Pixies - Come On Pilgrim (1987)
Pixies『Come On Pilgrim』
Pixies(ピクシーズ)が1987年9月に英名門インディー・レーベル4ADから発表した衝撃のデビュー・ミニ・アルバム『Come On Pilgrim』。ボストンで結成されたばかりの無名バンドが、後に90年代ロックの潮流を根本から覆すことになる「静と動(loud-quiet-loud)」の美学を鮮烈に刻みつけた8曲入りの歴史的処女作である。
制作背景と「パープル・テープ」
制作の起点は、フロントマンのブラック・フランシス(Black Francis)が父親から借りた1000ドルの資金だった。バンドはその資金を手にボストンのフォート・アパッチ・スタジオ(Fort Apache Studios)へ入り、わずか3日間のセッションで全17曲のデモ音源を一気呵成に録音した。エンジニアのゲイリー・スミス(Gary Smith)は彼らの演奏を目の当たりにして圧倒され、「君たちが世界的に有名になるまで私は眠れない」と絶賛したという。
紫色のカセットケースから「パープル・テープ(The Purple Tape)」と呼ばれたこのデモが、スローイング・ミュージズのマネージャーを介して英4ADの創設者アイヴォ・ワッツ=ラッセル(Ivo Watts-Russell)の手に渡る。アイヴォはその完成度と生々しい狂気に惚れ込み、メジャー風に再録音させることなく、デモから選び抜いた8曲をリミックスしてそのままミニ・アルバムとしてリリースする異例の決断を下した。
アートワークは4ADの専属デザイナーであるヴォーン・オリヴァー(Vaughan Oliver)と写真家サイモン・ラーバレスティアが担当。背毛の生えた男性の奇妙なヴィジュアルなど、4ADのシュルレアリスム的デザイン美学とバンドの不穏な音楽性が見事に結実した。
時代の文脈と90年代オルタナの青写真
1987年当時のメインストリーム・ロックは派手なハードロックや画一的なポップ・ミュージックが支配していた。その中でピクシーズは、ハードコア・パンクの瞬発力、サーフ・ロックの乾いたギター、プエルトリコ滞在経験に基づくスペイン語の歌詞、そして聖書や近親相姦・異常心理を描くシュルレアリスム文学のような歌詞を融合。囁きから突如として絶叫とノイズが爆発するダイナミズムは、後に世界を席巻するグランジ/オルタナティヴ・ロックの青写真となった。
サウンドと聴きどころ
妖気漂うアルペジオから金切り声のシャウトとディストーションが炸裂するオープニング「Caribou」、ジョーイ・サンティアゴの凶暴なギター・フィードバックが唸りを上げる「Vamos」、凄まじいスピードで疾走するスペイン語パンク「Isla De Encanta」、そしてキム・ディールのシンプルで太いベースと愛らしいコーラスが光る「The Holiday Song」「Nimrod's Son」まで、全編が一触即発のテンションで貫かれている。
後世への影響
本作が後世に与えた影響は計り知れない。ニルヴァーナのカート・コバーンが「『Smells Like Teen Spirit』はピクシーズの真似をしようとして書いた曲だ」と公言したエピソードをはじめ、スマッシング・パンプキンズ、レディオヘッド、PJハーヴェイ、ウィーザーなど、90年代以降の最重要アクトがこぞってピクシーズからの決定的な影響を認めている。
リリース直後から英インディー・チャートの上位を席巻し、NMEやMelody Makerなど英音楽プレスから熱狂的な支持を集めた本作は、ピクシーズの伝説の幕開けであると同時に、ロックの歴史を変えた不滅のデビュー作である。
トラックリスト
- A1 Caribou
- A2 Vamos
- A3 Isla De Encanta
- A4 Ed Is Dead
- B5 The Holiday Song
- B6 Nimrod's Son
- B7 I've Been Tired
- B8 Levitate Me
動画プレイリスト
このアーティストについて
Pixiesは、1986年にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで結成されたオルタナティブ・ロック・バンドだ。中心メンバーはブラック・フランシス(ヴォ...
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