溝が無音にならずループし続ける特殊仕様でも話題を呼んだ)や、フリップ独自のテープ・ループ技術「フリッパートロニクス」が不穏に鳴り響くアヴァンギャルドな名曲「Exposure」など、陰影に富んだ楽曲が並ぶ。
時代における位置づけと再評価
全英アルバム・チャートではトップ10入りを記録したものの、前作「Solsbury Hill」のような大ヒット・シングルを欠いたことや、冷徹で研ぎ澄まされたダークな音像から、リリース当時は評価が分かれた。しかし後年、ジェネシス時代の演劇的プログレッシヴ・ロックから完全に決別し、次作『Melt』(1980年)で結実する革新的サウンドの礎を築いた決定的な転換点として高く再評価された。
ロバート・フリップの鋭利なプロデュースワークとガブリエルの内省的な表現がスリリングに激突した、カルト的魅力を放ち続けるアート・ロックの隠れた名盤である。
トラックリスト
- A1 On The Air 5:30
- A2 D.I.Y. 2:36
- A3 Mother Of Violence 3:22
- A4 A Wonderful Day In A One-Way World 3:34
- A5 White Shadow 5:15
- B1 Indigo 3:30
- B2 Animal Magic 3:28
- B3 Exposure 4:14
- B4 Flotsam And Jetsam 2:20
- B5 Perspective 3:26
- B6 Home Sweet Home 4:38
動画プレイリスト
このアーティストについて
Peter Gabrielは、ロックを軸に、ファンク、ソウル、フォーク、ワールド・ミュージックの要素も取り込んできたアーティストだ。ポップ・ロックやアー...
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