Ride - Nowhere (1990)
Ride 1990

Ride - Nowhere (1990)

Rock Indie Rock Shoegaze

Ride『Nowhere』──若い4人が作った、轟音と旋律のデビュー作

Rideの『Nowhere』は、1990年にCreation Recordsから発表されたデビュー・アルバムで、シューゲイザーの代表的作品として長く語られている一枚だ。アーティストはイングランド・オックスフォード出身の4人組で、当時のメンバーはMark Gardener、Andy Bell、Steve Queralt、Loz Colbert。録音時の彼らはまだ18〜20歳ほどで、若いバンドならではの勢いがそのまま音に残っている。

アルバム全体を通して目立つのは、分厚いギターの壁と、そこで埋もれきらないメロディの輪郭だ。My Bloody Valentineのような大音量の歪みを共有しながらも、Rideはもっと直線的で、曲の芯が見えやすい。演奏の密度は高いが、リフや歌の流れは比較的はっきりしていて、ただ音の厚みで押すだけでは終わらない。シューゲイザーという呼び名が定着した時期の作品として、その輪郭を理解するうえで外せない存在になっている。

制作背景と当時の空気

録音はロンドンのBlackwing Studios、ミックスはSwanyard Studiosで行われた。制作の途中ではMarc Watermanがエンジニアを務めたが、体調を崩して離脱し、最終的なミックスはAlan Moulderが担当している。Mark Gardenerはこの作品を「夜行性のレコード」と表現しており、深夜まで続くセッションが、アルバム全体の暗く、少し距離を置いた感触につながったという話も残っている。

実際に耳を通すと、曲ごとの輪郭は保ちながらも、アルバム全体には同じ温度のまま進んでいく感覚がある。音が明るく開ける場面より、低くうねるギターと、そこに重なるボーカルの位置関係が印象に残る。若いバンドがスタジオで勢いのまま作った作品というより、すでに完成された音像を持ったグループの初作、という空気が強い。

収録曲と代表曲

『Nowhere』は全13曲構成で、代表曲としてまず挙がるのが「Vapour Trail」だ。アルバム後半に置かれたこの曲は、Rideの中でも特に知られる一曲で、分厚いギターの上に伸びるメロディがよく通る。音の圧はあるのに、曲の終わり方には妙に整った感触が残る。Rideの初期像を端的に示す曲として扱われることが多い。

ほかにも「Dreams Burn Down」や「Taste」など、ライヴ感の強い曲が並ぶ。なお、初期のCD盤や北米のカセット盤には、先行EP由来の「Taste」「Here And Now」「Nowhere」の3曲が追加されていたが、オリジナルのLP盤には収録されていない。今回のUK盤LPは1990年当時の内容に沿ったもので、アルバム本来の流れをそのまま追える仕様だ。

初出当時の評価と、その後の再評価

『Nowhere』は1990年10月15日にリリースされ、UKアルバムチャートで11位を記録した。当時の評価はかなり割れていて、Melody MakerやSelectは高く評価した一方、NMEは曲ごとのまとまりに厳しい見方を示している。シューゲイザーという言葉自体が広まりつつあった時期だけに、音の厚みや内向きな感触をどう受け止めるかで反応が分かれた面もある。

その後は再評価が進み、Pitchforkは2003年に「1990年代ベストアルバム100選」で74位に選出した。現在では、My Bloody Valentineの『Loveless』と並べて語られることも多いが、Rideのこのアルバムは、よりバンドとしての生々しさや若さが前に出ている。完成度だけでなく、演奏の熱や未整理な衝動が残っている点も、この作品の輪郭になっている。

オリジナル盤の仕様

このUKオリジナル盤は、テクスチャーのあるスリーブに収められ、表面には取り外し可能な丸い白黒のステッカーが付く仕様。ジャケットのバンド名RIDEとタイトルNOWHEREはエンボス加工されている。内袋には写真と各曲の一節が印刷されていて、初期盤らしい手触りがある。初回にOur Priceで購入した分には、カバーアートの限定プリントが付属したという記録もある。

レーベルはCreation Records。1980年代後半から90年代初頭のUKインディーを象徴する存在で、Rideのようなバンドを通じて、当時のギターロックの流れを強く印象づけた。『Nowhere』は、そのCreationのカタログの中でも、シューゲイザー初期を代表する一枚として位置づけられている。

轟音の層、はっきりしたメロディ、若い4人の演奏。『Nowhere』は、その3つが同じ場所に置かれたアルバムだ。シューゲイザーの入門盤として語られることが多いのも納得できる内容で、Rideというバンドの出発点をそのまま封じ込めた作品になっている。

トラックリスト

  1. A1 Seagull 6:08
  2. A2 Kaleidoscope 2:59
  3. A3 In A Different Place 5:28
  4. A4 Polar Bear 4:43
  5. B1 Dreams Burn Down 6:02
  6. B2 Decay 3:34
  7. B3 Paralysed 5:33
  8. B4 Vapour Trail 4:14

動画プレイリスト

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