Rickie Lee Jones - Rickie Lee Jones (1979)
Rickie Lee Jones / Rickie Lee Jones(1979年・US盤)
リッキー・リー・ジョーンズのデビュー作であり、1979年にワーナー・ブラザースから登場したセルフタイトル・アルバム。シンガーソングライターとしての出発点をそのまま刻んだ作品で、ジャズ、ポップス、ロック、R&Bの要素が自然に交差している。のちの彼女のキャリアを見ても、この1枚は出発点としてかなり重要な位置にある。
発売当時の反応も大きく、シングル「Chuck E.'s In Love」が全米4位、「Young Blood」が40位を記録。アルバム自体もBillboard 200で3位まで上がり、米国ではプラチナ認定を受けている。新人賞を含むグラミー・ノミネートの多さも、この作品がデビュー作として強い存在感を持っていたことを示している。
作品の輪郭
本作は、1978年9月から12月にかけてワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオとザ・バーバンク・スタジオで録音され、レニー・ワロンカーとラス・タイトルマンがプロデュースを担当した。参加ミュージシャンも豪華で、スティーヴ・ガッド、ジェフ・ポーカロ、マイケル・マクドナルド、ドクター・ジョン、ランディ・ニューマンらが名を連ねる。編曲面ではジョニー・マンデルとニック・デカロのオーケストラ・アレンジが効いていて、バンド中心のロック作品というより、室内楽的なまとまりを持つポップ・アルバムとして聴こえる。
曲ごとの表情がかなり細かいのも印象的だ。大きなサビで押し切るタイプではなく、歌の語り口、言葉の置き方、演奏の間合いで引っ張っていく構成。Rickie Lee Jonesの声は、まっすぐ伸びるというより、息の混じり方や語尾の崩し方に特徴がある。AllMusicが彼女の歌を「ローラ・ニーロとトム・ウェイツの愛の結晶のよう」と評したのも、こうした声の質感と、ジャズやボードヴィル寄りの語り口を踏まえたものだろう。
代表曲「Chuck E.'s In Love」
アルバムを代表するのはやはり「Chuck E.'s In Love」。この曲は、チャック・E・ワイスの恋の話から着想を得たとされ、軽いユーモアを含んだ物語性がある。実際の恋愛の記録というより、会話や噂話の断片をそのまま歌にしたような作りで、デビュー作の中でもひときわ記憶に残る。メロディの運びとリズムの跳ね方が軽快で、ラジオ向きのポップさを持ちながら、歌詞の視点はかなり個性的だ。
もう一つの重要曲が「Young Blood」。こちらはシングルとしてもヒットしており、アルバム全体の中で少し別の色を見せる。R&Bの要素が前に出て、バンドのグルーヴが曲を支える構図。タイトル曲を含め、アルバム内でポップ、ソウル、ジャズの距離感が曲ごとに変わるのがこの作品の面白さになっている。
収録曲にある録音のエピソード
収録曲のうち「On Saturday Afternoons In 1963」と「After Hours (Twelve Bars Past Goodnight)」の2曲は、1978年12月22日のライブ録音。アルバム全体の洗練されたスタジオ感の中に、少しだけ生々しい空気が差し込まれている。「B5」と「A2」にライブ録音が置かれている点も、作品の流れに変化をつけている。
制作面では、ワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオとバーバンク・スタジオで録られ、ミックスとマスタリングもワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオで行われた。クレジット上はすべてがワーナーの内部で完結していて、当時のメジャー・レーベル作品らしい整った制作体制が見える。
US初期盤の特徴
このUS盤は1979年のオリジナル期のもの。ワーナー・ブラザースの1970年代後半のプレスは、のちの再発盤と見分ける際にレーベル面のデザインが手がかりになることが多い。本作の時期は、いわゆるBurbankのヤシの木ラベル期にあたり、1978年ごろまでのワーナーらしいUSプレスの雰囲気を持つ。盤のクレジットでは、runoutに「JW」と「0」が確認でき、USでのプレス情報も明記されている。
オリジナルの1979年盤として聴くと、作品そのものの完成度に加えて、当時のワーナーが抱えていたソングライター志向の強さ、ジャズやR&Bを横断する感覚がよく見えてくる。トム・ウェイツ、ランディ・ニューマン、ローラ・ニーロあたりを連想させる要素もあるが、どれとも完全には重ならない。歌詞の視点、声の置き方、編曲の密度が、Rickie Lee Jones独自のものとしてまとまっている。
まとめ
「Rickie Lee Jones」は、デビュー作でありながら完成度の高いポップ・アルバムとして受け止められてきた1枚。ヒット曲「Chuck E.'s In Love」の存在感は大きいが、作品全体を通して聴くと、軽さと緻密さ、都会的な会話感覚とジャズ寄りの編曲が同居している。1979年のUSオリジナル盤は、その初期像をもっとも素直に伝える媒体として位置づけられる。
トラックリスト
- A1 Chuck E.'s In Love 3:31
- A2 On Saturday Afternoons In 1963 2:35
- A3 Night Train 3:18
- A4 Young Blood 4:07
- A5 Easy Money 3:20
- A6 The Last Chance Texaco 4:08
- B1 Danny's All-Star Joint 4:06
- B2 Coolsville 3:52
- B3 Weasel And The White Boys Cool 6:03
- B4 Company 4:54
- B5 After Hours (Twelve Bars Past Goodnight) 2:15